霧を裂いて:黒く暗く
――魔法陣の中心から人?が現れた。……何かが重なっている様な感じがする。それも大量に。
どうやら拘束は解けた様だが…魔術も第六感も使えないか……目の前の人影が、敵じゃないと良いんだが。
「………」
――人?の輪郭がぶれる。…動かないようなら、引かせてくれる…か?
足元から影が伸びて、手の様に……いや違う、影が人のように変化して……這い出てきた。しかも複数。
煤は使え…使いたくない。普段は第六感で誤魔化しているが…それが無いとなると、振り回されて隙を作るのが目に見えている。
だが、代替となる物が無い以上、煤を使うしかないだろう。…というか今戦いたくない。
影が迫ってくる。迎撃するか…逃げるか……逃げた所で、ここから出る手段はあるか?凜と怜を探すにしても、気配探知すら出来ないぞ……
……とにかく捌くか。
一体目の影を断ち切り、二体目の影を蹴り、飛ばし…三体目の影に衝突…し、四体目の、影を、斬り―――
「はぁっ、」
倒すたびに、中心の本体?から湧き続けている。倒しても倒してもキリがない。個体差は…無いと思うが、ここまで多いとそれ以前の問題か。
「…はぁっ、」
息が切れてきた、腕が上がらない、眩暈が収まらない、終わりが見えない。
「……はっ、」
……まずい、このままだと物量で押し切られる。一体後何体居る…というか出せる?有限ならまだマシだが、無限なら……積み…
…!影の量が増えた、まさかまだ増え――
「…っ!」
まずい、影に押し潰され……
――そうか、お主ら……悪かった。儂が悪いのは重々承知している。じゃが……手を出す事は許さぬぞ。
「!」
本……事典か?なんで浮いて……
【境界線】、【燎原を燃やす焔】、【日差し】。
――結界と爆発が同時に発生した。結界は……私を守る様な配置になっている。爆発の余波が当たらないようにしたのか?
……しかも、徐々にではあるが魔力が回復し始めた?それに、体が軽いし、感覚も広がっている……
徐々に爆発の煙が薄れ、結界の外の状況が分かるようになってきた。…魔方陣はほぼ完全に壊されているが、影は未だ健在のようだ。…この結界は何時まで持つんだ?
装束を使うといい、■■。
「誰だ。」
喋らんでも聞こえるわい。儂は…まあ、事典の亡霊じゃな。ヴォイ・グリフでもある。
ヴォイ……事典の名前か?
正確には、その著者じゃな。前にもあったじゃろ。
…ああ、あの時の……
……貴方は、あの影の正体がわかるか?
まあの。…儂の功罪の一つじゃ。
だから、こうして責任を取りに来たのか?
それも一つある。他にも理由はあるがな。
で、"装束を使え"だったか?それで片を付けられるとは思えないが……
今の主は万全の状態じゃ。今の内にそれに慣れる事を勧めるぞ。
…一回程度で変わる物か?
変わるから言っておる。サポートはしてやろう。結界が五秒後に消える、そこからが勝負じゃ。
…結界が消え、影が私に迫ってくる。……助けてくれたんだし、信じてみるか。煤を握りしめ、再度――
「――星灯!」
……装束を起動する。
――神権反転、「厄災」。
そんな声が聞こえた直後、全ての影が揺らぎ始めた。……チャンスか?チャンスだな、行こう。
「ステラ……」
いや、もっと行けるな。
「【二十一つの星】!」
呼び出した剣で影を貫いていく…が、あまり効いてないか。やはり煤じゃないと駄目か?
それを飛ばすイメージじゃの。
飛ばす……簡単に言ってくれるな。投げれば良いか?
そうじゃあない、魔力だけを飛ばすのじゃ。
……本当、簡単に言ってくれるな。
サポートはしよう。
……煤を構える。影を斬る訳でもなく。
――神権発動、「祝福」。
…装束に集めた魔力の一部を、煤に纏わせる。そうした煤は、黒く燃えているようだった。
縦に構えていた煤を、横に構え直し……振った。
煤が纏っていた装束が、煤から離れて飛んでいく。
黒く燃えながら……影を切り裂き、魔方陣へと向かって、全てを切り裂きながら進んでいった。
そうして飛んでいった闇は、壁に衝突しても尚進んでいった。…地盤沈下とか大丈夫だろうか。




