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008 飛行機の中で

 前述した通り、大西洋に浮かぶ国土がやたら広い国ルウイヤから飛行機でドイツを目指すのは俺とナミンだけだ。他のメンバーはもう合流地点であるロンドンに到着しているらしい。英雄は遅れてやってくる、ってな訳だ。もちろん嘘である。


 我々が住んでいる都市コバレッタはルウイヤの中でも西より、つまりアメリカに近いところにある。なので、ロンドンまで大体六時間かかる。昔はもう少し早かったらしい。まあ、たいして変わらないとは思うが。


飛行機を使うのは二人だけなので、その分機体は小さい。チャーター機だから文句はない。だが、機体が小さいことによって弊害も生じた。ナミンとの距離が近くなるので、会話する回数が増えるのだ。正直億劫である。奴は数分に一回は人を罵らなくてはいけないという運命さだめの下に生まれた女だ。本人はむしろそれを楽しんでいるが、罵られる側は堪ったもんじゃない。やってらんねぇ。


「アンタ、早くロンドンに着かないかな、サンベルトといるとストレス溜まって任務に集中できないな。とか思ってるでしょ。私みたいな美少女と密室で2人きりでいられるんだから、もっと喜びなさいよ」


「美少女って・・・・・・お前今何歳だよ・・・・・・」


 地獄の六時間が始まった。



「ヴァルター村って正式名称なの?」


「ああ。そのはずだ」


「調べたけどなにも出てこなかったわ。あなたもなにも見つけられなかった?」


「調べてない」


「アンタこれから行く所さえ調べないなんて、班長が聞いてあきれるわ!それだから日本の依頼人に心配されるのよ。この人ホントに信頼できるんですか、ってね!」


「ところで、調べた結」


「話を逸らさないの」


「ごめんなさい」


 こんな感じの約一時間、


「向こうについたら会話は全部英語よ。今の内に少し耳を慣らしておきましょう」


「やだよめんどくさ」


「You must speak English.Oh, can't you speak English? OK.Then, You have to go back to your home. We don't need you. (英語で話なさい。あれ?アンタ英語話せないんだっけ?なら家に帰るべきね。アンタなんか要らないわ)」


「Hey! What did you say? Listen to me, Namin. I'm speaking English. And I'm stronger than you. (は?何言ってんだお前?よく聞けナミン。今俺は英語を話している。それと俺はお前より強い)」


「Be quiet, Rin. You're too noisy. I'm sleepy. (静かにしなさいよ。ホントにうるさいわね。私眠いの)」


「○○○○ you, Namin. (この〇〇〇!)」


 こんな感じで一時間、


(ガチで寝ちまったよ・・・・・・俺も寝るか)


 でニ時間、


(すげぇ、目ぇ開けたまま寝てる・・・・・・!写真撮って脅迫材料にしよう)


「この私が、アンタとはいえ男とニ人っきりの時に無防備に寝ると思った?アンタ私と知り合ってから何年経つのよ。学習しなさいよ」

 

「バカにしすぎだろ!俺は班長なんだぞ!」


「班長がバカだなんて、地図は見つからないかもしれないわね」


「な、なにいってんだ そんなはづないだろう」


「発音おかしかったわよ。そんなはずないだろう、でしょう普通は。どの地方の方言よ」


「俺の故郷のだ」


「アンタ、コバレッタの人よね。首都育ちの人間が標準語話せないんですか?」


「黙れ田舎者」


「なんですって?もう一回言ってみなさいよ!」


 とナミンの新たなコンプレックスを発見したりした。あとは雑談だな。


 コックピットから着陸のアナウンスが入り、下の街並みを紹介してくれた。それにつられて窓から地表を眺めると、ロンドンの朝が見えた。前に別の任務でロンドンには何回か来たことがある。その度に美しい街に感動しているが、今回もそうなることだろう。


 ロンドンに飽きた時、その人は人生に飽きたのだ

                    サミュエル・ジョンソン


 この言葉は、少し理解できる。

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