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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

図書室のおひめさま

作者: UK
掲載日:2014/12/27


 勉強が一段落した所で、うーんと伸びをしながら壁に掛けてある時計を確認する。

 時刻は既に九時。そろそろ教師が見回りに来て帰宅を促す頃だろう。夕方までは居た司書も、カーテンを閉じるなど一通りの始末をすると、もう要は無いとばかりにカウンターに鍵を置いたまま帰ってしまっていた。無責任な、一言声を掛けてくれればいいのに。


 最後なら鍵を掛けなければならない。辺りを見回すと、最早図書室に残っているのは黙々と勉強をしていた私と窓際に座って読書をしている同学年らしい男子生徒だけになっていた。こちらの物音を気にかける様子も無いので、後は彼に任せればいいだろう。

 面倒な事はしたくないので、手早く持ち物を鞄にまとめて出口へ向かう。帰りにちょっと遅いけどファミレスで夕飯でも食べていこうかな、なんて考えながら扉をがちゃっと開けて、


ーーーー広がっていたのは森だった。


 暖かい日差しが降り注いでいる。子鹿が跳ね回り、青い空では小鳥が歌っている。辺り一面には白い小さな花がーー


 パタン。


 珍しい長時間の勉強で、夢でも見ているのだろう。明晰夢なら私も何度か見た経験がある。

 せっかくやる気を出して勉強していたというのに何だこの仕打ちは。白昼夢にしてはあまりにも笑えない。高校生が夢見るにはちょっとメルヘン過ぎやしないか、いやこれは私の深層心理で、実は未だお姫様になることを夢見ている痛々しい女子高校生だという事になるのではないのか。だとすればそれが明晰夢になるとかどんな羞恥プレイだ。いや自分で見ているのだからこれは盛大な自傷行為に他ならない。まさか私はマゾヒスト。


 無表情のままフリーズして体感約一分。心臓の鼓動が落ち着いてから、もう一度扉を開ける。


 やはり空は青いままである。


ーーーー「そ、っそらだあああああ! 外がああああああ!?」


 空が外が、と意味の分からない断片的な言葉を発しながら、動揺が感情のバロメーターを振り切った私が唯一の確認できる知的生命体である男子生徒ーーーー田中くんに縋りながら飛びかかってしまったのも無理はなかったし、


「え? どうしたっ……はああああああああ!?」


 私に力づくで扉まで引っ張ってこられた田中くんが、つい大声で叫んでしまうのも無理はない話なのである。

















 日が沈み始めている、そろそろ獣も出てくる時間帯だ。

 それに気づいた私は途中まで読んでいた本を放り出して、慌てて外に干してある洗濯物を取り込む。それを終えると、全ての窓に施錠をしてカーテンを閉める。一度、開いたままの窓から侵入してきた獣に襲撃されてからは息を殺すように夜を明かすことを覚えた。森の中に切り取られたように存在する図書室はそれだけで警戒の対象になる。なるべく目立たない様にしなければならない。


 室内が暗くなったので明かりを灯すとする。田中くんが持ち帰ってきた宝石のような結晶を、これまた田中くんが持ち帰ってきたランタンに投入すると、どんな宇宙の法則に則っているのか知らないが、石が光った。その不思議な光る石の光量は凄まじく、それなりに広い図書室全体を明るく照らした。だがこれも消耗品なので無闇に消費する訳にはいかないのだ。

 この世界に来て、初めて私は節約という概念を覚えたかもしれない。


 この世界に来て。そう、ここはどうやら日本でないだけでなく、どうやら地球でもないらしい。

 じゃあどこなのかと訊かれると返答に困る。『異世界』としか言いようがない、と田中くんと私は早々に決断を下した。この世界が何なのかという疑問よりも、途絶えたライフラインと不足した食糧により発生する『餓死』の危険性という問題の方が先立っただけだ。

 人間は社会的な生き物であるが、元来原始的な生き物でもある。私と田中くんが殺しあうような事態にならなくて本当に良かったと心から思う。


 あの後、パニックに陥りながら「どうして、なんで」などとヒステリックに喚き散らす私を、田中くんは六法全書を片手で振り上げながら「黙らなかったらこれで殴るからね!」などと卑怯にも脅しながらもその場を宥め、一瞬にして話し合う機会を作った。

