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 朝、目が覚めて身支度を整え、一階の食堂へ向かうと恵那と乃陰はすでに待っていた。

眠兎「ごめんごめん、遅れた?」

恵那「いや別に大丈夫だよ」

乃陰「同じく」

 

 空いてる席に3人で座り、朝食をとることにした。ゲーム内といえどもなぜか腹が減る。そして、食事の味はなんとなく感じるが何の味なのかよくわからないが美味しいや不味いという感覚はある。

 なんかの肉となんかの野菜となんかの目玉焼きに固めのパンだが朝食だった。ここの宿ではスタンダードなのか、周りの冒険者風の人やそうじゃない人も食べている。


 朝食を取りながら、補充が必要な道具などを打ち合わせる。ゲームを始めたばかりの頃は二人に借りがあったけれど、先遣部隊を討伐し一人捕らえた事でチャラになった。また、発見されてる遺跡の追加調査での報告で報奨金も出た。

 乃陰が言うには、世界の縮図や生態図鑑をそのままギルドに報告はせず生態分布図についてのみ伝えたとのことだった。元よりも起動してもそのデータを抽出してしまったので、何もないかもしれないと私は思ったけど


 それでも生態図鑑は、今までの他の遺跡から発見されなかった遺産ということで管轄してる国から調査隊が派遣されるらしい。遺跡を発見しても調査隊が来るまでもない遺跡だったりすると人件費がバカにならない為、自分たち冒険者がいる。虚偽の報告をした場合は、あとで呼ばれるらしいが、その時は私が手に入れたものを見せれば解決する。


 ちなみに虚偽の報告をした冒険者は大罪になり、ギルドカードの剥奪、違反金、投獄、指名手配、場合によっては処刑される。


眠兎「それで私達が行く場所なんだけど…」

 私は声を小さくし、生態図鑑を起動させ二人に情報を共有した。

眠兎「特に危険は無さそう、むしろ現地調達出来る肉がない気がする」

 二人は頷き、干し肉を購入していくことにした。


 朝の朝食ミーティングを済ませ、各々買い出しなどにとりかかる事になり、私も張り切って街を散策しながら準備をしようと思ったら


恵那「三日間寝たきりで一応病み上がりになるから、今日は部屋でゆっくりしててね。僕たちが買い出ししてくるよ。」


乃陰「まあ、そういうことだ。昼には一度戻ってくるからそれまで部屋でゆっくりしててくれ」


 私は頬を膨らませ、不機嫌さをアピールしてやった。


恵那「万全を期して、ね。大丈夫そうだったら、昼は一緒に行こう」


 恵那が困った顔をし妥協案を出してきたので私はそれに賛同し、部屋に戻ることにした。


乃陰「買い出し行ってる間、街を散策とかするなよ。ちゃんと休んでろよ」

恵那「それじゃ、行ってくる」

眠兎「へいへい、いってらー」

 と手をヒラヒラし、部屋に戻った。


 戻ってから、生態図鑑を起動させつつ、ベッドに横たわり検索を開始した。このゲームをはじめた時に現れたでっかい狼が何なのか調べるためだ。あの狼が「チュートリアル」という発言をしたことから、特殊なNPCだろうと思う。黄金の民の技術レベルでVR訓練とか映像ゲームや教育プログラムがこの世界に普及して、チュートリアルという言葉が広く一般的に使われていたのなら、別だけど、最初の手掛かりを調べておくに越したことはない。

 とりあえず、狼種で検索をかけると様々な狼が表示され、その中でも更に大型なものにフィルタをかけた。

 色も思い出そうとして、思い出せなく、大型に絞られた狼を表示させ一つ一つ見るが、夢で見たような毛並みや模様や特徴と合致する狼はいなかった。そこで人語を喋れるでフィルタをかけて絞っても出てこなかった。

 

 調べ方が悪いのか…


 私は悩んだ。情報リテラシーの教育プログラムは受けているのでこの生態図鑑の検索機能や求めている検索結果にするのは造作も無いことだった。


眠兎「もしかして大きさが定かじゃないとか?」


 私は大きさのフィルタを解除し、先ほど閲覧した結果を除外し検索をした。すると重量や大きなが未知、測定不可能といったものがあった。生態図鑑といっても万能ではなく、情報が欠如しているのか、どんなフィルタをするにもプルダウン式の選択が表示されるわけではなく、意識を向けてフィルタするタイプだった。

