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 帰宅して、夕飯や風呂を済ました後で部屋でトーテム(ログオフ)の設定を行うことにした。

 ひどく汗をかいたのでサッパリし、ベッドにごろりする。ゴロゴロしながらログオフ設定を行うべく、機器の手元によせた。トーテム、ログオフの設定はどの機器でも行えるもので自分がゲームをゲームと認識し現実に戻る自分だけの設定だ。

 夢、つまりはゲームをゲームと認識し覚醒させるもので唯一ゲーム内に持ち込めるものだ。どのゲーム、教材でも共通のアイテムを持ち込むことが出来る。これを利用してチート行為などは出来ないようになっているが持ち込むアイテムは様々だ。


 持ち込めるアイテムは手のひらに収まるサイズに決まっており、ログアウトしたいと思えば手のひらに現れ、それに意識すればログアウト出来るというものだ。だが、基本自分からログアウトするということは滅多なことでない。


 夢を見る行為を利用しゲームにするため、自然と時間になったら起きる。睡眠障害などの病気を患っている場合は、ゲームそのものにログインがそもそも出来ず、エラーが出る。医療機関や特別な施設でない限り、ゲームにそもそもログインできない。


 手のひらサイズの本を模したものを手に取り、それを握る。本を模したキーホルダーのようなものは、ベルトで中が開かない仕組みになってる。パチッと外し、中を開けるとログオフするための鍵が入ってる。他のゲームや教育系プログラムでもこれを使っていた。


 そもそも、共通の設定になってるはずなので、最初に自分自身で設定していればログオフを忘れるということはない。でもあの時、ログオフのやり方を忘れていたのが不思議だった。そもそもログオフの仕方を忘れるというのはない、ゲームをゲームだと認識すること、夢を利用してゲームや教育系プログラムをしてることに気がついたらログオフの仕方を気付くものだ。


 あの時は、霞がかかったように思い出せないのではなく、本気で忘れていたのだ。そもそもログオフしたいと思えるような事がなさすぎた事があるんだろうけど…


 私は、本型のログオフキーを握り、機器をONにする。何かを握ってるという感覚が機器の表示される。一般に市販されているものは、使用者が拘束されたり、ゲーム中などに異常があった場合、即座に強制ログオフされるようになってる。そのため、何か使用者が握っていたり、何らかなのおかしい状態であると異常を表示され使用できなくなる。

 異常状態のまま、私はベッドに入りそのまま睡眠をとる。異常と判断された状態でゲーム、教育系プログラムなどにログインをしようとしても通常とは異なるところにログインすることになる。

 システム設定部屋と呼ばれるところで、ログオフ設定などを行うことが出来る。ログオンするまでの間、瞼を閉じてゲームを初めてからのことを思い返して今まで遊んできたゲームと比べて圧倒的に面白く、その世界をもっと知りたいと思えた。


 今までやってきたゲームは冒険もの、恋愛もの、ファンタジー活劇、ホラー、脱出系、といろいろ遊んできた。どれも楽しめるものだったけれどのめり込むというものではなかったし、途中でクリアせずに終わったものもあった。

 どれも「これはゲーム」という感覚が拭い切れないものが現実で感じずにいられなかったのだ。夢を利用しているとはいえ、どうしても実際に見る夢の方が質がよかった。だけど、テスターとして参加してるゲームは「これはゲーム」などと感じられなかった。


 ワクワクする気持ちの中、私はそのまま睡魔に身を任せ、まどろんでいった。眠っているようで眠っていないような状態で、意識が徐々に薄れ、ログインしていく感覚を感じていった。

 

 ハッとすると真っ白い部屋にいた。異常状態でログインするとこの部屋に来る仕組みになっていて、このまま緊急コールや各種設定など含めて行える部屋だ。

 トーテムの設定を行うため、部屋の真ん中に移動すると宙に白い枠が現れて、それがタッチパネルのディスプレイになった。ディスプレイにログオフの設定がしたいと意識を送ると、現在右手に持っているものをトーテム(ログオフ)設定対象にしますか、と表示された。

 私は、肯定と意識を向けるとログインする前に持っていたものが自分の右手に感触が現れた。私は本型のログオフキーのベルトを開き、中を確認する。そこには写真が二枚入っており、右と左に収納されていた。私はそれを確認し、これをログオフキーとして最終設定を行った。すると私はログオフされ、目を覚ます事になった。

 

 私は目を覚ますと、右手に持っていた本型のログオフキーを離し、二度寝した。


 二度寝すると先ほどの白い部屋に入った。私はログオフしたいと思うと右手に本型のログオフキーの感触が現れるのを確認すると、右手に持っていた本のベルトを開け、中身をチェックしログオフした。


 寝ぼけながら、ログオフ設定がちゃんと出来たことを認識し、私はのらりとベッドが立ち上がった。ちゃんと自分の部屋に戻ってきたことを見渡して確認して、大きなあくびをし寝直した。そして機器をオフにするのを忘れてそのまま寝て、またログインすることになった。


「ああ…忘れてた…」


 私はげんなりしつつ、もう一度ログオフしようかと思ったけど、そのまま白い部屋で腕を組みながらネットに接続した。だけど、今日は普通に寝ようと思ったのだが、私はまた起きなおすのも面倒でやめた。夢を見てる時間を利用して、ゲームや調べ物、教育系プログラムを受ける事が可能になった事で睡眠時間そのもの質が変わった。


