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車体がガタンと揺れ、頭が窓にぶつかり目を覚ます。
眠兎「いてて」
私はもう一度寝直そうと思ったが、見渡すと乃陰と恵那が捕縛してる敵の近くにいた。席から立ち、二人のもとに向かった。車体が揺れている中で、気をつけながら進み近寄ると二人が気づく
乃陰「起きたのか、あまり良いものじゃないぞ。討伐隊の人と話してて、何かこいつが静か過ぎるから様子を見てくれと言われてな」
恵那「それで死んでいないか確かめたのだけど、生きてはいるが動かないんだ」
乃陰「ほれ、生きてるか?」
乃陰が捕縛され箱詰めされている敵の頬をペシペシと叩く
すると、何か言いたそうに乃陰の方にギロリと目を向ける。猿ぐつわされて、何も喋れないので目で訴えるしかない。それにしてもこいつ目つき悪いなぁ…あの時やられた事を思い出し、一発殴ってやりたくなったが、関節がありえない方向に折りたたまれ箱詰めされている姿を見ると気持ちは失せた。なんていうか見てて気持ち悪いからだ。
あ、ヤバイ吐きそう…
今ならこいつに吐きかけてもいいかなと思ったりしたが、そもそもこいつ動こうにも動けないんじゃないのか…
眠兎「ね、ねぇ…恵那くん、こいつは動こうにも動けないんじゃ…」
そこで二人は顔を合わせ、そりゃそうだ!と言った。
乃陰は猿ぐつわを外し、外れた顎をゴキリと音を立てて戻した。戻された方は顎が戻った瞬間に苦痛の表情を出した。あ、これ乃陰わざとやったな…
「劣等種族のクソ共が」
速攻で毒づいて来やがった。
乃陰が無造作に髪の毛を掴み、ガンたれた。うわぁ…感じ悪い
乃陰「お前、自分の立場わかってないようだな」
「いてぇなおい、クソが…揃いも揃って呑気だなぁ!クローン兵を跡形もなく殺したその兵器、そして所持者の女の情報は本国に連絡済み、特殊部隊がお前らを狙ってくるだろうなぁ!!!常に怯えて逃げるがいい、安心して眠れなくなる日々、ザマァねぇな!アッーハッハッハッ!!!」
乃陰は掴んでいた手を離し、大口を開けている奴の歯を抜いた。
「-ハッ?あがっ?!」
そしてすかさず、頬を掴み強引に顎を外した。
だらりと開いた口、歯を抜いた箇所から血が出ている。目が血走っており、悲痛な声をあげようとしていた。
もう喋ることはないとばかりに乃陰は猿ぐつわを強引にさせた。さっきまで血走っていた目からはうっすらと涙を浮かべていた。
乃陰は舌打ちをし、恵那はため息をした。私は、一連の容赦なさに少し涙目になっていた。
恵那「あ、違うよ?!今のため息は眠兎にじゃないからね?乃陰、もうちょっとさ…加減というか-」
乃陰「ああ、すまなかった。こいつがあまりにも立場をわかってなくてな。だが、今後厄介者どもが狙ってくるのがわかっただけでもいいか」
ガンッと敵が入ってる箱を蹴飛ばす。中に入ってる奴がうめき声を上げる。
乃陰は相当イライラしてるな…
眠兎「乃陰、そのごめん…」
乃陰「気にするな、それに持ってる武具がとんでもないのなら、是非とも解明したいしな」
乃陰はニヤリを笑い、親指を立てた。わかった、こいつバカなんだ。
乃陰「お前、オレの事をバカだと思ったろ…まあ、武具に関してはそうだけどな」
眠兎「はいはい」
確かにこの武具はおかしい、最近その違和感を更に感じるようになった。恵那と乃陰はその違和感を気づいているのがわかるが明らかに他の人と服装が違うのに討伐隊や他の人には注目されなかったのだ…
本当にこの武具はいったいなんなんだろうか…
私は、座っていた席に戻り、窓に頭をよりかかせ、流れる景色を主観から見た。それと同時に自分中心に第三者視点をで窓の外から自分を見た。自分自身の目を閉じ、主観を見えなくしたが第三者視点は見えている。
ふと外から車内の中を覗いていたら、乃陰と目が合った。乃陰はゴーグルをしているので目が合ったというのもおかしいが、私が自分中心にくるくる周りながら車内を見ている時に的確に私を追っていたからだ。
眠兎「あんた、わかるの?」
乃陰「ああ、なんとなくだがな…って眠兎がやってることなのか」
あれ、どういうことだろう…私は目を開け、後ろの席に座っている乃陰へその場で身を乗り出した。
眠兎「なんでわかったの?」
私はまじまじと乃陰を見た。このゴーグルの下は見たことない、視力がなく盲目だと言っていたが本当なのだろうか
乃陰「ありゃ…わからなくなった」
眠兎「なんじゃそりゃあああーーー!」
この武具のこと少しでもわかると思ったのだけど、まだ先になりそうだなと思った。
乃陰「遺跡めぐりしてれば、そのうちわかるだろう。焦っても仕方ないさ、なんとかなるさ。道のりはまだ長い、寝てな」
私はムスっとし、座り直して寝直した。




