4:破損
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渚が金色の血を吐き出す。
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…そういえば、血出した事無かったな……
大天使…なのか?あれは。
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あと一撃で消える瀕死の存在に、渚は動けない程の圧を受けていた。
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パキン
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再び割れる音が鳴った。
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◇
「渚ちゃん!」
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渚が頭を下にして落下し始めた。
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どうして?…環が消えてる、このままじゃ……!
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渚が落ちきるすんでの所で、唯が渚の下敷きになった。
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「渚ちゃん!聞こえてる!?」
私の目は治った、なら渚ちゃんのも治ってるはず!
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「…聞こえてる。」
…頭が痛い。頭のどこかに破損を食らったか?
……なんで私は、これを「破損」と呼んだ?…まあいいか。
「……大丈夫?」
「大丈夫だ、もう行ける。」
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浮かび上がった渚の頭上には、三重の環が浮いている。
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……一撃、あと一撃なんだ。
「ブエル、ウァサゴと唯を連れて引いてくれ。」
『…渚ちゃんは?』
「大丈夫だ。大丈夫。」
「…【二十一つの星】」
パキン
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剣が大天使を取り囲むが、その全てが破損し、壊れた。
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…モザイクが白から黒に変わってる、大天使の枠に嵌めるなら第四形態か?
私に出せる限りの物量でも無理か…まあ、多少は誤魔化せるだろ。
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環による浮遊と第六感を併用し、剣の中を駆け抜けて大天使へと向かう。
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パキン
…右足、飛んでるから関係無い。
パキン
…右人差し指、まあ大丈夫。
パキン
左目……何とかする。
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渚の体に、少しずつモザイクの箇所が広がっていく。
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…少しずつ引いてる。体が軽くなったからなのか速いな…追うだけでこっちが消耗する。
パキン
左腕…手は動くか。握れるしいい。
…もう少し速度上げるか。
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渚の体が、更に速く飛び始める。
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……急げ急げ、これ以上は私が持たない。
剣の様子を見るに、構成する部位全てが破損したら多分壊れる。いや、そもそも重要部位をやられたら死ぬか。
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天使の環による浮遊ではなく、それを補助として空を走り始める。
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…こっちの方が速いな。足が破損したから最高速では無いが、それでも環だけよりは速いか。
……行ける。届く。あと一撃…!
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握り続けていた煤を、改めて構え直す。
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これで……!
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それまで背を向けていた大天使が、唐突に渚へ向き直った。
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パキン
「がっ!!」
内臓!…ここに来てかぁ!
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振られた煤は、大天使を捉える事無く空振った。
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――動け動け動け、ここで怯むなそれこそ終わる…!
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大天使の頭上から剣を飛ばすが、その悉くが壊された。が、その隙に渚が懐に入る。
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届け…
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一瞬、大天使は能力を発動しなかった。
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……!!
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それは、複数箇所への同時発動の為。剣への対処は、一つ一つを連続で行っていた為厳密には同時では無い。
が、大天使は一瞬でも"ズレ"が生じれば、ほんの僅かでも隙を作れば相打ちに持ち込まれる。そう判断した。
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パキパキパキパキパキパキパキン
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渚の体の大半に、黒いモザイクが掛かった。
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くそおっ!!
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左足、左耳、左手、そして幾つかの内臓。それらが破損した衝撃で、渚が使っていた全魔術が解除された。
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…環を維持できない、落ちる……
今日は落下の多い日だ……本当に。




