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17-

 頭の耳が反応し、救難信号という表示がされた。声を拾い文字情報として形成してくれる機能だ。それが反応し、点滅していた。乃陰も気付いたらしく、歩みを止めて私達に声をかけた。


乃陰「何か様子がおかしい、ちょっと気になることがある」


 乃陰は地面に耳をつけ、様子を伺ってる。私は頭の耳が反応してるため、異常が発生してるのがわかる。

 死にたくない、助けてという声が文字として表示されていた。年齢は10代、性別は女と表示されていて、マップを見るとおおまかな場所が記されていた。


乃陰「何かから逃げてる…?でも何から逃げてるんだ…?モンスターじゃないぞ…」

眠兎「10代の女の子が逃げてるのは私もわかるのだけど…」

 胸騒ぎを感じ、その方向へ走っていった。


乃陰「何から逃げてるか、眠兎はわかるか?」

眠兎「わからない、ただ助けを求めていることしか」

恵那「このあたりはモンスターは出る事はほとんどない町の近くだし、どこへ逃げてるんだ?」

乃陰「それが町の方向とは反対方向なんだよ。町から離れていってるんだよ。」


 自動マッピングとリングターゲットが大まかの場所を特定し、乃陰と恵那にそれを伝え、私達は何が起きているのか調査に向かった。


 近くまで行くと、怯えてる声が文字としてはっきりと表示され、乃陰の表情も険しくなった。


乃陰「待て」

 小声で乃陰は私達を止める。私は早く助けにいかないと、という気持ちで焦っていた。

乃陰「何かおかしい、モンスターじゃなくて人だ…盗賊か、それにしてもなんでこんな場所に…しかも女の子一人でなんでいるんだ?」

恵那「追ってる数は?」

乃陰「一人だ」

恵那「一人?おかしくないか」

眠兎「そんなことより、助けに行かないと!」

 私は居ても立ってもいられず、女の子が助けを求めている場所へ走った。マップでは近くに来た事により、どこにいるのかより精度が上がった状態で表示された。

 そして、そこにもう一人いるのもわかった。


 私が先行して向かうと後ろから二人も着いてきてるのがわかった。私が駆け出した時に、私を静止しようとしていた声が聞こえた。それを無視し、十分もしないうちにその場所に着いた。


 そこには女の子が倒れており、それに足蹴してる男がいた。すでにぐったりしており、意識が朦朧としているのがわかる。

 そして、私が来たとしてると足蹴から踏みつけに変わった。


 私は頭がカッとなり視界の外側が赤く染まり、黒い根のようなものが視界の外側から内にかけて這っていくのが感じた。第三者してんだと、普通のクリアな視点だが赤い画面が小さくポップアップしてるのが見えた。


眠兎「てめぇ!何してんだァァァ!!!」

 すぐにわかった。私を襲ってきた仲間だということに、装備、顔つきから敵だとわかった。棒から槍にし、横一線に薙ぎ、倒れてる女の子から距離をとらせようした。


 しかし


 踏みつけていた足をそのまま曲げ、低い姿勢で私の一線を躱し、そのまま女の子を踏みしめ、距離を詰めてきたのだ。

 女の子は苦痛の顔をし、口から血を吐いたのが見えた。


「クヒヒッ」


 距離を詰められた瞬間、その男はすでにナイフを装備していた。

 まずい、距離をとろうにも身体がまだ追いついてなく、これは死なないにしても致命傷になると感じた。頸動脈に向かってナイフが恐ろしい速度で向かっているのを感じた。


 『自己防衛機能:リアクティブ・アーマーがONになりました。』

 

