XI:即断即決
そうこうしているうちに大天使が結界に触れ……通さないのは良かったが、そう来るか…
「結界を…登ってる……」
「…建物への被害考えなくて良いのはありがたい。」
さてと、コアは……あそこか。
「攻撃できるか?」
「…まあ。」
「じゃ頼む。くれぐれも私には当てないでくれよ?」
「そんなヘマしないわよ。…というか作戦は?」
「私が引き付けて、貴女が攻撃。単純だろ?」
「細かい段取りは?」
「…臨機応変に!」
…逃げた。
さて、とりあえずステラでこっちに注意を寄せる。その後は…とりあえず逃げ回るか。…あまり結界の中央には寄せたくないな。万一にも落ちてこられたら対処が難しいし。
結界に沿うように移動しつつ、剣を飛ばして注意を引く。…よしよし、こっちに注意を向けたな?
「このまま引き付ける!隙見て攻撃頼む!」
「詠唱するから二十秒ぐらい隙作って!」
長いな……まあ、
「了解!」
行けるだろ。
確か、あの大天使は水氷系がそこそこ効くはず。…まあ、巻き込まないように調整はするわよ。
――魔法陣展開。青色の血管が少し光る。
「――【水、法則を脱す】」
「――【Aqua, legem transgreditur】」
とりあえず……全ては使わない。次に繋げる為の奴…だから。
「【何を以て?ナニを以て?】」
「【Quo? Quo instrumento?】」
…時間稼いでくれてるし、急ごう。
「【氷、法則を脱す】」
「【Glacies, legem transgreditur】」
「【魔を以て、力を以て】」
「【Per magiam, per vim】」
あれは、前にブエルが使ってた……いや、違うか?…少なくとも、ブエルがやってた時よりは消耗していない。出力を抑えているんだろうか。…何か案があるようだし、今はこっちに集中。
剣を飛ばし続けながら切り込む。…まあ、大抵防がれて不発に終わるが。
「【雨は昇り、氷は纏わる 既に権は我が手中に】」
「【Imber ascendit, glacies adhaeret Potestas iam in manibus meis est】」
あとちょっと。…流石に堪えるわね。追撃できるといいんだけど。
「――【見よ、この空を】……【雹氷】!」
「――【Ecce, caelum hoc】」
雨が昇り始めた。後は、これを大天使に……
なんだ?急に大天使の動きが…いや、凍っ…て?
「とりあえず動き止めた!追撃するから止めを!」
「…了解!」
…よくみると、彼女の付近から何かが飛んで行って、それが大天使に当たった事で凍っている…んだろう。多分。…かなり消耗しているようだが、追撃できるのか?
「――【冽球】!」
巨大な氷柱…刺すんだろうか。…いや、僅かに水を纏わせた?
「はっ――【水魂】!」
…飛んで行った。大天使はまだ動いてない。
「なんで二回詠唱したんだ?」
「す、水氷系はあっ、…そういう……もの、なの…」
「――魔力切れか。」
「ごめん…限界……とどめ……」
…気絶した?とりあえず結界の外へ………!?
「まずい!」
結界にへばりつく形で凍った大天使の、恐らくコアがあったであろう場所に、深々と巨大な氷柱が刺さっていた。…恐らく、私が止めを刺す必要すらないぐらい、深々と。それはいい。それはいいんだ。
そして、そこから……黒い、そう黒い……闇が漏れ出ていた。
「………」
どうする?…すでに滴り落ちた闇が地上を侵食し始めている。幸い、結界の外には出ていないようだが……それを張った本人の魔力が尽きたら、一体いつ消滅するんだろうな。
不幸中の幸いか、コアの位置は変わっていないらしい。今しがた大天使が氷柱から抜けたが、輪もコアも健在だ。
迷っている暇はない。…前回と同じだと仮定するなら、再度攻撃をすれば止められるか?…氷も解け始めている、急ごう。
「【拡大】」
地を蹴って大天使の元へ向かう。…いや違う、本体は下か!
結界にいるのは本体じゃない、ただの抜け殻だ。…輪すら捨てたのか、それともそれすら抜け殻か。ともかくコアは闇の中に紛れている…はず。
確証はないが、気配が上じゃなく下にある時点で下にあるのは確定…だと思いたい。だが、広がり続ける闇のどこにコアがあるのか、細かな位置は分からない……どうするか。
「…そうだ。」
そういえば。
…どうなってるんだ?凜ちゃんが大天使に止めを刺した…はずなのに、この黒いのは…ファディカの……
「亮さん!」
「…渚さん?」
「大天使の本体を探してくれ!前にも探知?みたいな事やってただろ?」
「ちょっと待って状況がよくわからないんだけど」
「時間が無いんだ結界が消えたら終わる!」
「あーわかった天使の反応あったら教えるよ!【太陽の導き】!」
………居た!
「ここから右斜め前に70m弱!強い反応がある!」
「了解!」
…いっちゃった。
ここら辺だな?…くそ、私じゃ具体的な位置がわからない……
面倒だ
大体の座標は割れてる、ならそこを全て斬る。幸いこっちには煤があるんだ、建物の強度は気にしなくていい。
斬る。おおよそ居るであろう場所を中心とした円形に。
浮かす。【星は先へ】を拡大して展開、斬った部分を中空へ飛ばす。
斬る。浮かした部分が落ちる前に、コアの場所を絞る。
……見つけた。
闇を垂れ流しながら落ちる瓦礫……そこだな?
「【星海を越えて】」
目の前に転移、斬る。…同時に、結界が崩れた。




