カウンセラーのジレンマ
僕の仕事はカウンセラー。
一応、臨床心理士というのが正式な名称だけどね。
僕の業務内容は悩んでる人の相談を受けて、その相手の自発的な解決を促すこと。
僕は学生時代にカウンセラーに悩みを聞いてもらって、心が楽になった経験があって、そのことがきっかけで僕も同じようなことをしてあげたいと思ってカウンセラーを志すようになったんだ。
この仕事はすごく充実感がある。決して給料の高い仕事ではないのだけれど、誰かに必要とされている仕事であり、悩んでる誰かの悩みを一緒に解決していくのはすごく生き甲斐を感じる。
だけど、僕はいつしかこの仕事が嫌いになっていった。カウンセラーとしての職業病にかかってしまったんだ。
カウンセラーは相談者の悩みが解決したら、基本的に関係が途切れる。相手の相談することがなくなるからだ。
__そう、僕は「またね」といえない存在なんだ__
悩みを聞き、解決の手助けをして、解決した人たちを見ることはすごく嬉しい。それなのに、その解決することで関係が途絶えてしまうのが、僕は嫌だった。
カウンセラーを悩みを解決するための道具にしか思えなくなったのだ……相談者にいいように利用されているだけで解決したら、その人とはそれっきりで、今度は次の相談者の解決への手助けをする。
__こんなこと、機械にやらせればいい__
そう思ったけど、それは出来ないのだ。悩みを解決するには、人の心が必要だから。機械には出来ない人間の仕事だから。
だから、今日も僕はカウンセリング室で誰かを待つ。一期一会の相談でも、相手の心を温めることが出来ると信じて……。