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志賀早月〈5〉―異変:Row and Fight―

「……でよ、何だって今日はフィーネなんかと登校してたんだ?」

 その質問にどう答えるべきかと早月は思案する。火吹はフィーネとは旧知の仲らしいのだが、かといってフィーネが所謂『魔法使い』であることを知っているとは限らない。

 早月はとりあえず、はぐらかすことに決めた。

「別に、登校中にたまたま会っただけだよ」

 そんな早月に火吹は胡乱な視線を向ける。

「たまたまだぁ? お前わかってるか? お前が一緒に登校してたのはただの外人の女じゃねぇ、いい年こいて傍迷惑な天然トラブルメーカーだぞ?

このままだと、お前にどんな面倒事が起こるかわかったもんじゃねえぞ?」

 その言葉に、京は焦った声で火吹をたしなめる。

「ちょっと、火吹くん」

「何だよ、京、事実……だ、ろ……」

 京の方向き、火吹は凍りつく。

「ふふふ、そう、私は傍迷惑な天然トラブルメーカーですの……」

 京を後ろから抱きしめるようにしてフィーネが微笑みを浮かべていた。

 それと比例するように火吹の顔をひきつっていた。

 そして、フィーネが火を噴いた。

「それは一体どういう意味ですのよ!!」

 フィーネは一挙動で京から離れ、その綺麗な脚で火吹の頭の辺りを薙払う。

「ぬぁっ、おま、やっぱ馬鹿だろ!」

 火吹は火吹でその蹴りを容易く避ける。

「やっぱとはなんですのっ!」

 鋭い貫手。火吹はそれをはたき落とす。

「言葉通りだ馬鹿! つか、短気過ぎだぞっ、テメェ幾つだよ!!」

「ちょっと二人とも……」

 京は半泣きで狼狽えていた。

 そんな光景を見ながら早月はフィーネと火吹に対する評価を改めていた。

(フィーネさんって、見た目と中身が釣り合ってないな。銀のウェーブのかかった髪よりも、黒髪でポニーテールの方がしっくりくるかも。姫野さんは、結構良い奴だな。

それにしても、)

 早月は京を見る。いや、その目は京ではなく、むしろその後ろを見ていた。そこには背が高く、浅黒い肌の女性がニヤニヤしながらフィーネと火吹の喧嘩を眺めている。

 早月は首を傾げた。

 今まで、京を見た時、あんなものが見えていただろうか?

(いや、何かが憑いてるように見えてはいたよな)

 それにしても、ここまではっきりと見えるのは初めてだった。

 そして気付く。

 フィーネも、火吹も、京も、女も、そして、自分にも。体内に渦巻く『何か』がある。液体のような、気体のような。

 すると、女が早月の方を振り向いた。

 その表情は値踏みをするようで、かと言って早月はその表情をいつもと変わらない表情で見る。

 女はそんな早月が面白くないのかつまらなそうにすると何かを呟いた。何を呟いたんだろうと見ていると、女は目を見開いて早月を見ていた。

 早月はまぁ、いいかと女から意識を外して、喧嘩するフィーネと火吹、それにオロオロしている京を眺めながら昼食を再開した。


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