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 躱してるとは言いがたかった。武具が弾いてくれていた…パーティクル・アーマーによるバリアだ。透明の膜がバチバチ言いながら防いでいてくれた、私は距離をとろうとするが足元がおぼつかなくほとんど動けていない状態だった。


 恐ろしい速度で四方から攻撃されているのがわかった。かろうじて保たれているだけで、パーティクル・アーマーはずっと維持していくわけではないことが画面に表示されていた。


「アハハァ…一定以上の攻撃を断続的にして点ではなく面だと剥がれるねぇ!ねぇ!」


 みるみるうちにパーティクル・アーマーが剥がれていくのを感じ、さっきから回復しない倦怠感は身体を襲っていた。恐ろしい速度で四方から攻撃してくる相手に自分の反撃はかすりもしなかった。するりとかわされ、無駄な体力を使っているとさえ錯覚した。


眠兎「くぅぅ…」

 私が苦言を漏らすと敵はニヤつき、攻撃の手を緩めることはなかった。次第に身体が反動で動けなくなり、立っているのがやっとの状態になった。それにしてもこいつだけ別格だった。四方にほぼ同時に攻撃が出来る程の速度、そしてその攻撃手段が全て武器などではなく、自身の身体である。


 一発一発がパーティクル・アーマーからの衝撃で感じ、その度に今まで気が付かなったゲージが減っていっている。

 また、リングレーダーで対象を捉えているものの、単一のリングにもかかわらず常に四方に向いている。レーダーが機能していないんじゃないかと感じていた。


 分身やデコイかと思ったが、目眩をしながら足元を見ると自分の周囲に綺麗な円ができていたのだ。高速移動しつつ、一人で四方を囲んだ状態で私を逃げれないようにしていた。


 すでに武具の棒で身体を支えて立っているのがやっとの状態だった。この状態で最初に飛ばされた時の爆発をすればと思い、その方法を探そうとした。すると画面に相手のプロファイリングが終了したと表示された。


 相手のデータが表示され、改造人間だとわかった。個体ベースは人のそれだが筋肉や臓器、骨格などは人工で強化されたものであると表記されていた。そして身体全体に流れる気というものが高速に流れているのが表示されていた。


 嫌な予感、気持ち悪い空気がべっとりと身体に巻き付いていっていき反響して声が聴こえる。 

「あんなのいくら殺しても補充はきく」


 思い返せば、冷静ではなかった。突っ走ってここまできたこと、まるで何かにとりつかれていた。頭の中に重く何かがのしかかっているような頭痛がした。鈍い痛みがじわりと広がっていた。


「一番強い個体をクローンにしている。性格など、元に近いがそれでも劣化してる…ただの使い捨てだ」

 こいつは何を言ってるんだ…

「自分が何者かになった…そう思ったのか?」

 今まで倒した敵はクローン兵…

 