 今思うと、外にいる熊などの猛獣を倒し持ち帰ってくる程の身体能力を保持している田中くんにあれで殴られていたとしたら、私はミンチになっていたのではなかろうか。彼はカバディでも修得しているのだろう。それからは事ある毎に田中くんは私に言うことをきかせる時に六法全書をどこからともなく取り出す。しかも角で殴るらしい、恐ろしいことだ。


 それからは比較的落ち着いていた田中くんが食糧調達に出かけた。持ち帰ってきた木の実を図書室にあった植物図鑑などで調べてみたが何一つ一致しなかった。仕方なく森に生息している動物たちが食べているものだけを残し、念のため問題が無いか確認する為に田中くんが毒見役を買って出てくれた。私? 隣で湯を沸かしてたけど。私には毒見をする度胸も狩りをする勇気も無かったのだ。

 なので、動物性タンパク質の欠如という事で森へ行った田中くんが猪らしき動物を引きずってきた日は大層驚いた。幸い、図書室と連結している準備室は司書の休憩所も兼ねていたようで、小ぶりなナイフ程度の物はあったのでそれ使って解体した。今更血を見てきゃあきゃあ騒ぐような段階ではなかった。

 その後電子レンジや電子ポットなどの現代的な機器は、用途を同じくする仕組みの分からない何かに置き換わっていった。一抹の寂しさを感じられずにはいられなかったが、粗大ごみは場所を取る。それからの私の心の拠り所は、ここにある山のような量の本と、田中くんだけになっていった。


 一日目には泣き喚き、二日目には食糧調達を始め、三日目には身の安全を確保し、四日目には周囲の探索を始めた。五日、六日と時間は過ぎて行き、一週間経過した頃には、私はもう家には帰れない事を覚って泣いた。その時に思ったのだ。田中くんが「一緒に帰ろう」と言わなくなったのはいつからだろうか、と。いつの間にか田中くんは、私を置き去りにして一人だけでこの世界に立ち始めていた。

 

 田中くんが遠出し始めたのもこの頃だろう。ある日探索に行ったきり帰ってこなかった田中くんは、次の日の朝、沢山の食糧と服などの生活用品を持って帰ってきた。近くの村の人間とのコンタクトに成功したのだという。だが、部屋の隅で膝を抱えて震えながら怯えている私を抱きしめて、夜には絶対に帰ってくると約束してくれた。我ながら身勝手だと思うが、こればかりは譲れない。このだだっ広い部屋には家族もペットもいないのだ。いるのは田中くんだけ。その夜は二人でぴったりと身を寄せ合って眠った。


 それからの田中くんは凄かった。今まで手に入らなかった木材石材を調達してきて、あっという間に図書室は匠により、家具付きの家にリフォームされたのだ。その時の私の感情は言葉では言い表せない、犬の如く田中くんに抱きついて喜びを表現した。


 斯くして私は現代人らしい生活を取り戻した。その質は今尚向上中である。家具などを一通り揃えた田中くんはそれだけでは飽き足らず私へのお土産に精を出し始めた。嗜好品から始まり、服、靴、ぬいぐるみ、装飾品、小物……夜会に着ていくようなドレスをプレゼントされた時は、そのデザインにこの世界の文明レベルが若干気になったが、ドレス自体は綺麗だったので良しとする。着る機会は無いけれど。


 田中くんの涙ぐましい努力により悠々自適な生活を送っている私だが、外の世界が気にならないこともない。人間の存在が確認されたのなら私もこの世界に溶け込む努力をするべきだと考えたのだ。思えばこの頃の私はまだ、田中くんからの自立を心に留めていた。人が居るなら仕事もある。田中くんが言葉の勉強をしていない所を見ると言葉も通じるのだろう。それなら私も自立できる筈だ、と。


