第6話 おいしいご飯とモノリス
目の前には、色とりどりの……ご馳走がどーんと並べられていた。
「で?」
思わず、かなりの量のご馳走にアールはカリスとアリサに尋ねた。
「お客様がいらっしゃるので、腕を振るいました」
「ほ、ほらー、私の家で食べるご馳走がどんなのか知りたいっていうから、いろいろ作ってみせてあげたのよ……うん」
そこまでアリサは言って。
「……ごめんなさい、作りすぎました」
観念したかのように頭を下げた。
「はあ……仕方ありませんね。そういうことなら……3人で頑張って食べ切りましょうか。置いておくわけにもいきませんからね」
そう苦笑を浮かべるアールに、アリサとカリスは顔を見合わせ、笑みを浮かべたのだった。
「……うえええ!?」
食べてる途中のアリサが思わず声をあげた。
「どうかしたんですか?」
ミラーシェードを外したアールが首を傾げる。
「だって、妙に若いし、それに……」
「オッドアイが珍しい?」
「う、うん……」
そんな物言いにアールは気にしない素振りを見せながら。
「慣れてますから平気ですよ。だからこそ、これで顔を隠しているんです」
ミラーシェードをふりふりと振りながら、そう告げる。
「てっきり、中年のしっぶーいオジサマかと思った。そんな貫禄みたいなのがあったから」
「それって……喜んでいいのかな?」
「いいんじゃない?」
そんなやりとりをカリスは楽しそうに見つめている。
「……マスター、そろそろ到着する頃です」
「了解。じゃあ、到着の準備をしようか」
席を立ち、ミラーシェードを付けるアールに、二人も続いて立ち上がったのだった。
惑星ガリスト。
その大部分が荒野で覆われ、居住区の規模は小さい。
「確かこのあたりだけど……」
アールの船が着陸した場所は。
「……ねえ、これなに?」
アリサが思わず声を出す。
「モノリス……でしょうか?」
草木のない荒野にぽつんと建っているのは、黒光りするモノリスだった。
「!! わかったっ!!」
突然、アリサが声を張り上げる。
「きっとこれを動かすのよっ!! ぐぐっーって。そうしたら、洞窟の入り口が出てくるんだわ!」
「……試してみます?」
アールの言葉にアリサは首を振る。
「あんた一人じゃ動かせないでしょ? こんなおっきなモノリス」
そう、目の前にあるモノリスは、小さなビルくらいの大きさ。人が一人で動かせる代物ではない。
「大丈夫ですよ。カリス、例のものを」
「了解しました。すぐにお持ちします」
カリスが大きなキャリアで運んできたのは。
「これって、モーターギア!? 初めて見た!」
銀色に輝く、戦乙女を思わせる美しい、巨大なロボット。
女性っぽいフォルムを持つ、ギアだ。
「でも、本で見た奴は、もうちょっとゴツい感じだったと思ったんだけど」
「あれはちょっと動かし辛かったので、自分でチューンしたんですよ。お蔭で装甲が犠牲になっちゃいましたがね」
ぽんぽんと跳ね上がるようにモーターギアのハッチに乗り込むアール。
「これくらいのモノリスなら、動かせると思いますよ」
そういって、ハッチを閉める。
試しにとモノリスを動かすが……。
「ちょっと動かせないようですね」
様子を見ていたカリスが告げる。
「ルヴィでも動かせないとは驚きました」
銀色のモーターギアから降りてきたアールも驚いているようだ。
「そうみたい。良いアイディアだと思ったんだけど……」
「マスター、アリサ。こちらに来てください」
モノリスを調べていたカリスが声を上げた。
「何か文字が書かれている、か……」
「何が書いてあるのか、さっぱりだわ」
アリサが最初に根をあげる。
「マスター、こちらに数字らしきものが刻まれているようです」
カリスが指し示す先。モノリスの下部にある銀色のプレートに数字が並んでいた。
【GB58 23 66 09】
「……この惑星とは別の座標か。カリス、座標だけでなく、このモノリスの文字盤も記録しておいて」
「了解しました」
準備を終えた三人は、また宇宙船に乗り込み、さらなる惑星へと向かったのだった。