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29-

 薬物による睡眠ではなく、自然に眠気に誘われ私はゲーム入っていった。眠りに落ちるのとは違い、一瞬だけうつらうつらしそうになった瞬間に瞼の奥から映像が流れて、体全身を包んでいった。視界が鮮明になっていくと同時に、記憶がぼんやりとしていった。


 気が付くと濃霧に包まれた森の中を三人で歩いていた。突然、頭痛に襲われ私は武具をを持っていない手で頭を抑えた。恵那と乃陰は心配し気遣ってくれた。ああ、そうだ…


 ログインしてなかった時の夢だけではなく、それ以外のイベントも進んでいた。


眠兎「えっ…なに…」

 本来なら、現実の記憶はログインした瞬間にゲーム時の記憶になる。しかし、現実の記憶とゲームの記憶が混合していた。

 奇妙な感覚だった、気がついたら第三者視点と主観で自分自身を見つめていた。主観からは何も見えてないが第三者視点からは自分と目があった。あたりが真っ白になり、自分が向き合っていた。正確にはゲーム内の自分と現実の自分だった。


乃陰「おい!大丈夫か!しっかりしろ!」


 肩を揺さぶられ、私はさっきまでいた真っ白い空間から戻ってきた。さっきまで見えていた自分はなんだったのだろうか、気味が悪いと感じた。


乃陰「おい?大丈夫か?おい」


 さっきから肩を揺さぶられ、正直気持ち悪くなってきた。

眠兎「だ、大丈夫だからやめっ…やめぇ!」

 乃陰は、肩から手を離し腰に手をあて、私の様子を伺っていた。恵那はあたりを警戒し、周囲に何もないか注意していた。

眠兎「ごめん、なんか今…あれ…なんだっけ…」

 思い出せない、さっき何か思い出しかけていたがぼんやりとして霞がかかって思い出せない。

眠兎「だぁぁぁ!!!!乃陰のせいで忘れたぁぁぁぁ!!!!」


 私の叫び声に恵那はビクついていた。乃陰に八つ当たりをするも綺麗に避けられる。もう慣れたもので乃陰はやたら絡んでくることが多く、その度に蹴飛ばそうとしたりぶん殴ろうとしているのだが全部避けられる。一発くらいいいのを当てたい。正直、ムカつく

 恵那はそんな私と乃陰のやりとりを見て、笑っている。とりあえず、乃陰は当たらないので恵那へターゲットを変えど突く、そんな日常。


 出会ってから数日だが、お互い打ち解けていっていた。今まで一緒に旅をしていたようなしっくりさがあった。私は心地よかったし、楽しかった。私達は遺跡にむかっていた、かなりの冒険者が調査に来たが何も反応がない特殊な遺跡らしい。


 もしかしたら、私の武具が反応するかもしれないということでその遺跡に向かうことになった。


 恵那と乃陰もその遺跡に行くのは初めてだったが、大まかな場所はわかっているとのことで足取りは軽やかなものだった。濃霧がほぼ篭っているため、遺跡に辿り着けにくく、辿りつけても町に戻るにも困難を極める場所にあった。濃霧が立ち籠めるような場所ではなかったが遺跡の出現によって変わったらしい。


 私達、3人は遺跡へ向かっていた。正直、道に迷うと思ったが盲目である乃陰にとっては濃霧があろうと関係なかった。そのため、遺跡への方向は問題なく進んでいた。一方、恵那は一緒に行動しているのに関わらずはぐれそうになったりしていた。ただ、私はというとマップとリングレーダーで見失うことはなかった。


 程なく歩いていると濃霧が段々と晴れていき、大きな遺跡が朧げに見えてきた。周りは木々に囲まれているため、木々と遺跡を比べると遺跡が思った以上に大きいのがわかった。開けた場所に出ると、地面は石畳になっており、独特の雰囲気を出していた。ここは他の遺跡とはなにかが違うというのが感じた。


 石畳の道を進み、遺跡をはっきりと視認することが出来た。その瞬間、奇妙な違和感が襲った。どこかおかしいと感じ、背筋から冷たい汗が流れた。


 嫌な感じがした。瞬時に恵那と乃陰が戦闘態勢に入った。


 私は二人が戦闘態勢に入ったのを見て、棒を取り出そうとしたが、身体に力が入らなかった。自分の身体が震えているのがわかった。心なしか呼吸ができず、胸に激痛が走った。

 なんだろうと思い、胸のあたりを見るとぽっかりと胸が空いていた。私は膝をつき、そのまま倒れた。


 私は死んだ。


 崩れゆく意識の中で胸が消失し、呼吸が出来ず、脳に激痛が走り、視界は黒く染まっていき、声も出せず死んだ。



 暗闇に包まれ右も左も上も下もわからない、声も上げることも身体を動かすこともそもそも自分の身体があるのかさえわからない。ただ自分自身がすごく重く何かに縛られているような感覚の中、何かをしようとするたびに沼の中にいるような不快感が全身を襲ってきた。それは呼吸をしようとしても襲ってきた、呼吸を我慢するという行動でも常に付きまとってくる不快感だった。

 次第に、その不快感から逃れたいがため、思考やあるかどうかさえわからない身体をどうかしようとすると更に不快感が襲ってきた。

 次第に思考は後悔と無念、そして生への執着が心を支配していった。どのくらい時間が立ったのかさえわからなく、一分なのか数時間なのか、時間の感覚がまるでなかった。ただ、苦しみが自分を支配していた。




「うっ…ゴホッゴホッ!」

 目が覚めたら、汗をぐっしょりとかいていた。リクライニングチェアから起き上がり、全身が冷えていた。

「な、何なの…」


 