 この機器が開発されるまでは夢は、体感現象に過ぎず知覚現象ではなく「仮想と体感する現象」に過ぎなかった。欲求と現実を解消し、脳の負荷と精神の負荷を整理する作業にすぎないものだった。今は負荷を整理するエネルギーを利用し、睡眠そのもの変えたのだ。


 私はテスターとして参加してるゲームが今まで出したゲームをレビューやどういうものか調べたりした。


現実でのインターネットと違い、機器を利用した場合は2次元状のみでの表示ではなく3次元での表示に変わる。情報量や通信速度、処理なども格段と変わってくる。

 私が持ってる機器はそこまで高性能でないが、ウィンドウの表示数や読み込み処理速度もストレスを感じるものではなかった。


「ふぅ~ん、かなり評判がいいけど難易度は人によってかなり左右されるんだ…」


 難易度の評価はどれも人それぞれだったが、一貫して難易度云々よりも病みつきになる面白さがあり、まるで自分専用に造られたかのようなゲームという評価だった。


「自分専用に造られたかのようなか…」


 ゲームに何を求めているのか、その時間を教育プログラムに使う人もいるが、成人間際になると大半はゲームをしてる人が多い。子供の頃は教育プログラムで教養や知識を磨き、教育課程を早く終わらせてしまうのだ。

 また幼少の頃から早めに終わらすことで脳の処理能力が向上される。処理能力が高ければ高いほど、ログイン中の時間軸が変わってくるからだ。5分間夢を見ていて夢の内容が1日の人もいれば1周間の人もいるのがこの処理能力の違いだった。

 処理速度が違うだけで頭がいいかは別だが、時間軸が変わって来る。その分、ログインの滞在時間が長くなっていく為、経験時間が増える。その経験時間が成長を加速させていく、知識はもちろん、精神的にも…成人する頃には過ごしてきた時間はこの画期的な機器が出来る頃で言う30代~50代あたりまでの時間を過ごすことが出来るようになった。

 学校も仕事も、様々な事が変わっていったのは言うまでもなかった。そして、この現実との時間軸の違いに重要性を意味することになった。脳の処理能力を増やすには、健康的な生活習慣、健全な精神が求められた。薬や催眠術などの手法は所詮は付け焼刃的なもので、リスクの方がはるかに高かったのも起因する。


「人によって差はあるが時間軸の拡張が見張るものがあるか…」

 ログインし、そこでどう過ごすかは人によって変わって来るが時間軸を拡張させるのは「ログインしていたい」と思う気持ちだった。この機器が出始め、思考能力の差や精神的な落ち着きなどが同年代よりはるかに年上と感じる違和感が社会問題となった。しかし、いち早く教育に取り入れたり、体感していたものは他者と違いすぐに頭角を出していった。


「私は最長7日間だしな…最低で1日…安定しないなぁ…」

 1回の睡眠でログインしていられるか、その時間軸は年齢によって変わって来る。訓練次第で3ヶ月、半年という人もいる。一日で世界でその日何が起きたのか知ることが出来てしまう、現実では処理しきれないこともここでは処理できてしまう。

 また、同じ時間にログインしてる場合は会うことも出来る。その場合、時間軸が近くないと会話や行動すら安定しなくラグが起きたり、ぼやけたりする。通常速度と5倍速の人とでは噛み合わないため、脳の処理速度というのは重要だったりする。


「そういえば、テスターとして参加してるこのゲームって脳の処理速度のランクどうなってんだっけ…」

 脳の処理速度がかけ離れた者同士が同じゲームをする場合、どうしても速度を合わせる必要がある。機器そのもののスペックがよくても脳の処理速度とは関係がないため、脳の処理速度ごとにサーバーで区切られている。

 しかし、最低限求められるランク制度があるため、ゲームを遊ぶにも自分自身を鍛えなければいけない。単純にゲームといっても娯楽ではなく、娯楽を通して行われるトレーニングに近い。


「うっそ…これランクめっちゃ高いし!ってよく思い出せばゲーム時の見えてる風景とか最初の一回目とかぼんやりしてたっけ、二回目も死亡しまくって…あ、だからか!」

 私はあの時、難易度設定が難しすぎると思ったのは間違いではなく、単純に自分の処理能力が低かったため、何かを見逃していたりしたんだと気付いた。

「うわ、恥ずかしい」

 友人がテスターとして応募したものをろくに調べもせずにやってた自分があの時、不満を抱いていて口にしていたと思うと恥ずかしかった。


 通常のパッケージ化されたゲームは50~100時間だが、オンラインゲームで拡張されたりするタイプのものは何百時間基準にになる。しかし、夢を利用したゲームは何百ではなく、何万時間になり短くても何千時間なのだ。年齢によって脳の処理速度が増えていく事もあるが、稀なケースである。


「今までのシリーズでも結構求められている時間軸のランクが高い…しかも、結構多人数で同時プレイも可能なのね」


 複数人数、多人数で遊べる環境にする為に脳の処理速度を合わせ、一緒に遊ぶのが主流。でもこのゲームは最初の何度かは自分の行動データからログインしてない時間も進行し、ログインした時にフラッシュバックして何をしてきたのか「まるで自分がしてきた」と認識して進ませるタイプのものもある。

 

「この会社のゲームはどれもフラッシュバックさせてあたかもログインしてない時をログインしていた風に感じさせるしか出してないのね」


 そうなってくると放置して他のゲームをしたりするのかと思ったら今まで出たゲームシリーズはどれも実際にプレイした方がはるかに面白いため、放置する人が少なく一定した稼働率だった。

 

 他にどんなゲーム出してるんだろ、気になり調べる事にした。

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