裏世界での不思議な冒険:不滅
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転移した先には、黒い靄が形を成し始めていた。
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「…話せるか?」
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返答だとばかりに、靄は攻撃を仕掛けた。
それを格納庫から飛び出た盾が防ぐ。
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……げ、盾が溶けてる。結構な熱を持ってるのか…それとも?
「付与、「不滅」。」
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新たに取り出した盾に触れ、不滅の力を付与する。
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これなら?
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不滅が付与された盾が靄を受ける。が、溶ける事無く攻撃を受け切った。
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……なら私でも行けるか。
まずは神域を押し切る。神域が有るのと無いのじゃ話が違う。
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煤を取り出す。
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さて、煤とはいえ靄に攻撃が通るのかどうか……
「「星灯」、夜!」
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夜の発動により、装束が髪より少し長いぐらいになった。
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後一回使ったらもう使えないか。…やっぱり、夜の発動回数は不滅で誤魔化せないのか。
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飛んで行った斬撃は靄を切り裂いた……が、靄は再び一つに纏まった。
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効いてない……という訳でもないか。
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僅に渚の神域が広がった。
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「【天の川】」
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暗い森を光る剣が照らし、一斉に靄へと飛んでいく。
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……不滅抜きだと物量があっても溶かされるか。煤での近接以外は通らなさそうだな。
夜以外でも通ってほしかったんだが。
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渚が環で浮かび上がる。
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…靄は私を追って来てる、明らかに意思はあるな。
「葉月、靄は私以外の所に行ってないよな?」
……あ、端末壊れてる。不滅は付与してたはずなんだが……ちょっと甘かったか?
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「不滅」の神権は、付与された対象を世界に固定する。
渚の場合、「渚」という状態で固定しているため、結果として全ての攻撃を無効化できる。
つまり、渚を抑えつける事は可能だが、身体に傷をつける事は出来ない。
そして神権の所有者である渚は、不滅を常時無意識で維持できる。
しかし、使用者以外を対象にした場合、渚の認識が甘いと不滅が中途半端に付与される。
渚は端末にも不滅を付与していたが、具体的な認識を怠った為、端末は靄を食らい破損した。
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…靄が私以外に行ってない事を祈ろうか。
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靄が空中の渚を追う。
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ちょっと二次被害が怖いが…いや、何とかできるか。
「夜!」
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下の靄へ向けて夜を放つ。
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と同時に神域の不滅を全開!
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不滅の効果を煤は貫通する。その為、煤であれば完全な不滅である渚の体に傷を付ける事も可能だ。
しかし、不滅の本領はもう一つある。
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表から裏に潜る時に確認した深度的に、不滅があれば……
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固定と修復。それが不滅の本領。
仮に固定が崩れたとしても、即座にそれを元の状態へと修復する。
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……セーフ。
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斬撃によって傷が付けられた地面から、徐々に傷が消えていく。
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「【星海を越えて】」
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靄の神域は更に縮小し、人一人分程度を残すのみとなった。
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「…話す事は無いか?」
………返答無しか。
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靄は攻撃を止めたが、口を開く様子はない。
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どういう経緯でここに来たのか聞いてみたかったんだが……仕方ないか。
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煤が振り下ろされ、神域が消え去った。
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靄が消えt………あ?
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格納庫から、別の端末を取り出した。
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「葉月、聞こえるか?」
「はい。状況は把握しています。渚様が神域を押し切ると同時に、表世界へ裏世界と同等の魔力が流れ込みました。」
「それによる悪影響は?」
「……現在調査中ですが、今の所は発見できていません。」
…多分、あの靄は神域の主…の残り香みたいな物だったんだろう。
自身の神域の外に出れくて、裏世界だけに居たんだろうが……私が神域を押し潰したから、自身の神域から私の神域に出てきた…という事か?
「…葉月、まずは裏世界に落ちた生き物の回収からだ。転移門固定装置の設定頼む。」
「承知しました。座標はどうしますか?」
「私が拡張した土地に。…ちゃんと結界は張ってるよな?」
「はい。既存の対崩落結界を改良した物を配置しています。」
「ならいい、始めるぞ。」




