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未定  作者: 大倉
はぐれ者の旅路
6/18

試行錯誤、長い旅路

「渚ちゃんお疲れ様!ウァサゴ、もう少し手加減しなよ。」

「だいぶ手加減したぞ」

「嬢ちゃんもウァサゴ相手によく粘った!最後の閃光、俺だったら食らってたぞ!」

「…お前だったら目つぶしされても関係ないだろ」

「まあな!」


………いい手だと思ったんだがな。





夜も更けてきた。考え事をするにはちょうどいい。

…敗因は、経験不足、手数不足…か?多分だがウァサゴは相当戦闘経験がある。対して私は…今の私は経験がない。が、手数に関しては…どうにかできるかもしれない。なら、どうにもならない事より、どうにかできる事をやろう。


馬車を抜け出す。ここら一帯は草原が広がっているだけで、特に障害物はない…だだっ広い平野だ。

今日は…半月か。少し暗いな。


「【灯光(グレアト)】」


掌に少しだけ光を灯す。…これ、私の周りで浮かせられるのか?……うん、できるな。

…手数。高速で避けられるなら、避けられないような飽和攻撃で叩く…とかか?だが、私の魔術や第六感じゃそこまでの攻撃………

…できるか?


「【構築光(メイレム)】」

光る粘土ができた。つつくと、粘土の様な手触りだ。これの強度を上げてみる。

…干からびた粘土のような手触りだ。ちょっと違うな。

少し調整して……岩のような手触りだ。いいぞ。次は形状を…


「【構築光(メイレム)】」

光る石ころができた。つつくと、岩のような手触りだ。よしよし。次はもう少し武器っぽく…

光る細長い岩ができた。振ってみると…折れた……岩から離れるか。鉄っぽく…

光る棒ができた。振ってみると…悪くない。もう一つ作って、ぶつけてみる……悪くないな。形状を整えて…


「【構築光(メイレム)】」

光る刀ができた。ぶつけてみると…よし、どちらも折れてない。さて、切れ味は…




…相手にすらならなかった、まったく切れ味が無い。…まさか草刈りすらできないとは……

もう少し、もう少しせめて殺傷力を…











…気づけば、東の空が明るくなりだした。一晩かけた結論として、【構築光(メイレム)】で作った武器に鋭さは無い、という事が分かった。だが、鞘から抜刀する必要が無いのはかなり大きい…と、思う。強度自体は中々悪くないし、使い捨てができるのはかなりいい。







「さて、問題の【セトラ】だ。」


朝餉の時間になり、私の【セトラ】についての話になった。


「多分、過去に例のない奴よね?」

「そもそも【セトラ】で過去に例のある奴なんかほぼ無いぞ」

「うーん……渚ちゃん、事典に効果とか書いてなかった?」

「それが…」


====================


名も無き彗星(セトラ・メレス)




====================


「何も書かれてないんだ」

「あらま…どうしようか。」

「ブエルなら何とかできないか?」

「その事典は人によって見え方が違う。お前以外の奴がその事典を見てもお前の【セトラ】は読めん。」


「うーん……悩んでてもしょうがない!ぶっつけ本番で行くよ!」

「…まあ、結局そうなるよな。」

「了解」




「【結界光(グレクト)】!」


私を覆うように結界が広がっていく。そして結界の中に居るのは私だけ。


「渚ちゃん!事故ったら多分死ぬから!がんばって!」

「まずそうなら止めるが、まず間に合わん。頑張れよ」

「がんばれよー嬢ちゃん」


他人事だからってそこまで気軽に……まあ、いいか。


「じゃ、始めるぞ。」


…事前に聞いた通りなら、発動方法は魔術と同じらしいし、事故が起こることもそうそう無い…らしい。

文字化けしてる事例はブエルでも聞いたことがないそうだ。……本当に大丈夫なんだろうな?

…腹、括るか。


「………【名も無き彗星(セトラ・メレス)】!」


……………?