 結果から言うとその計画は失敗した。田中くんにそれとなく「私も外に出てみたいなー」と仄めかしてみた所、田中くんは「絶対だめ、危ないから」とそれだけ言って口を噤んでしまった。それなら護衛をしてくれとか、田中くんは外に出てるのにとか、色々と反論はできたが、田中くんを見たらそれも飲み込まざるを得なかった。だって無表情で怖かったんだもの、いつもにこにこ笑顔な田中くんが。その夜の会話は田中くんの中では無かった事になったらしく、次の日からの田中くんの態度は変わらなかった。

 まあたった一人しかいない仲間を手放したくない気持ちは分からんでもない、と私は寛大な心を以って許した。

 協調性が大事なのだ。この家の主はどう足掻いても田中くんであり、逆らってはいけない。これからは彼の琴線に触れるような話題は一切持ち出さないと心に誓った日でもあった。


 なので、私のこの狭い世界は今のところ、田中くんと大量の本だけで完結している。居心地の良い世界だが、薄ら寒いものを感じずにはいられない。真綿で首を締めるように、というのだろうか、ゆっくりと堕落していく。このままじゃダメになる、と感じつつも心の奥底ではこのままでもいいと思っている。要は引きこもりニートになったけど養ってくれるっていってるからこのままでもいいや、田中くん怖いし。という状況である。


 かまどに点火してパンと昼の内に作っておいたシチューを温め直しながら、今日は何を持って帰ってきてくれるのだろうと期待する。すっかり日は落ちてしまったが、田中くんなら大丈夫だろう。最近は帯剣しだしてすっかり異世界に順応したらしいし、彼には六法全書もある。何かあれば容赦なく法の鉄槌を下すだろう。


 読みかけの本を放置していた事を思い出して、田中くんが帰ってくるまでそれでも読んでいようかと思い立った瞬間、扉がこん、と一回ノックされ、続けて二回ノックされる。田中くんだ。

 このノックは三日目に安全について思案しているときに考え出されたものだ。どうやら、ここら一帯には猛獣だけでなく盗賊も出現するらしく、自分意外は返事もしちゃだめだし玄関も開けるな、と念を押されている。でも強盗なら簡易な鍵なんて簡単に壊せるし意味無いんじゃないか、と私が一言発したので田中くんは今、異世界での防犯セキュリティを鋭意制作中である。


 扉を開けるとそこには花束を抱えた田中くんが。それはエディブルフラワーなるものなのだろうか? そうでないとしても食卓に彩りが足りないと思っていた所だ。質素な食卓に花を添えるのも悪くない。


「ただいま、佐藤さん」


 佐藤さんとは私の名前だ。私が彼を田中くんと呼ぶように、彼も私を佐藤さんと呼んでいる。名字で呼び合っているが、他人行儀な印象は一切無く、呼び方を変えるタイミングを逸してここまできた感じだ。


 田中くんはにっこり笑う。彼は笑顔意外は知らないんじゃなかろうかと思うくらい、いつでも笑っている。意地悪をすると困ったような顔をするが、それでも苦笑する。一時期はマゾヒストかと疑ったが、どうやらこれは彼の性格によるものらしい。温和な性格なのだ。それこそ左手に持っている、鈍く光る剣が全く似合わないくらいには。


「おかえり田中くん。今日のお土産はそれ? 見たこと無い花だなあ」


 花束は白い花をベースにして作られている、清楚なものだ。花瓶あったかな。棚を漁りにいく。


「でしょ。今日依頼人に貰ったんだ。食べれないけど綺麗だし、佐藤さんが喜ぶと思って」


 以前に一応どこから金が入っているのか知っていなければならないと彼を問い詰めたところ、依頼受けて稼いでいるという事を白状した。想像しようとしても、私の乏しい想像力では私立探偵くらいしか思い浮かばなくて「なんだかゲームみたいだね」と言ったところ「似たようなものだよ」と返された。現実がゲームとは我ながら馬鹿らしい例えだと思ったが、実際この現実が冗談みたいなものなので当たらずとも遠からずだ。


