ある種の境界
「渚、ちょっと話があるんだけど。」
魔術局にきて数日。急に凜に呼び出された。
「要件は?」
「エリオンの調査。エリオンってのは幾つかある廃都市の一つなんだけど……ちょっと面倒な要素があるの。」
「面倒と言うと?」
「…簡単に言うと、"入れない"。」
「転移とかでも?」
「無理ね。徒歩でも何でも無理。」
「理由は?」
「自動迎撃機構が生きてる。恐らく崩落以前から存在してるらしいんだけど、何故か今でも動き続けてるのよ。」
「崩落以前…というと、最低でも200年以上前か?」
「大体ね。何ならもっと前とも言われてるけど…なんせ、それより先の歴史は不明点が多いから。」
「エリオンの近くにはノリスがあるんだけど……結構迎撃範囲が広いせいで、偶にだけど怪我する人がいるのよ。」
「という訳で、渚にはそこの調査に行って欲しいの。ついでに迎撃機構を止めて。」
「因みに何故私なんだ?」
「あなたの適正星と光でしょ?転移出来るなら何かあっても逃げられるし。」
「…後この依頼、結構前から保留されてるやつだから、そろそろ何とかしないとで……」
「……了解。」
「ちなみに…"迎撃"とは言ったが、具体的にはどういう事が起きるんだ?」
「銃撃」
なるほど。
「弾切れとかにはならないのか?」
「それが延々と撃たれるのよ。…火薬とか結構貴重なはずなんだけど。」
「不思議だな。」
という訳でやってきた。…割と北の方なので少々肌寒い。都市…とは言うが、外見はどちらかと言えばドームに近い。天使が寄り付かないという事は、無人なのは確定でよさそうだ。
…ドームの付近にだけ草木が生えていない。つまり、そこからは"何か"がある…という事でいいだろう。
試しに盾を入れて……壊された。一応銃声はしたな。次は転移を……座標指定できない、ソーゲムと同じ感じか?…でも、崩落以前の場所じゃないのかここ。
……叩き落とすのは論外。幾らか感を上げてもまあ数発が限度だ。なら特攻でもしてみるか?……無いな。
後は…盾を出し続けるとかか?…生成と射出が間に合うかが肝だな。
…というか、上に転移してそこから降りれば何とかなるか?…まあ、現実的なのはこれぐらいか。煤を構えて、上空へ転移する。念の為幾つか盾も追従させる。
―――取り付いた!銃撃は……無いな?さっさと入ろう。煤で足元に穴を開けて、侵入する。
…荒れ果ててるな。床は崩れそうだし、天井の隙間から光が差し込んで……外はそこまで劣化してないように見えたんだがな。というか、外見より広くないか?……まさか、空間が歪んでる?…転移先に指定できないのはそれが原因か?
………入る前は何とも思わなかったが、ここに入ってからどうも忌避感?を感じる。あまり長居したくない…ような感じだ。ささっと銃を止めて帰ろう。
?何か…音がする。音の方向は……もっと奥の方か。気は乗らないが……行ってみよう。
音は、この隔壁の向こうか。…念の為少し慎重に、煤で隔壁を切る。
隔壁の向こうには明らかに隔壁より広い廊下が広がっていた。…やっぱり空間歪んでるな?
ふと、右に目をやると……それが見えた。
なんだこれ、機械?……だいぶ古いし、しかも大きい。私の身長を優に超えているし、下手するとここと同じ程度の古さか、はたまたそれ以上か…….ともかく、かなり古い時代の物だな。…だが、機構が死んでる訳じゃ無さそうだ。
「【灯光】」
照らして良く見てみる。……そうか、この機械は横たわっているんだ。先程までは暗くて形状が良く分からなかったが、こうして照らしてみると……人のような形をしている。恐らく手足に当たるであろう部分が少々欠けているが……それでも、人型と判別できる形をしている。
………持ち帰ってみるか?【星座に手を伸ばす】なら多分入るだろうし。…しかも、僅かではあるが…どういう訳か魔力を帯びている。それがこの機械のせいなのか、はたまた空間のせいなのかは定かではないが……まあ、面白そうだし持ち帰ってみよう。
「【星座に手を伸ばす】!」
……よし、入った。…後で凜に、こういう機械の解析とかできる人を紹介して貰おう。
廊下の奥は……暗い。何も見えない。…行きたくない。さっきからしていた忌避感はここが起点か?……引きかえそう。これ以上進んでも碌な事にならない。…よく感じ取ってみると、これは忌避じゃない……どちらかといえば、拒絶…の様な感じがする。
その後外に出て、外壁に設置されていた銃を片っ端から回収した。銃が向ける角度の外からだと、案外回収が楽だった。粗方回収した辺りで検証用にエリオン外部へ盾を飛ばしたが、破壊されなくなった。これなら問題もないだろうし、戻るか。
「帰った。」
「お疲れさま。成果は?」
「迎撃機構は止めた。後は、微妙に空間が歪んでたかな。」
「空間の歪みか……改めて立ち入り禁止の報告しとく。」
「ああそれと、幾つか持ち帰ってきた物があるんだが、そういうのを調べられる人とか知らないか?」
「魔術的な物なら私が調べられるけど…」
「どちらかというと機械だな。」
「なら、アルケーにでも渡しといて。」
「アルケー?」
「…ああ、アルケーってのは都市の一つよ。機械とかに詳しい人が集まってるから、そこに渡せばいいんじゃない?最近は鍛造とかばっかだけど、確か調べられる程度の設備は今でもあるはずだし。」
「じゃ、行ってくる。」
……結局、あの廊下は何だったんだろう。
場所としては前面陸背面海 湾の先端に配置されてる 湾の奥にノリスがある
この世界の科学云々は部分的に消えてる




