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第4話 病院で親方と先輩と

 アールに案内されて、たどり着いた場所は、街一番の総合病院だった。

 ――そういえば、緊急の時はここに運ばれるんだったっけ。――

 たどり着いて、アリサはそのことに気づいた。

 普段は小さな診療所で事足りるので、大きな病院には滅多に行かない。

 だからこそ、記憶の片隅に追いやられてしまったのかもしれない。

 もし、それを思い出せれたのなら、真っ先にこちらに向かったのにと思ったけれども、さっきまで命を狙われていたんだからと思い直す。

「どうかしましたか?」

「あ、なんでもないです」

 病院の中に入り、内部の地図を確認する。

 ナースステーションの文字を見つけて、アリサはそちらに向かった。

 アールもゆっくりとアリサの後をついていく。

「すみません、ロット先輩……いえ、ロット・ブロイアンがここに運ばれたと聞いたのですが……」

 たどり着いたナースステーションで、アリサが看護婦に尋ねる。

「ああ、あの方ですね。もしかして、あなた、アリサさん?」

 看護婦に、逆に尋ねられて。

「あ、はい。そうですけど……」

「502号室ですよ。親方さんもアリサさんが来たら、すぐ来るようにと言っていましたよ」

「もう親方も来てたんですか?」

 驚くアリサにアールは落ち着いた様子で、後ろから教える。

「僕の知り合いが伝えたんですよ」

「あ、そう」

 もしかして、部屋番号も知ってたんじゃと思ったが、アリサはそれ以上言う気にはならなかった。不機嫌なまま、看護婦から言われた部屋へ向かうのみ。

 コンコンとノックしたのち、該当する部屋の扉を開ける。

「親方、ロット先輩は……って、ロット先輩?」

「よっ! アリサは無事か?」

 片腕と片足が折れているらしく、両方にギブスをつけていたが。

「なんで、そんなに元気なんですかっ!!」

 思わずアリサは突っ込みを入れた。

 ロットはにこやかな笑顔で、アリサに手を上げて挨拶を返している。

 明らかに爆撃を受けた患者には……見えないかもしれない。

 もっとも、怪我がそれほど重いものでもないのかもしれないが。

「まあ、車が壊れたけど、俺、意外と頑丈ってカンジ?」

「……もう……すっごく心配、したんですからぁ……」

 安心したのと、態度が気に入らないのとで、ベッドに近づき、アリサは涙ぐんでいる。

「こいつの頑丈さは今から始まったもんじゃないだろ」

 ロットの傍にあった椅子に、座っていた親方もそう言う。

「だってだって、ぼんですよ。ぼんっ! 突然爆発したら、親方だってびっくりしますよぅ……」

 それを見ていたアールが、ぽんぽんと宥めるかのようにアリサの背中を叩いてやっていた。

「それよりも、お前は大丈夫だったんだな」

「もう少しで捕まるところでしたが」

 親方の言葉にアールは、ふっと笑みを浮かべる。が、すぐさま、隣にいたアリサが力強くアールの足を踏んだ。

「うっ……」

「私は大丈夫。一人でも平気よ」

 気丈に振舞うアリサに親方は。

「で、荷物は無事、届けられたのか?」

 そう尋ねると。

「一応、渡せたんですけど」

 アリサはアールを見て、アイコンタクトで親方に話していいのか確認する。

 親方は黙って頷き許可を出すと、アリサはちょっと嫌そうにしながらも、当時の様子を語り始めた。

 届けに来たけども、その荷物が実は自分あてだったこと。

 遺産を受け取れと言われたこと。

 中身が謎の筒と首飾りが入っていたこと。

 そしてもう一つ。

「この荷物を……」

「狙っていた者がいたということですね」

 アリサの言葉をつづけるかのようにアールが告げた。

「そのようだな。で、お前はどうしたい?」

「どうしたいって、私は……」

 言われてもすぐに答えは出ない。

 正直言えば、アリサは今までの騒動で混乱しているところだ。

「じゃあ、こいつと一緒に遺産とやらを受け取りに行って来い。受け取るまで帰ってくんなよ」

「ふええええ!!? なんなんですか、それっ!!」

 親方はあっという間に決断した。

「それに、こんな得体のしれない相手と……」

「スリーエスランクの超エリート傭兵兼、運び屋のアールさんだ。これで得体のしれない相手ではなくなっただろ?」

「いや、そうじゃなくって、その……」

 親方はにっと笑い、ぽんとアリサの肩を叩いた。

「いいだろ、たまにはこういうのも。青春の一つと思って行って来い。かなり腕の立つ奴だからな」

「お褒めいただき光栄です」

 アールは嬉しそうにそう告げて。

「はあ、もう。わかったよ、親方。降参! じゃあさ、親方……あ、別にあんたでもいいや。これ分かるんなら行ってあげてもいい……」

 アリサが取り出したのは、あのときロボットが取り出した、あの謎の暗号が記されたカード。

 それを覗き込んでいたアールが一言。

「それは座標コードですね。確か、その場所に惑星があったはずです」

「……マジ?」

「ええ、間違いありません」

「だそうだ」

 まさかこんな早くに解明されるとは、アリサは思っていなかったのだ。

 アールと親方に言われて、アリサはもう、心の中で大泣きしていた。

 そんな素振りはちらりとも見せていなかったが。

「じゃ、そういうことで、アリサのこと頼んだぜ、アールさんよ」

「ええ、分かっています。お任せください」

「ううう……」

 暫くアリサは唸っていたが。

「もう、こうなったらヤケよっ!! その遺産とやらをバッチリもらって、億万長者になってやるわっ!!」

「お、その意気だ! 頑張れよ、アリサ」

 親方に応援されて、アリサはむんと腕を振り上げて、やる気を見せるのであった。


「……」

 アールはアリサを見て、何かを呟こうとしていたが。

「ほら、行くんでしょ? アールさん?」

「あ、はい」

 アリサに引かれて、病院を後にし、アールの持つ宇宙船のあるポートへと移動し始めたのだった。




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