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39-

恵那「眠兎ーいるー?」

 コンコン、と鳴る前からリングレーダーで恵那と乃陰が戻ってきてることがわかっていた。

眠兎「開いてるから入っちゃっていいよ~」

 午前中に世界の縮図や生態図鑑を使っていろいろ調べて疲れたというのもあったが、さっき調べた情報を元にこの世界の人に対して仇なす存在の脅威レベルを知りたかった。

 二人が部屋に入ってくると、私が世界の縮図を起動しているのに驚きはしなかったが、心配はされた。

恵那「身体大丈夫?」

乃陰「それって使いすぎると頭痛くなったりするのか?」

 まあ、これって何のエネルギーで動いてるのか謎な分、私の体力使ってるのかと思ったりしたけれどそんなことないのよね。バッテリーゲージなども意識しても出てこないし、ほんと謎。

眠兎「別段大丈夫だよ。ちょっと手掛かりになるかどうか調べてて、気になる事があったのよ。二人に聞くけれどさ―」


 そこで私は遭遇したらやばい生き物とか、人はどこまでそういったものに抗えてきたのか、戦争はどのように行われているのか、を聞いた。私が急に軍事レベルの推移を聞いているのだから、二人は驚いていた。こういった話を改め聞かれることが珍しいのか、説明しにくそうだった。

 冒険者ランクというランク制度があるということは討伐モンスターの危険度を把握し、ランクに合った討伐モンスターの依頼を受けれたりする仕組みだと思ったからだ。これについては二人ともその通りだと教えてくれた。


 では、その討伐対象はどういったランク付けされているのか、それに対して人間はどう防衛してきたのかを聞いたのだ。私は秩序構成がされた世界というのがどういった経緯で形成されたのか現実で調べたら発売前なのか詳細な情報が出ていなかったからだ。間違いなく黄金の民が鍵となっているが、それがこの世界にどのような影響を与えてこつ然と姿を消してしまったのかが重要な要素だと思っている。


 こつ然と姿を消した後に出現し始めた遺跡、そして自分が装備してる武具とチュートリアルと言ったあの狼が繋がっていると勘が言っている。


乃陰「んー、そうだな…とりあえず昼飯を食いながら話そう。黄金の民がもたらした繁栄と安泰は結構前の話になるし、それを話した方がよりわかりやすいと思うしな」


恵那「乃陰はよく知ってるよな、僕なんて産まれる前の歴史なんてちょっとしか知らないよ」


 私はいったん世界の縮図モードを解除し、二人と一緒に下の食堂へ向かった。昼時に近い事から騒がしかったが、話す内容は周りに聞かれてもいい内容なので人がいても気にならなかった。


 昼食はなんかの肉のステーキが二切れにマッシュポテトと炒めた野菜がソースとあえられていた。パンと飲み物が一緒についたものだった。これが人気なのか、それともこれだけしかメニューがないのか周りの人もみんな食べていた。

 肉はやたら柔らかく、美味かった。パンは相変わらず固かったがそんなこと気にならないくらい美味い。

 食べながら、乃陰が黄金の民が世界にどう関わってきたのか、その影響と今を教えてくれた。内容は私にとって黄金の民はこの世界を征服出来るのにしない事が異質だと感じた。

 世界の敵のような容赦無いエグさが世界の常識だった中でその常識を覆すことをこの百年の間にやってのけてしまった内容だったのだ。高度な文明技術力を持った集団がやってきて…いや神の使徒たちがやってきて世界を平和に導いていって後は遺産をそこら中に残すから人の手に委ねるみたいな方がしっくりくるものだ。

 だが、黄金の民はずっと昔からいて鎖国状態を続けていたとのことだった。突然湧いて出てきた人たちではなく、他国との交流もあったが場所が極東に位置し、滅多なことでは到達できないような立地だったことからたどり着ける人は少なかったのだった。


 黄金の民がどのような人たちだったのか、詳しい内容は乃陰が知ってる内容なので偏ってるかもしれないがこういった内容だった。


乃陰「大まかに3つの時代に分けると、黄金の民が各国で見かけれた時代、各国に国として介入してきた時代、そして、いなくなった今だ。順々に説明していこう」


 黄金の民が各国で見かけられた時代は、異国風な格好で冒険者として見かけられおり、身につけていた武器もあまり大差なかったと言われている。彼らは時折現れてはいろんな話を聞いたり、モンスターなどの討伐や調査、集落で困っている事の手助けなどをしていて、不思議な冒険者たちとして各国の認識だった。

 だが、彼らがもたらす情報は生活の質をはるかに向上させることから各国は取り込みたいと思い、客として扱う国、捕えて吐かせようとする国、など様々な対応をしていた。しかし、どの国も彼らを招こうにも捕らえようにも出来なかったらしい。


