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4,揺らぎと沈黙

ある土曜日、莉子は久々に何も投稿せず、一日を終えた。


 朝ごはんに焼いたトーストも、昼の散歩中に見た初夏の紫陽花も、夕飯の冷しゃぶも、カメラを向けることはなかった。スマホを手に取ることすら、なぜか億劫だった。


 「別に、今日みたいな日は投稿しなくても……」


 そうつぶやいて、ベッドに寝転がった。


 けれど、心の奥に空洞のような違和感が残った。何かを忘れたような、誰かを置き去りにしたような。


 翌日、手帳を開いても、言葉が浮かんでこなかった。心の声が掴めない感覚。


「……私、どこにいるんだろう?」


 不意にそう思ってしまった。


 記録しない日がある。それは自由であると同時に、自分がどこかへ流されていくような恐れも孕んでいた。


 その夜、莉子は何も書かれていない手帳のページを見つめながら、ぽつりとペンを走らせた。


 《今日はなにも記録できなかった。でも、たぶん、そんな日も大事なんだと思う。》


 沈黙の一日を、自分の人生の一部として受け入れる。それもまた、「記録」だった。


 少し泣いた。


 でも、少し肩の力も抜けた。

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