『序』
「魔王が暇つぶしに太陽系を開発したらどうなるか?」というSF内政・俺TUEEEものです。
本日から毎日20:10に更新していきます。
楽しんでいただければ幸いです!
第一章:覚醒と影
「遅すぎる……」
意識が浮上すると同時に、その言葉が唇から漏れた。
男の名は、神楽坂 湊。
彼が重厚なカーテンの隙間から差し込む朝日で目を開けると、そこは広大で無機質な寝室だった。彼がベッドから身を起こすと同時に、部屋の四隅、家具の影、そして彼自身の足元から、「それ」が滲み出した。
不定形の闇。人の形をしてはいるが、目も鼻も口もない。ただ、主への絶対的な忠誠心だけが凝縮された、漆黒の従者たち。
これらは《影》。湊の意志一つで実体化し、あらゆる物理的障害を排除する異能の存在であり、彼の最強の軍隊だ。
一人の《影》が、恭しく湊に衣服を差し出す。
もう一人の《影》は、最新のタブレット端末を捧げ持っていた。画面には、国会で延々と繰り返される空疎な議論と、決定されないまま山積みになった法案のリストが映し出されている。
「議論のための議論。責任逃れのための会議。……この国は、止まっているに等しい」
湊が袖を通すと、無数の《影》たちが一斉に膝をつき、床へと平伏した。部屋の空気が凍りつくような威圧感。
湊は冷ややかな瞳で虚空を見据える。
「行くぞ。時計の針を、私が強制的に進める」
(暗転 —— フェードアウト)
第二章:永田町の崩落
(フェードイン)
激しい雨が、東京の夜を叩きつけていた。
雷鳴が轟く中、異様な光景が広がっていた。
首相官邸、完全包囲。
ただし、それは通常のクーデター部隊ではなかった。
官邸を取り囲んでいるのは、武装した兵士たちだけではない。建物の壁、門、アスファルトの地面から湧き上がった無数の《影》たちが、黒い蔦のように官邸全体を覆い尽くそうとしていたのだ。
警備に当たっていた機動隊員たちは、抵抗する隙すら与えられず、影の中に沈むように無力化されていた。銃声は一つもしない。あるのは、雨音と、巨大な時代の歯車が軋む音だけだった。
官邸内、総理執務室。
蒼白な顔をした現職総理大臣が、受話器を握りしめたまま震えていた。外部との通信はすべて遮断されている。
「な、何なんだ……これは……!」
ドアが音もなく開く。
そこに立っていたのは、神楽坂湊だった。彼の背後には、天井まで届くほどの巨大な《影》が侍っている。
「総理。あなたの優柔不断な政治は、今この瞬間をもって終了しました」
「き、貴様……民主主義を破壊する気か! 国民が黙っていないぞ!」
湊は薄く笑った。その笑みには、狂気よりも深い、氷のような理性が宿っていた。
「民主主義? あの遅々として進まないシステムのことですか? 世界が秒単位で進化している時に、何ヶ月もかけて妥協案を探るあの仕組みが、この国を殺していることに気づかないのか」
湊が指を鳴らす。
《影》が総理の手から受話器を取り上げ、粉々に砕いた。
「これより、私が『皇帝』として全権を掌握する。異論は認めない。排除するだけだ」
第三章:独裁帝国の夜明け
翌朝、全国のモニター、スマートフォン、街頭ビジョンがジャックされた。
画面に映し出されたのは、玉座のごとき椅子に座る神楽坂湊の姿だった。
背景には、旧来の国旗ではなく、漆黒と深紅で彩られた新しい帝国の紋章が掲げられている。
『国民よ、聞け』
湊の声は、静かだが、すべての国民の鼓膜に直接響くような強制力を持っていた。
> 『我々はあまりにも多くの時間を失ってきた。
> 誰も傷つかない正解を探している間に、世界は我々を置き去りにした。
> 多数決という名の「責任の分散」は、今日で終わりだ』
>
彼は手元の端末を操作し、一瞬にして数千件の法改正と、国家プロジェクトの始動を承認した。これまで数年かかると言われていた決定が、わずか数秒で成される。
『私の決定は即ち法律であり、私の意思が国家の意思だ。
これより日本は、独裁帝国として新生する。
速さこそが正義。結果こそが真実だ』
画面の向こうで、人々は息を呑んだ。
恐怖か、あるいは停滞した現状が打ち破られることへの期待か。
窓の外では、湊の意を受けた《影》たちが、旧体制の象徴である建造物を次々と解体し、新しい摩天楼の建設を始めていた。
あまりにも早く、あまりにも強引な、独裁者・神楽坂湊の時代が始まったのである。
第1話を読んでいただき、ありがとうございました!
ここから、湊(主人公)による圧倒的な速度での「地球改造」と「世界征服」が始まります。
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次回は明日20:10更新予定です。
『永田町の崩落』をお送りします。お楽しみに!




