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未定  作者: 大倉
はぐれ者の旅路
21/36

XI:休み休み、忙しなく

そういえば……


「――なあブエル、魔術には適正がある…というのは前に聞いたが、適正にない魔術を使おうとしたら、一体どうなるんだ?」

「それはね…事故る。」

「事故?」

「もう少し詳しく言うなら"暴発"かな?わかりやすいのだと…星系統への適性が低い人が【星海を越えて(アストラルブリンク)】を発動したら、転移の途中で体がバラバラになったりはするかな。」

「…そうならなくて良かった。」

「たまに事典に載ってても適性が低い事あるからね~渚ちゃんがそうじゃなくて良かったよ。」


…そうならなくて良かった。本当に。


「そういえば、ブエルはどの系統に適性が?」

「えーっと……前にも言ったっけな?()()()だよ。」

「全属性、と言うと?」

「そのまんまの意味。【(アストラル)】、【(フレイア)】、【(ガイス)】、【(グレム)】、【(イグニス)】、【(エレイト)】、【水氷(ハイス)】、【(レスト)】、【セトラ】…その他にも幾つかあるけど、私が得意なのはこれぐらいかな。」


…多いな。多分だが、まだ半分も見てないぞ。


「まあこの中でも多少の得手不得手はあるけどね。【星海を越えて(アストラルブリンク)】とかはちょっと苦手だし。」


確かに、あまり使ってはいないな。


「そういう得手不得手とかも、練習でどうにかならないのか?」

「んーならないかな。魔力回路は骨格みたいな物だから、生まれついた物をいじるのはなかなか面倒だし…それに、危ないしね。」

「ま、実際は骨ってより血管に近いけど。それでも、弄繰り回すのに向いてるって訳でもないから。」


「何とかして私も、回復ができる魔術を使えたりしないか?」

「無理かな。第一に、教えられるのが亮君ぐらい。それに、まだ未解明の部分が多すぎて、適性が無い人が使うと確実に事故る。」


何時になく真面目に話している。…本当に危険なんだろうな。


「ちなみに、事故が起きるとどうなるんだ?」

「…それを話すとなるとね、私じゃちょーっと知識不足かな。…現状私が知ってる祈系統魔術は四種類。【回復の祈祷(ゼータフレイア)】私が唯一ちゃんと使える回復魔術で、体力とか、傷を治したりとかはできる。」


「前にブエルが使ってた奴だな。」

「そうそう。割と簡単な部類の魔術ではあるかな…あ、適性があるならの話ね。」


「次に、【平癒の祈祷(ラムダフレイア)】これは病気とかの類を治す魔術で、詳しい仕組みはよく知らないんだけど…とにかく、大体の病気はこれで治せる。治せないのもあるらしいけどね。」

「【蘇生の祈祷(シグマフレイア)】これ使えるの確か亮君だけなんだけど…簡単に言うと、死んだ直後の人を蘇生できるの。」

「…また随分と凄まじい魔術だな。」

「まあ、体が完全な状態じゃないとっていう条件はあるけど、それでも破格の性能でしょ?」

「ただ、詳しい仕組みが全くわかってないから、感覚で使える亮君ぐらいしか使える人がいないってわけ。理論が分かれば私でもある程度は使える…はず。」


「最後に…【輪廻の祈祷(オメガフレイア)】…ソーゲムに霧がかかった原因なんだけど、これの詳細は私もよく知らない。…予想では、【蘇生の祈祷(シグマフレイア)】の上位互換…とは言われてるけど、グリフ事典に"上位互換"みたいな性能してる魔術はほぼ無い。」


「だから、実際の性能は誰も分からない…って感じ。」


「つまり、【蘇生の祈祷(シグマフレイア)】とはまた別の性能をした魔術…という事か?」

「ま、そうかもってだけ。」


「ちょっと話が逸れたけど、私がちゃんと使える回復魔術は【回復の祈祷(ゼータフレイア)】唯一つ。だから、教えるにしても知識不足って訳。…まあ、私より得意な人なんてざらにいるからね。」

「へえ……」


ヘイヴンで会ったあの人も、回復魔術を使えるんだろうか。







「【回復の祈祷(ゼータフレイア)】!」


…そろそろ、三日になる。


「何とか第二形態にはなりましたが…」


結界の中では、大天使が地面から跳ねている。…潜っている時も、地上に体を出しながら。


「眠い…」

「珈琲でも入れましょうか?」

「…苦めにして」

「かしこまりました。」


…やっぱり、アウトサイダーだけじゃ、時間が掛かりすぎる。…私も参加したいところだけど、怪我人の回復と結界の維持が精一杯か。


怜を入れてもいいけど……大概異形型には強くないか。亮は呼んだけど、どの道結界の維持は私の役目……


せめて、せめてあと一人、魔術師がいれば……


「奈義姉さん……」


どこで何してるのか知らないけど、偶には顔見せてくれたって……







砂浜を眺め、波の音を聞く。


「…いい所だな。」

「お気に召したようで何よりです。」


ヘイヴンから離れて、そのまま南下した先にある都市、インデンス。前にベリアルに招待されたので、来てみたが……


「思いの外、落ち着いた場所なんだな。」

「ディストレストだって人間ですから、安寧を求めるのは当然です。」

「…お前も、ここに居る時のほうが落ち着いているように見えるな。」


ウァサゴが口を挟んできた。……落ち着いているように見えているなら、うまく遮断できている証拠だ。


「まあ、特段警戒する事も無いしな。」

「元都市ってのは知ってたけど、ここまで強固な結界が張られてるとは思わなかったよ。」

「確か、ディストレストにも何人か魔術師がいるんだろ?」

「そうですよ。魔術局…いや、アウトサイダーが十五年ほど前まで、かなり乱暴な集団でしたからね。」


「確か、前の隊長が相当悪い奴だった…んだっけか?」

「そうだ。その隊長の席を、今の隊長が取ったってのが、十五年前の事さぁ。」

「そういう感じだったんだ。知らなかった~」

「ま、表向きには今も昔も大して変わらんだろうしなぁ。」

「実際には、隊長が天道様に替わった事で、かなり神仰宗を抑えられています。俺からは、感謝しか無いですね。」




……話が盛り上がってきたようだし、少し抜け出すか。




………ウァサゴは私が落ち着いているように見えていた。…そんな訳が無いだろ、ずっと大天使の気配がし続けているんだから。


とはいえ、アウトサイダーだって大天使と戦って来てるんだ、流石に負けるような事は……事は……無いはず。うん。


気がかりなのはファディカでの戦闘だ。確かに唯は強いと思う。それでも、大天使に倒されていた。…あまり考えたくはないが、大天使は大隊長より強いのか?いやだとするなら、とっくに幾つかの都市は滅んでいるはず。なら、どうやって……?


……もしかして、魔術師か?実際、ブエルは大量の天使を一人で相手できていた。…ウァサゴやバルバトスが弱いとは言わないが、二人の強さはああいう異形より、人とかへの強さだ。そこで役割分担をしている……ならまあ、辻褄は合う…はず。


だとしたら不味くないか?今現在、大天使がどんな状態なのかはわからないが………!


大天使の気配が強まった。……距離自体は変わってない、となると…前回のようにまた新たな攻撃をしてくる予兆か?…放置する訳にもいかない、行こう。




星が煌めいた。

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