乃陰「この時代は、もちろん戦争があった。戦力として黄金の民を使いたい国もあったが彼らは他国の戦争には一切出なかった。たまたま立ち寄った集落か村で敵国の兵から強襲を受けた時は、そこにいる人たちを守る為に戦ったと知られているくらいだ。それ以外は人と人の争いを避けている。んで次の―」


 黄金の民が各国に国として介入してきた時代では、黄金の民が世界の実状を認識して憂いて黄金の民として何が出来るか動き平和を築いた激動の時代だ。


 大国が中心とし、周りの国が侵略され隷属国となっていた。属州ではなく隷属国であるため、隷属となっている国だ。諸外国に対して、同じ1つの国とみなされたくないほど文明が遅れていた。また生活水準も低く、思考も蛮族に近いものだったそうだ。隷属国から摂取するために資源採取などを命じ、納めさせていた。また奴隷にしても見た目が良いものは年齢問わず強制的に連行されていた。

 その国は他国に度重なる侵略行為をし、領土を広げていった。戦略、戦術、兵力が安定していた。能力があれば成り上がれるため、進んで隷属する国もあった。だが、そうじゃない国の方が多く、築き上げてきた文化そのものを無くさせ、従わせるといった面もあった。


 他の王国や連合国などは大国に対して、危機を感じていた。大国の属州になった場合、王族も貴族も奴隷も等しくなく、能力ことが全てだったからだ。また、今まであった文化も無くなってしまうのもあり警戒していた。

 しかし、大国が攻め入ることがあり領土が徐々に奪われていく中、黄金の民が全ての国と国交を持ち、持てる知識や黄金の民の技術物を各国に合ったものを提供していった。提供する条件としてどの国へ対しても侵略行為を行わない事だった。

 各国は劇的に文明水準が向上していったが、貰えるものは貰い独自に研究し兵器転用する国もあった。そして、条件を反故にし侵略行為を行う国が現れたが、黄金の民はそれを予見してかのように全ての戦争行為に死傷者0名で戦争をできない状態にした。戦場で戦闘行為が出来ないように兵器や武器の破壊、地形の変化、など圧倒的な戦力を見せ戦意喪失させた。

 その一方的な状態の中で、侵略行為を行わなかった国の方がはるかに豊かになっていくのを目のあたりにした国々は侵略行為を行わなくなっていった。しかし、隷属国を複数率いる大国は最後まで侵略行為を行い黄金の民の国へ攻め入った。

 

 大国は黄金の民を侮っていて、勝てると思っていた。隷属国から強制徴兵し、薬を用いて強化し、武器をもたせ攻め入った。大国の本国兵や兵器も数多く投入されたが、強制徴兵された薬物強化された人たちは無力化し、本国兵で戦闘意思があるものだけを殺傷した。


 この事変によって、世界は変革していった。脅威と感じていた生物による命の危険性の減少、不作や立地などによる食料問題による飢餓、移動手段の向上、集団生活のレベル向上、文明レベルが一気に底上げされ黄金の繁栄と言われ、黄金の民を讃えられた。

 そして、各国が競うように黄金の民を模範し、それぞれの国が特色を伸ばし切磋琢磨しあっていた。それは最後まで敵対していた大国でさえも同じくとして世界は安泰へと向かっていった。


 各国との旅も盛んとなり、道中のモンスターなどの護衛や近隣のモンスター退治や未開地の調査を行う冒険者ギルドも設立された。小さな集落から街へと発展し、黄金の民の技術に負けないように様々な技術が生み出されていった。

 黄金の民が各国に大使として拠点を様々な村や集落などに派遣され、現地の人たちが解決できるようになったら本国へと戻っていった。様々な問題を解決し、自分たちで歩めるようにサポートする形で接していた。


乃陰「それが黄金の民たちがこつ然と消える前までの歴史だ。長くなってしまったけれど、今の生活を支えてるのは黄金の民がいてのことなんだ。」


 すでに昼を過ぎ、おやつ時になっていたので途中から甘い飲み物を注文し、聞いていた。黄金の民は明らかに異質だというのが実感した。なぜ彼らは大国のような真似をしないで各国を尊重したのだろうか、精神文化の高さと相まって文明、技術力が次元の違う強さを持っていたからかなのか…

 疑問に思ったりしたが、とりあえずそのまま話を聞く事にした。


乃陰「そして、黄金の民がいなくなった今までの…何が起きているかだ。ここまでの歴史の中で世界の敵なんていなかったのは気づいてるかな?」


 そういえば、出てきてない。


眠兎「何者なの?世界の敵っ?どこから現れたの?あのクソ共」

 奴らにやられたことを思い出し、きちゃない言葉を吐いてしまう。反省はしていない。


乃陰「それをこれから語ろう」

 恵那は表情がいつもと代わり、目つきがキツくなり、表情も怖くなった。私は恵那もこんな顔もするんだと思った。

 どうでもいいが乃陰は変わらなかった、むしろしゃべれて機嫌が良さそうな感じが微妙だか感じる。うっとおしい


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