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未定  作者: 大倉
はぐれ者の旅路
7/18

街歩き

暗い道を抜けた。――強い光に目が眩む。…徐々に光に目が慣れてきたのか、風景が見えてくる。


…石畳の道を、人々が行き交っている。少し先には、病院?のような建物があり、人が出たり入ったり、忙しないような、でも、どこか落ち着いた空気だ。…暖かいからかな


「…いい雰囲気だな。」

「……嬢ちゃん、少しこの街、見て回るか?」

「いいのか?」

「ああ、当分俺はやる事があるからな。ちと時間でも潰しといてくれ。」


「ブエルとウァサゴも来るか?」

「俺はいい。別で用事がある。」

「私も、ちょっと用事が。」

「わかった。」


「それじゃ、また昼頃にここで集合!」




さて…まずはこの街の端に行ってみるか。

星海を越えて(アストラルブリンク)】で行ってもいいが…行きぐらい、風景を楽しもうか。




石畳からあぜ道に変わり、徐々に建物が少なくなってきた。周囲にはビニールハウスや、畑が広がっている。農家の人達が楽し気に談笑する声が聞こえる。…意外と平和なんだな。




畑が少なくなってきた。代わりに木が増え、道の横では川が流れ…なんだか……落ち着く。


……とても、長閑だ。外には天使が居るというのに、一つ間違えば死ぬかもしれないというのに……他の人達もこうなのだろうか。


「ねえねえ!」


急に、川の方から声がした。


「何か用か?」

「今時間ある?」

「…まあ、あるが…」

「だったら、ちょっと手伝ってくれない?」


…まあいいか。靴を脱いで、川に足をつける。…つめたい


「で?何を手伝えばいいんだ?」

「そこの岩陰、たぶんザリガニがいるの。」


確かに、川の真ん中辺りに大きな岩があるな。……ザリガニ?


「私が向こうから回り込むから、あなたはこっち抑えて。」

「…そんなに手の込んだ事をする必要があるのか?」

「うん!いいから手伝って!」




…お互い、配置についた。


「3!2!1!行くよ!」


彼女が岩に突撃する。……すると、勢いよくザリガニが……すごく大きなザリガニが、飛び出してきた。

岩より一回り小さいぐらい…うわこっち来た!


「けん制してけん制!逃げられると面倒だから!」

「――了解!【結界光(グレクト)】!!」


結界を張って道を塞ぐ。ちょっと調整して展開速度を上げてみたが……悪くないな。テストできてよかった。……と思っていたら割られた。どうやらかなり強度が下がっているらしい。ザリガニ程度に割られるか…


「ナイス時間稼ぎ!」


その隙に彼女が後ろから捕まえて……うわ、バックドロップ……ザリガニが泡吹いてる…


「ふぃー…お手伝いありがとね!ところで君、魔術師だったんだ」

「ああ。あまり多くは使えないが」

「あーそういえば、名前言ってなかったね。私は愛宕 唯って言うの!あなたの名前は?」

「…渚だ」

「渚ちゃん!協力ありがとね!それじゃ私はこの辺で!またねー!」


そう言って彼女…唯さんは、巨大ザリガニを担いでどこかへ行ってしまった。…外には生き物がいなかったが、案外いるんだな。あそこまで大きいとは思わなかったが。


しかし、何故あそこまで大きくなったんだ?魔力が絡んでいたりするんだろうか。




…色々あったが、ついに結界の端まで来た。結界の向こうまで風景は続いているが、手を伸ばしても結界に阻まれるばかり。…結界の根元に何かある……なんだこの機械?…これが結界を発生させている…のだろうか?少し沿って歩いてみるか。




「―――?――!―――!?」

「――!!―――!――――?」


……誰かと誰かが話す声がする。内容までは聞き取れないが…言い争っているのか?もう少し近づけば……


「―――!!!―――!」


気づかれたか?…走り去っていった……何だったんだ?…一応、話し声のした方に行ってみるか。




話し声のした所に来てみたが…誰かが居た痕跡しか無いな。何をしようとしていたのかもよく分からん。

…結界の根本にあった機械が、破損している?何かに叩かれたような跡だな…魔術的な物ではない…おそらく金槌やノミの様な工具…徐々に修復されているから一先ず問題はなさそうだが……大事なのは、誰かが壊そうとした…?何が目的だ?


気づけば集合の時間になっていた。戻るか。


「【星海を越えて(アストラルブリンク)】」


少しだけ……煌めく星々が陰っていたような…気がした。




「戻った。」

「お、嬢ちゃんが一番乗りか。」

「ブエルとウァサゴは?」

「二人なら…お、来たか。」


上から二人が下りてきた。なんで上から?


「ブエル、お前もう少し体力つけろ。」

「う…うるさ…い…」


ウァサゴは別れた時と特に変わっていないが…ブエルは、息も絶え絶えというか、疲れ果てているのか?


「二人とも、競争でもしてきたのか?」

「まあな。こいつの体力でも試してやろうと思って、軽く走ってきた。だが、ここまで貧弱だとはおもわなんだ」


…悪い笑みだ。


「走る゛…っだって……屋根の上は…ないって…手加…減も無…しに……」

「大丈夫か、ブエル?」

「ま、まあ…だいじょぶ…ちょっ…とだけ……まって……」


「ぜ、【回復の祈祷(ゼータフレイア)】……ふぅ…」


…目に見えて体力が回復した。


「回復系の魔術か?」

「そ。まあ、私はそこまで得意じゃないけど。」


得意じゃないのにそこまで回復するのか。


「亮に話はつけたぞ。今なら空いてるそうだ。」

「おっけー。じゃあ、行きましょ。」

「どこにだ?」

「病院。前にも話したけど、渚ちゃんの体、たぶんかなり妙な事になってるの。」

「少なくとも碌に飲まず食わずなのはちと異常だろ?てなわけで検査だ。」

「…なんか、変なことされないだろうな。」

「大丈夫!そこの人、私の知り合いだから。信頼もしてるし。」

「…具体的にどういう事をされるのかとか…」

「探知系魔術で渚ちゃんの身体見るだけよ。レントゲンとかMRIみたいな?」


なるほど?…だったらレントゲンとかMRIでいいんじゃ?


「そうもいかん。魔力はレントゲンじゃ探知できないからな。どう考えてもお前には魔力が介入してるだろ?」

「思考を読むな。…まあ、わかった。…行こう。」


…胡散臭かったら逃げるか。

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