 自分が見たイメージを思い浮かべそれを調べるという意識を向けるだけで検索してくれるものだったが、思いの外あやふやだったので生態図鑑は反応しなかったのだ。


眠兎「うーむ、夢に出てくるくらいだから、結構上位種なのかもしれないな」


 ここはゲームの世界でログインしてるわけだけど、プレイヤーではなくキャラクターとしては召喚されているわけだ。そうなってくると召喚したのが誰かとなると黄金の民なのか、あの狼なのか、あるいは自分自身が転送してきたのかになってくる。

 黄金の民の遺跡巡りしていたらそのうちにそっち方面は判明してくるだろう。残り2つに関しては、狼は手掛かりの一つとしてあるなら生態図鑑から調べてそこから手掛かりを探す。もし生体図鑑に載っていないのであれば、神とかそういった概念種になってくる。最後の一つは、記憶そのものが何らかのイベントで戻るのかな


 というわけで、今やれることは夢に出てきた狼だ。生態図鑑じゃ、さすがに概念種のようなものは引っかからないと思い。概念種に近い種で検索をかけてみたら狼種では引っかからなかった狼が出てきた。


眠兎「この生態図鑑…人種も検索可能なのか」


 私はツッコミを入れずにいられなかった。出てきたのは獣人だったからだ。狼のケモミミ種族だったのだ。

 それにしてもなぜ…概念種で検索すると出てくるんだと疑問だった。調べてみると極東に生息し、狼から人化する種で人との子孫も作れるらしい。また極東では神の使い、神そのものとして扱われ神聖視している。

 獣人種の系列で調べてみても、犬系はいるが狼種だけは存在しなかった。それが神聖視される所以なのか、それとも他の獣人とは違う別種なんだろうと感じた。

 そのまま調べてみると、どうやら狼種の獣人だけは完全に人化出来る種で今でもどこかで人に紛れて生活してる可能性があるらしいが獣化は見かけられていないらしい。狼種の獣人は個体のポテンシャルはかなり高い運動能力と魔力を持っているため、概念種の眷属にもっとも近いとも言われている。


眠兎「ん…?概念種の狼獣人と普通の狼獣人は別種?」

 

 最初に検索で引っかかった概念種の獣人を調べてみると狼ではなく、大神と書かれていた。見た目で狼と判断し、狼の獣人だと思ってしまったのだ。

 それにしても”大神”ね…このゲーム内の信仰されてる宗教といったものはどうなってるのかわからなかった。黄金の民が作り上げた安泰の秩序が宗教を忘れさせていた。


眠兎「大神か…そうなってくるとよくある設定で極東の位置…つまりはグレートウォールを超えた先にある黄金の民が居たとされる場所まで行って会えるみたいな流れかな、または世界の敵に捕まってるとか?」


 考えながら、ベッドに座り生態図鑑と世界の縮図を連動させ、”大神”がいる場所を探ろうとした。遺跡ではどこにどんな生態があるのか世界の縮図と連動していたので、大まかな場所がわかればと思った。


 世界の縮図を起動させてみたが、”大神”が存在する場所は反応を示さなかった。


眠兎「まあ、こんなんで発見したら他のユニークモンスターとかも真っ先に見つけることできちゃうし、ゲームとして問題だよね…って、えっ?!」


 生態図鑑から、個体数が少なく、かつ強力な力を持つ個体を検索したら居場所が表示された。


眠兎「マジか…」


 次に概念種を検索かけてみたら、案の定引っかからなかった。


眠兎「となると超強力な種はそもそも自分で見つけろってことかな」

 さっき検索した結果で分布図に表示されなく、かつ強力な種を生体図鑑で表示させたら、それなりにあった。ある一定の強力な個体はそもそも検索に出ない仕組みなんだろうと思った。それでも強い個体はいるので、気をつけようと思った。

 なんたって検索に引っかからないのが存在するというのは、これから行く場所が絶対に安全とは言い切れないからだ。


 どうしたものかぬー


眠兎「まあ、そう簡単に出会わないよね…ってこれはフラグぅ…」

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