 棚の奥底から花瓶を探しだしテーブルに水を入れて置くと、田中くんが花をさした。うん、一気に食卓が明るくなった。息が詰まるこの家では生命の息吹が足りない。


「ちょうどご飯もできたよ。じゃーん、今日はシチューです」


 シチューをよそって田中くんの前に置くと、彼の目が輝いた。彼は毎日忙しいし、何より食べ盛りの男の子なのだ。おいしいものを満足するまで食べさせてあげないと、養って貰っているこちらとしては申し訳が立たない。


 お腹が減っている田中くんを待たせると可哀想なので、さっさと席に付いて二人でいただきますをする。以前は大して気にも留めずに行ってきた儀式的な行為だったが、実際に獲物を捌いていると真実味を帯びてきた。こうしておいしいご飯が食べれるのはご飯になってくれた全ての命と田中くんのお蔭なのだ。


「また腕上げたね、すごくおいしい」

「まだいっぱいあるから、沢山おかわりしんしゃい」

「佐藤さんそれどこかの方言?」

「知らない」


 そっか。うん。

 特に意味の無い会話の応酬もいつものことである。


 私は家にいてもあまり動くことは無いので頬杖をついて田中くんの食事を観察する。それと同時に今日は怪我をしていないかチェックする。どうせ本人に訊いても怪我は無いと言い張るのだ。怪我は重症化する前に発見しなければならない。……一先ず怪我はしていないようだが。


「田中くん、怪我してない?」

「してないよ。今日はずっと街の中だったから安全だったし」

「でも打撲とかの怪我は脱がないと見えないから」

「俺のこと脱がせたいの?まさか佐藤さんが痴女だったなんて」

「しね」

「ひどい。佐藤さんは心配性なんだよ」

「前例があるからね、そりゃあ心配性にもなるよね」

「俺は大丈夫だと思ったんだけどなあ」

「何を事も無げに。腕に包帯巻いて帰ってきたときにはどうなるかと」

「佐藤さんたら泣きそうな顔で『田中くんがしんじゃう』ってずっと言ってたよね。俺腹筋が死ぬかと思った」

「やめろおおお忘れろおおお」


 羞恥のあまり床にごろんごろんと転がると「ああもう、汚れるよ」と田中くんに助け起こしてもらった。優しい。

 因みに田中くんのその時の傷は今でも腕に大きな痕を残している。私としては苦い思い出だ。私が知らないだけで、きっと彼の体にはもっと沢山の傷痕があるのだろう。


「今日は佐藤さん何してたの?」


 私の一日を尋ねるのは田中くんの日課だ。代わり映えの無い一日を聞いて何が面白いのか一切理解できないが、私が脱走しようとしていないかの確認だとすれば納得できなくもない。全く、一日中言われたとおりに大人しくしている私としては心外である。