パーティクル・アーマーが削られていき、画面に危険と表示される。

「やっと開いたねぇ!これプレゼントォォ!」

 腹部に手が当てられた。


 それが何を意味するのか、私は理解した。


眠兎「…ぐっ、ぐはっ!!!」

 腹部から急激にこみ上がってくる熱が一気に口から流れ出た。胃液と血が混じっており、ひどい臭いが鼻についたものがビチャビチャと出た。

 衝撃が内部にあったと同時に攻撃してきた敵は目の前から消えていた。画面には発勁による肉体内部へのダメージと表示されていた。


 打たれた箇所を手で抑えながら膝をついて、もう片方の手はかろうじて棒で身体を倒れないように支えていた。


「きっ…たねぇのっ!」

 腹部の手で抑えてない方向から衝撃が走り、私は声すら上げられずくの字になったまま吹っ飛び、地面についたと思ったら転がった。


眠兎「ご、ごほっ・・・ごほっ」

 咳き込み、血が当たり前のように出る。さっきから画面場に危険アラートが出ている。腹部に激痛が走っていて考えられるのは、いや思いだけだった。


 ただ…死にたくない、と


「アハッ!アハハッ!いいねぇ!まだ気を失ってない!あんだけ練気したのを受けて意識あるとか最高だな!」


 死にたくない


「どらぁ、いい顔に整形してやるよ」

 無理やり、髪の毛を捕まれ立たせられる。ブチブチッと髪の毛が抜けた。腹部の痛みよりないとはいえ、脳に近い部分であるため、痛さは別だった。


眠兎「いあ…い」

 やめて、と言いたかった。


 目を開きかろうじてそいつの顔が視界に入り、髪の毛を掴んでいた手を離され、拳を振りかぶってた。


 殴らないで、お願い…だからと思った。苦痛で意識は遠のきそうだが、恐怖がそれを許さなかった。   


 突如、目の前に大きな白い壁が現れた。

ズガァァァン


 衝撃はなく、音だけが聞こえた。


恵那「間に合ったとはいえないけど、大丈夫か眠兎!」

 目の前に現れのは恵那と盾だった。


恵那「乃陰、手当を!こいつは食い止める」


 乃陰がすかさず、腹部に手を当て、自分の身体に暖かいものが流れ痛みが和らいでいく

乃陰「このクソアマが、じっとしてろよ。今治してうやるからな」


 さっきまでの痛みがじんわりと無くなっていくのが感じた。

眠兎「あ、ありがー」

乃陰「しゃべるな、回復が遅くなる。だが気をしっかり持てよ…絶対に気を失うなよ」

 ゴーグル越しでどんな目をしているのかわからない。額には汗がにじみ出ていたのがわかった。歯を食いしばっているのがわかった。


 ガァン!ズガァン!ズガァン!

恵那「乃陰、こいつ…結構強い」

「うっとおしい召喚盾だなぁ…壊しても壊しても…うざってぇなあ」

恵那「召喚盾か…ちょっと違うんだけどね。」

 恵那は盾から剣に変え、攻撃に転じた。

「んだよっ!そりゃあ!!」

恵那「推して参る!!!」


 気を失いそうになりがら、彼らの戦闘を視界に入れていた。主観では見えないので第三者視点を使って見ていた。

 恵那が相手を攻撃をさせない、かつ離れさせないように一定の距離を保持しつつ、攻撃を繰り出していた。剣は鞘に入った状態のままで、相手がしたい攻撃をさせないように剣で行動を阻害していた。その都度、相手は一瞬硬直を余儀なくされ、違う攻撃に転じようとするがそれも新たに生み出された剣で阻害していた。

 剣そのものを弾かれたり、掴まれたりしても瞬時に出し直していた。


乃陰「もう少しだが、治ったからっていって動くなよ…」


 痛みはほぼ引いて、画面を見るとさっきまで出ていたメッセージがほぼ消えていた。

 私は乃陰に頷き、自分は大丈夫だと伝えた。


乃陰「ここでゆっくりしてろ、お前が強いのはわかったが、とくにこいつは殺しちゃいけないんだ」

 私は身体を起こしながら、頷く。


 乃陰は立ち上がり、恵那の元へ向かう。

敵がそれに気づいて、逃げようとしていた。いや、もっと前から逃げようとしていたのかもしれない。恵那は盾から剣に変えたのは逃さないためだったと気がついた。

 そして、剣に変えてから敵は次第に行動がほぼ出来ないようになっていた。逃げようとする瞬間、体制を崩され回りこまれていた。高速で私を四方から攻撃していた時とは逆に、ゆったりとした流れで恵那が敵をほぼその場から動かせないようにしていた。


乃陰「待たせたな」

 乃陰は拳と首をボキボキと鳴らしながら恵那と挟むような形で敵の後ろに現れていた。恵那の方に歩いて向かっていたのは見えていたが、敵の後ろにいきなり現れたのだ。敵も驚いているが私も驚いていた。


 その後は一瞬だった、乃陰が双掌打に似たような攻撃を相手の頭と背中、撃ちだされた。打ち込まれた敵はその場でゆっくりと倒れた。


恵那「ふぅ…遅いよ」

乃陰「お前が仕留めてもよかったんだぜ?」

恵那「鍛錬しておくよ…」

 そう言いながら、二人は気を失った敵の装備や持ち物などを慎重に調査していた。


恵那「こいつもやっぱり…」

乃陰「ああ、自爆装置つけてやがったな」

 世界の敵は、どうやら戦場で戦闘継続が不可能な状態に陥った場合、周りを巻き込んで爆発する仕組みになっているという。下手に相手を追い詰めた場合、自爆することもあり、相手を完全に気を失わせるか、胸の部分に強い衝撃を与え爆弾を壊すしかない。

 今まで恵那と乃陰が慎重に相手を倒していたのも、そういった理由だった。私は単に相手を倒していた時に無意識に心臓と頭を消失させていたから爆発が起きなかったとのことだったというのを知った。


 最初の巡回兵を倒した時に、踏みつぶしたのも単純に運がよかった。


 爆発物の解除と、敵を動けないように乃陰は敵を拘束し、近くにあった箱に詰めていた。ありえない方向に折り曲がっている手と足をちらりと見えた。詰め終わった後に、乃陰と恵那は私の方に歩いてきた。


乃陰「死に急ぎ過ぎるのもやめろ…」

恵那「次からは頼むから一人で行くな!死ぬつもりか!!!」

眠兎「…ご、ごめん…」

 私はゆっくりと立ち上がり、二人に再度謝った。

眠兎「ごめん、本当に…助けてくれてありがとう。」


 私は安心したら気を失って、その場でぶっ倒れた。倒れる瞬間、地面とぶつからず誰かに抱かれた感触があった。


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