霧を裂いて:朝靄、暗い街
私が凜にソーゲムに行ける、という事を話してから二日が経った。未だこの森には朝靄が立ち込めている。…ソーゲムを隠す霧と混ざっているようだが、認識散逸効果は無いようだ。
「…なんだか、随分とんとん拍子に話が進んだな。」
「当たり前でしょ。これ、結構一大事なんだから。」
「というか、大隊長を三人も駆り出して良かったのか?今大天使が来たら…」
「セントラルは問題ないよ~、あれがイレギュラーなだけだし。」
「ファディカも問題なし!前以来、結界の強度と阻害度上げたから!」
「ノリスは…そもそも来た事無いので。」
…という事らしい。
「改めて、本日は宜しくお願いいたします。杉原さん、愛宕さん、桐生さん。」
「過剰戦力な気もするけどねえ。」
「最悪旧魔術局と戦う事になるんですし、それを想定しているなら妥当じゃないですか?」
「ム……それもそっか。」
「始めるぞ。」
煤を抜き、霧を裂く。
「…入れそうですね。」
「【星は先へ】」
門を目の前と、街中に開く。
「…それじゃ、行こうか。」
…暗い。街灯こそあるが、光量が足りてない。それに加えて、街自体が暗い。部屋の隅の様な雰囲気だろうか。
「人の気配は……無いね。」
「警戒を解かないようにしてください。…先代の魔術なら、何でもできますから。」
「先生がまだ【輪廻の祈祷】に取りつかれてるなら、相当大きな魔法陣があるはず…なんだけど。」
「…上から見下ろした時は、魔法陣みたいな物はなかったよね。」
「認識阻害か隠蔽か……どちらにしても、探してみないと分からなさそうですね。」
「…どうせ先生は気づいてるだろうし――【太陽の導き】!」
………何も反応は無い。
「何か見つかった?」
「………何も。ここには私達以外、誰も居ない。」
「…とりあえず、建物にでも入ってみる?」
「何かがあるとも思えないですが…」
「案の定、何もなかったな。」
建物の殆どは…そもそも扉が無かった。扉がある建物も、鍵が掛かっていた。まあ壊したが、何も無かった。埃すら無かった。
「…後は、街中を探索するぐらいか?」
「それか地下…掘るのにどれぐらいかかるかな。」
「意外と壁の中だったりするんじゃないですか?」
「…転移で降りたので察知出来なかっただけで、案外上にあったりするかもしれませんね。」
「どこだとしても、魔法陣置ける広さじゃないと…」
……あれ?返答が少ない。
――今在る気配は、凜、怜、杉原さん、桐生さん、あと私……唯が居ない?
「…皆不味い、唯が消えっ――」
――誰も居ない。今だ、たった今気配が消えた……どう考えても魔術が絡んでる。ならどれだ?認識操作か、転移か、それとも……
「ぐっ?!」
…何かに弾き飛ばされた。見えない…が、もしかしてここに誰か居るのか?
「――聞こえるか?」
返事はない。凜と怜どちらかは通信を開いていると思ったんだが……試してみるか。
「【灯光】!」
少し眩しいが、ここまでやれば誰かしら気づくはず。気づかないなら……
…何の反応も無い。となると、魔術にも認識阻害が適用されている…?何かと衝突したのは確かだし、何らかの魔術が発動しているのは確か…なはずなんだが。
――建物でも壊してみるか。
反応なし。誰でも気づく程度には壊したんだが……ここまで来ると、また別の可能性を考えた方が良いな。
認識阻害以外だと、転移…なら流石に気付くはず、空間……別空間への転送とかか?ならかなり面倒だぞ…
……一度外に出るか。私ならまた戻って来れるし。
怜の言っていた事を鑑みて、転移ではなく上へと駆け上がって行く事にした。が、特に何事も無く外まで戻れた。
…外には誰もいない。まあ私…というか、煤が無いと出入りできないから当たり前か。
森には朝靄が立ち込めて……朝靄?もう一日が過ぎたのか?……想定していたより不味いかもしれない。