「いつも通り読書して、今日は洗濯もしたかな。朝には小鳥が遊びにきてくれたよ。気分はラプンツェルだね」

「王子様を待つ気分?」

「ううん、囚われのお姫様な気分」

「差し詰め俺は悪い魔女だ。がおー食べちゃうぞー!」

「そういうのじゃない。それにどちらかといえば田中くんが王子様」

「まじで? やった」

「調子に乗るな」

「ごめんなさい。 ……でもさ」

「うん」

「俺今まで生きてきて王子様なんて初めて言われたかも」

「間違っても王子様なんて顔してないもんね。なんていうか、普通?」

「うわ、それ言っちゃう」

「現実だもんね。仕方ないね」

「そうだね」


 「この歳で王子様かあ」と田中くんは感慨深そうに呟いた。王子様という単語に纏わる何かがあったのだろうか。


「俺ね、昔は王子様になりたかったんだ。お姫様を見初める王子様。戦隊とかのヒーローには全く憧れなかったのに、何でだろうね」


 それは倒す明確な敵が存在するかの違いではないのか。争い事を好まない性格は昔から健在らしい。


「田中くんはさ、魔女だけど私の王子様だよ」

「それってどういうこと? だって魔女はお姫様を幽閉しちゃうけど、王子様は助けにきてくれるでしょ。どっちなの?」

「田中くんはお姫様を閉じ込めちゃう悪い魔女です」

「うん」

「でも、いつでもお姫様を助けてくれる良い魔女でもあります」

「そうなんだ」

「で、お姫様を見初める王子様です。以上」

「王子様は希望的観測なの?」

「ううん。だって王子様はお姫様に一目惚れするんだよ。でもお姫様はガラスの靴だけを置いて、逃げちゃうんだよ。本気で逃げる気なんて無いくせに」

「突然話が変わったね。じゃあお姫様は酷い悪女だ。王子様の気持ちに気づいていながら振り回すんでしょ? 俺だったら怒っちゃうかも。逃げるなーって」


 あはは、と田中くんは笑う。私も食器を片付けながらそれに応じる。


「でもね、お姫様は高いたかーい塔にいるから、逃げられないんだよ」

「長い髪はあるくせに?」

「本気に逃げる気は無いって言ったじゃん。長い髪は残しておいても、使う機会なんて無いんだよ」

「じゃあ結局逃げなくて、振り出しに戻ってるじゃん」

「ばれたか」

「むしろ何でばれないと思ったかが不思議」

「だからさ」

「うん」

「王子様はお姫様の心配なんてしなくてもいいんだよ。王子様は魔女でもあるから、お姫様は勝手に居なくなっちゃわないし、お姫様には逃げる気は無いから。それにお姫様は塔の外を知らないんだよ。どうしようも無いじゃん」

「でも長い髪はあるよ」

「しつこい田中くん」

「ごめん」


 そうだな、と私は考える。どうやら田中くんはまだ納得してくれないらしい。


「じゃあ何で王子様はお姫様の長い髪を切らないの? 王子様は剣を持ってるんだよ」


 赤いなにかに塗れた、鈍く光る剣を左手に携えて。王子様はなぜお姫様の髪を切らないのか。なぜ、足の腱を切断しないのか。


「さあ……髪を見ていたいからじゃないかな。お姫様がお姫様である所以。それが無くなったらお姫様はお姫様じゃなくなる」

「じゃあ何になるの?」

「さあ? 俺は王子様でも、ましてやお姫様でもないから、分からないな」


 何とも白々しいことを嘯いてくれる。


「でもお姫様はね、魔女も王子様もだいすきだから、逃げないんだよ」

「ぜったい?」

「うん」


 自信満々に頷いた私を見て、田中くんは満足そうな表情をする。


 お姫様は逃げない。逃げられるけど、お姫様の世界はそれだけで完結しているから。優しい魔女と王子様。魔女は相変わらずお姫様を塔から出そうとしないし、王子様は助け出してはくれないけれど。だいすきな人に囲まれたお姫様はきっと、幸せだ。


 そうして、お姫様と王子様の夜は更けていく。














佐藤さん


 外には危険がいっぱいらしいので図書室から脱出できない。異世界だという事は知っていながら外の事をあまり知らないので、危機感が薄く若干まだ夢見心地。家事がかなり上達した。飼い馴らされてきた現実を直視したくない今日この頃。




田中くん


 本人はいたって大人しく内向的な性格だったが、剣と魔法のファンタジーで命の危機に晒される内に色々と覚醒した。異世界トリップの特典なのか知らんが異世界の基準に沿って身体能力が向上している。

 生きるために変わらざるを得なかった自分とは違い、佐藤さんにはそのままでいて欲しいと思い、それからは危険を理由に図書室からの外出を禁じている。佐藤さんが夢見心地なままの元凶。佐藤さんが相当強く言わないと図書室から出さない。

 最近は街でも名の知れた冒険者となり、昼は多忙の日々を送っているが夜になると必ずどこかへ帰って行くらしい。毎日土産を片手に家路につく彼を尾行して無事だった者はいない。彼も自身については多くを語らず謎の多い人物で、噂では自宅に異国の美姫を囲っているだとか妖艶な娼婦に貢いでいるだとか。真実を知る者は本人しかいない。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 生暖かい。。 [気になる点] えっ(゜д゜)! 無いよ、ナイナイ。 [一言] ドキ が、 ムネムネ・・ もう昔のはなしになりますが。 はぁ(´・ω・)♥ とっても ステキ でため息がで…
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