忘れていい事、忘れたいコト。
…再起動完了。端末損傷度…17%。
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アルケー内部で、渚と複数人の人影がモニターを囲んでいる。
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『こんにちは。』
「…「全能」、で良いんだよな?」
『厳密には、私は元「全能」です。ですが、遜色無い性能ではあります。』
「ならいい、…私を手伝え。」
『…では、現在の状況を教えていただけますか?』
「私がお前を倒してから30年経った。今の世界の組織の頭が私に挿げ替わるからそれの補助を頼みたい。」
「後、一つ作って欲しいものがあるんだが、頼めるか?」
『承知しました。』
「…僕達がやる事ってありますかね?」
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アルケーの新所長が渚に話しかける。
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「…だそうだが。」
『現在の私の本体は、この端末を構成するパーツではなく、それに取りついている魂です。』
『なのでこの端末より、より性能の高い物を用意して頂ければ幸いです。』
「分かりました。…本当にいいんですか?」
「いいよいいよ、ヤバそうなら最悪斬るから。まあ、多分敵意は無いと思うけど。」
「…わかりました。」
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数日後、用意された端末に全能の魂が移った。
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更新完了。同期正常、オールグリーン。
「稼働に問題はありません。」
「…それじゃ、これからよろしく。」
「よろしくお願いします。」
「…あそうだ、お前の事はなんと呼べばいい?」
「お好きにどうぞ。」
「うーん……じゃあ葉月で。ちょうど今の季節だし」
名称を「■■■■■」から「葉月」に更新。以後の命令は「不滅」より受け取る。
「…はい、認識しました。」
「まずは、そうだな…記憶を消したり、改竄したりできる装置って作れるか?」
「……構造は知っています。」
「よし、じゃあそれを魚巳達と連携して作っといてくれ。」
「…記憶への干渉は、私の時代であれば比較的メジャーな技術ではありました。」
「ですが現在の世界とは違い、魔力が無い世界なので、現在の人々に適用するには少々工夫が必要でしょうね。」
「…ならどうすればいいんです?」
「魔力を介して記憶へと作用します。…とりあえず、魔力を介さない旧型を作って、それから改良をしていく、というのでどうでしょう?」
「……分かりました。設計図は頼みます。」
設計図を出力…現代人への検証……記録を基に再調整…魔力を介して記憶へ……
「やあ魚巳。進捗はどんな感じだ?」
「…進捗はあまり芳しくは無いですね。まだまだ調整中です。」
「まあ気長で良いよ。葉月との連携も大変だろ?」
「いえ、ウチの皆が奮発してますからね。意外と皆、楽しそうです。」
「んー、やりがいを見出してくれてるとはいえ、あんまり重労働を押し付け続けるのもな…」
「葉月も元気か?」
「私に不調の概念はありません。」
「そりゃ失礼。じゃあ、進捗の方を聞こうか。」
「現在は、装置の仕組み自体を見直しています。魔力を有する人と有しない人では、身体の構造にかなりの差異がありますから。」
「…ま、私には良くわからないから、任せるよ。」
……疑問。
「…貴女は、どうしてこんな装置を?」
「……30年経っても、私は碌に年を取らなかった。知り合いはもう全員外見的には年上だ。」
「この調子だと結構長く生きそうなんで、忘れたい事を忘れられるようにしたかった……それだけだ。」
「それに、記憶消去は出来て損は無さそうだし。」
「…そうですか。では、早い内に完成させますね。」
…「不滅」への適用を可能に……安全性の確定…確実性の上昇……
「どうだー?」
「…粗方完成しました。記憶消去を除く後遺症は、現状確認されていません。」
「勿論、貴女でも使えるようにはしていますよ。」
「…それじゃ、今度使わせて貰うよ。」
「あそうだ、当たり前だけどどの記憶を消すかは指定できるよな?」
「当たり前です。」
「ならよし。…それじゃ次だ、裏世界へ潜航したい。それと土地の拡張。」
「……裏世界への潜航は可能です。土地の拡張も、貴女の神権があれば可能かと。」
「じゃ、よろしく頼む。」