「何も…起きてない?」

「嬢ちゃん!何か変化は?」

「…特に無い、と思う。」

「訳が分からん。」


その後、二三度試したが、結果は変わらなかった。

…魔術を使うために捻出した魔力が、一切消耗されずに手元に残った。つまり、そもそも魔術が発動していない…のか?




「なーんで不発なのよ」

「さあな。」

「まあ…使えないなら、それはそれで構わないさ。」


「さて、先を急ぐぞ。明日にはファディカまで行きたい。」

「りょーかい。ちょっと加速させとく。」









―――次の日




あの辺り…焦点が合わない?というか、興味を削がれるような感覚が…


「あの辺り、何かあるのか?」

「うん。認識阻害結界ってのが張られてるの。ま、実際は【結界光(グレクト)】と【闇夜の導き(ナイトガイス)】を合わせただけだけどね。」


私の知らない魔術だ。認識阻害の効果はここから来ているのだろうか。


「結界が張られているのに入れるのか?」

「ここからじゃちと見えづらいが、少し行くと関所があってな。そこを通る。」


なるほど?


「そこに天使が来たりはしないのか?」

「関所から都市に入る為の通路はかなり狭いからな。天使が大量に来てもそこなら捌ける。」

「ま、都市に入られてもアウトサイダーの中隊長大隊長いるし、都市が陥落する事は早々ないかな。」




少し進んだところにかなり広い窪地があった。ブエル曰く、これが関所らしい。


「結界は…張られてねえな。よし、進んでくれ。」


馬車が窪地に入る……


「…なんか徐々に沈んでないか?」

「あー言うの忘れてた。ここ、昇降機になっててね。この地面見せかけだけなの。」

「で、今下の昇降機が下がってるから俺達も下がってるって訳だ。」


鋼鉄の壁と共に、点滅する赤い光が上へ昇っていく。魔術的な力というより、機械の力か。


「ブエル、馬車仕舞えるか?」

「りょーかい。皆おりてー」


馬車から降りたら、ブエルが収納に馬車を入れた。こんな大きい物も仕舞えるのか。


「…なあブエル、【星座に手を伸ばす(アストルレージ)】の仕舞える大きさの限界はどの程度だ?」

「うーん…その時使った魔力によるかな。沢山魔力使えばその分大きな物しまえるし。あ、生命体は無理だよ。」

「天使はしまえるのか?」

「……確か…無理だったかな?」


あれも生命体判定なのか




昇降機が止まった。地下だからか少し暗い。

換気扇が効いているのか、それとも地下だからなのか、少し肌寒い。


「クレインの皆様ですね」


急に目の前に男が出てきた。


「ああ、ちょっと亮に用があってな。」

「バルバトス様に、ウァサゴ様、ブエル様に…其方の方は?」

「少し前に拾った新入りだ。」

「成程、お名前は?」

「渚だ。よろしく」

「此方こそ。では渚様、此方を。」


手帳?のような物を渡された。


「渚様のパスポートです。これを持っていれば、殆どの都市に入る事ができます。バルバトス様、ひとまず所属はクレインにしておきましたが、問題ないでしょうか?」

「それでいい。ありがとな。」

「いえいえ。それでは皆様、良い旅を。」


彼に見送られて、暗い道を進む。


「もう少し明るくできないのかな?」

「別に躓く事も無いだろ」

「雰囲気よ雰囲気!てか、こっから坂道だし。下手すりゃ転ぶよ?」

「…もしかして、ファディカって地上にあるのか?」

「そうだ。農耕をするのに地下じゃちと都合が悪い。それに病人には太陽の光が無いとだ。」


「病院はここにしかないのか?」

「診療所程度ならどこの都市にでもあるが、ちゃんとした病院はここぐらいだな。」

「…途中途中止まっていたとはいえ、二日三日も病人を連れ歩くのは危険じゃないか?」

「馬鹿言え、地上じゃなきゃ鉄道が使える。それに万が一の時は魔術での移動だってある。…魔術のほうは当てにならんが」

「"今は"、ね。」


「なんの話だ?」

「あー気にしなくていいの。私達には関係ない事だから。」


…関係ないと言うには少し、顔が怖いぞ。


そうこうしているうちに、通路の出口が見えてきた。

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