 ゲームで死亡したら、直前のセーブポイントやリスタート地点に戻されたりするだけだ。あんな気持ち悪い感覚になったりなんか今までなかった。私は思わず吐き気を催した。

 あまりの気持ち悪さに吐きそうになったが留まる。いったいなんだったのか、私は頭を抑えながらべっとりと肌に汗でこべりついた衣服に不快感を感じながらため息をした。


 はぁ…


 このゲームはリアリティがあり、感じさせてしまうのがうまい。このゲームは死亡、もしくはゲームオーバーの条件に当てはまった状況に陥った場合は危険回避可能な分岐点に戻り、そこからゲームのリスタートされると聞いた。


 私はあの感覚の中にいるだけで、すぐにリスタート地点に戻らなかった。もしかして一度起きないと戻れないのかと疑問に思った。あの不快な感覚がログインしたらまた感じないといけないとなるとさすがにログインはしたくないなと思った。


 しかし、一度死亡した場合、どうなるのかをテスターとしてもう一度ログインしなければいけない。それにこれはゲームなのだから、別段現実には影響はない。あの気持ち悪さはさすがに嫌だなと思ったけれど、ゲームなので抵抗感は時間とともに薄れていった。


 私はもう一度ログインしなおした。薄れゆく意識の中で、まさかさっきの続きってことはないよねと頭をよぎったが濃霧の中、歩いていてもうすぐで遺跡という所だった。そしてこのままだと自分は死ぬということがわかっていた。

 そこで私はログイン時にどうしてその記憶を保持しているのか、本来なら記憶喪失状態のはずなのに、という疑問が出てきた。これから起こる事に対して、予め知っている事から余裕があった。

 程なく、石畳を歩き違和感を感じる前に自分が殺されるのを感じ取りバリアを展開しその場から大きく真横に動いた。これで避けれるだろうと思ったがそうはいかなかった。自分の右胸から腕が消失したのだった。バリアも貼っていたのにも関わらずだった。


 そして、気がつけば遺跡に向かって歩いていた。


 前回のような「死」を体験するまでもなく、生存不可能フラグが立った時点で気がついたらリスタートしていた。だけど、相変わらず身体が貫かられる感覚は毎回あったが、痛みが走る前に元の場所に戻っていた。あの攻撃が何かさえわからないまま死んだこと、バリアが意味をなさなかったことなどがわかった。私は完全にその攻撃を避けなければと思った。


 しかし、一度足りとも避ける事は成功しなかった。


 何十回も繰り返していく内に、これは罠がそこに張ってあるのかと思い違和感を感じる前に遺跡を背にして離れていったが、無駄だった。武具を展開し、刃でシールド状に形成しても無駄だった。バーサーカーモードにしても無駄だった。


 どうやっても突破が出来なく、リスタートする度に現実の記憶が鮮明になっていき、自分がゲームをテストしている感覚は確たるものとして認識していた。これはゲームだ、どうやったらあの不可視の攻撃で死なないように突破が可能なのか、攻撃してきているやつをぶちのめしたいという気持ちでいっぱいになってきた。


 ストレスの限界だった。


 これはバグなんじゃないか?絶対に突破できないバグだろ、知覚できない攻撃をどうしろっていうんだ。同じメンバーの恵那に盾を展開してもらってもダメだった。乃陰に怪しいやつがいないか確かめて来てとお願いしても何も発見できず、遺跡へ向かうと死亡した。

 遺跡に向かわず、帰るという方法も死亡し、迂回した場合も死亡、何をやっても死亡。死に覚えゲーじゃない、これはバグじゃねえのかとイライラした。何十回目かでその感情が表に出てしまっていて、恵那と乃陰は私からのイライラから不審がっているような、怖がってるいるような感じだった。

 それを超えた後に乃陰が訝しんで

乃陰「どうした?生理か?」

 と問いかけた時はキレて武具を取り出しドツこうとしたが、避けられた。そのやり取りを何回もあり、どうにか避ける方向など含めてわかってはいるものの、全て避けられた。さすがNPC、絶対に攻撃が当たらない仕様だと感じ攻撃をやめた。何十回もする内に、確定した未来があり自分の行動で修正しようとしても大きな流れに抗えないのではないかと思った。


 何度もリスタートされ、いい加減飽き飽きしてきた。イライラを通り越して飽き飽きし、妄想するようになった。こうだったら面白いんじゃないか、と…


 それがトリガーだったのか、死亡するまでの間が変化していった。本来のゲームならイベントに対して反応し、対処し、攻略していくのがゲームだ。だけど、今やっているゲームは違った。思考そのものが反映し、恵那と乃陰、周りの風景などが変化していった。

 最初は微々たるものだったが、死亡回数が増えていくにつれて変わっていった。明らかに異常なことは反映はされなかった。2人の会話の有無、動物の有無、またその内容に至ったものが反映された。


 妄想が反映されたのだ。明らかにこれはバグだ…以前、聞いたことがある。明晰夢を使ったバグは、以前聞いたことがある。思い通りになってしまうことでチート行為として対策されているものはずだ。ほとんどのゲームは対策済みになっていて、ゲームに介入を試みようとすると自動的に目が覚めるようになってるのだ。

 だけど、さっきから目が覚めない。覚めない所か現実の記憶が覚えている状態になっていた。ゲームの仕様上、現実の記憶は思い出せないようになっている。


 確か、こういった状況になった時などは自分から起きるには…起きるには…あれ…なんだっけ…思い出せない。


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