 武具がすぐさまに反応し、本来であれば切られていた箇所に小さな衝撃を感じ、ナイフが弾かれた。


 カァァン!と鐘を叩いたような音がなった。男は怪訝な顔を一瞬したと思ったら、即座に距離をとった。


 『自己防衛機能:リアクティブ・アーマーがOFFになり、パーティクル・アーマーがONになりました。』


 自動的にアーマーが変化したのを感じ、自分の周りに不可視の膜ができたのを感じる。TPS視点からだと球体に包まれているのがぼんやりを表示されていた。

 自分の身はおそらくだけど、大丈夫だろうという安心感があったが、女の子をかばいながら戦える自信はなかった。


 相手の出方を伺いつつ、倒れている女の子をちらりと見た。


 瞬間、盗賊はすぐに距離を詰めたが、見えない膜にぶつかり距離を再度取る形になった。


「け、結界だと…糞が」

 舌打ちとともにこちらの様子を見ている。


乃陰「やっと追いついた…」

恵那「どうやら間に合ったね」


 二人が追い付いてきた、というよりも盗賊の後方から私を始点にするとちょうど三角形の形になった。回りこんで、囲い込んだ形になった。

 さすがに盗賊も分が悪いと判断したようだ。私はなにか仕掛けてくると感じ、ゆっくりと距離を縮めようとした時、突然、盗賊が意識を失いその場で倒れた。


眠兎「えっ…!?」


 何が起きたのかわからなかった。

 乃陰が一瞬で距離を詰め、手刀を盗賊の後ろ首に入れたのだった。


乃陰「ふぅ…全く最後まで人の話を聞いて欲しいもんだよ」

恵那「他の仲間は周囲にはいなさそう…でもなんか妙だ」


 恵那は周囲警戒しており、私は倒れてる女の子に駆け寄った。


乃陰「くそっ、ひどい事しやがる…」


 乃陰が言っている意味がよくわからなかった。彼は気づいていたんだろう…


眠兎「…えっ、ねぇ…この子…」


 死んでいたのだ。

 さっきの戦闘時に盗賊が私への攻撃の際に踏み込んだ際に、死んだのだった。


 私は助けられなかった…

 手足から感覚がなくなり、呼吸もうまく出来ず、目の前の現実に頭が追いつかなくなっていた。この感覚まただ…視界がまだ赤く、黒い根のようなものが畝っていた。


乃陰「しっかりしろ眠兎!泣くな!まだ危機が去ったわけじゃねえ」


 気がついたら、目から涙を流していた。自分の無力さに、泣いていた。この名も知れない女の子を救えなかった事に…なんであの時―


恵那「今は後悔するときじゃない、何が起きてこうなったか情報を整理しよう」

 恵那が私の肩に触れ、私を後悔させないようにしてくれたのを感じた。その瞬間、主観視界がクリアになっていった。


眠兎「う、うん…ごめん」


 私は立ち上がり、乃陰が気を失わせた盗賊を見た。身ぐるみを剥がされ、所持品が整理され地面に置かれていた。

 また、盗賊が持っていたと思われる縄で盗賊は縛られていた。


乃陰「さて、こいつは厄介な状況だ…これは俺たちが探していた盗賊のアジトにいた同じ盗賊の連中だと思われる。」

恵那「そして、この特徴的な顔つきからすると世界の敵だ」

 世界の敵…?確か、壁の向こうから侵略してきてる人たちだ。

乃陰「アジトからかなり離れた場所で一人で女の子を追っていた、となると町の方はすでに襲われているだろうな」

恵那「町の住人がこのままだとやばい」

乃陰「ああ、でも俺たちはアジトの場所を報告したから早くて今日明日には、討伐隊が来るな」

恵那「クソ…なんとかならないのか…」

乃陰「敵の規模と目的をこいつから聞いてから考えるか…」

恵那「尋問するのか?」

乃陰「情報はあった方がいい、二人はちょっと席を外してくれ」


 私は恵那に引っ張られ移動させられた。3分くらい歩いてさっきの場所から離れた位置に移動した。


恵那「ごめんね、間に合わなくて…まだ状況が飲み込めてないと思うから説明するね」


 私は正直、ついていけなかったのでどういった状況なのか説明してくれた。

 盗賊は基本、アジトからそんなに離れない、離れるにしても最低でも2~3人で行動をする。今回、盗賊が人さらいだったとした場合、追跡していた女の子をわざわざゆっくりと追ってなかったとの事、逃げていたとしてもすぐに追いつける脚力を持っていた為だ。また、乃陰が感じていたのは追っている速度が一定ではなく、遊んでいた風に感じていたのだった。

 そして極めつけは、眠兎が交戦状態になった際に女の子が殺された事についてだった。普通の盗賊なら、まず殺さないで人質として使うのだが、殺したとなるとただの盗賊ではないということだった。また、世界の敵特有の顔つきで自分たちと違う顔つきだと瞬時にわかった。

 その世界の敵が盗賊活動をし、ここまで来てるということは彼らは先遣隊の可能性が高く、町はすでに占拠されている可能性があるとのことだ。先遣隊は、かなり腕が立ち、さっきは不意打ちで気絶させたから倒せたのかもしれないとのことだった。


 私はその話を聞いて、震えていた。


恵那「ということなんだ…今、乃陰が尋問してると思う。かなりキレていたから容赦はないと思う。彼も怒っていたしね」

眠兎「わ、私が先走ってごめんなさい…」

恵那「いや、まあ不測の事態なんてよくあるよ。それよりこれからどうするかなんだけど…」


 これからどうするのか、町に行き戦うものだと思っていた。自分は足手まといかもしれないが、このまま見過ごすわけにはいかないからだ。しかし、恵那から発せられた言葉は全く違った。


恵那「乃陰の尋問が終わり次第、隣の町へ移動を開始し、討伐隊をすれ違った場合は情報を提供する。すれ違ってもすれ違わなくても隣の町へ移動する」


 恵那の話を聞いて、戦わないのかと疑問に感じた


恵那「僕たちは冒険者だ、傭兵だったとしても仕事を請け負ってない状態で戦闘する人はいない。相手の戦力がわからない状況下、もしわかったとしても3人だけじゃ殺されに行くものだ。最低でも10人以上はいると見ている。」


眠兎「それまで見殺しにしろっていうの?」


恵那「助けに行ったところで町の住民が全滅してる可能性があるんだ」


眠兎「そんな、生きてる可能性だってあるでしょ!」


 私が言った言葉に、恵那は下を向き、歯を食いしばり…重々しく口を開いた


恵那「それは可能性として非常に低いよ…世界の敵、彼らは”死姦”や目の前で他人の死を見せつけて強姦をしたり、手足を切り離したりして犯すような連中なんだ…」


 な、何を言っているのかわからなかった。


恵那「そんな中に、殺される可能性もあり、ましてや女である眠兎が、最悪捕えられた場合は全滅する可能性が高い」


 もし戦いに負けたら自分は何をされるのか、怖くなった。


恵那「ごめんね、脅すような形になって…そろそろ戻ろう。多分、尋問も終わっていると思う」


眠兎「…うん」


 現実をあまりにも知らなすぎていた。私の中で、世界への理不尽さへの思いがこみ上げてきていた。それと同時にさっきと同じように視界が赤く染まり、黒い根のようなものが見え始めていた。


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