XI:今はひとまず
―――あれ?いつまで経っても転移が終わらなぁっ!?
…何かに衝突した。今転移中だぞ?これは………結界か?私は出してないし、恐らくブエルのでもない。となると…都市にいる魔術師が展開している物か。何故転移が阻まれたのか少し疑問だが…結界を使っているということは、内部で何かが起きているのは確定だな。
兎にも角にも一度ここから離れよう。転移中の空間に留まり続ける意味も無いし。再度【星海を越えて】を発動。一度逸れて…空間的にはどこに飛ぶんだこれ。
転移が終わり、都市へと到着した。……見えた光景は、大方予想通りの物だった。
上から白と金色の人型が光を降らせ、どういう訳か地面から光が湧き出ている…あれが大天使だろうか……が、都市に張られた結界の中で、数十人の人々と戦っている。結界に遮られているからか、熱や衝撃などは感じない。
都市の結界が割られたのか?なら、今展開されている結界は……
ふと辺りを見回す。恐らく地下の筈だが陽光が差している……そして、今いる場所は都市の端に当たるらしく、この結界はここら一体のみに天使の被害を抑えるために展開された結界のようだ。…私は無意識的に、天使に向かって転移していたんだろうか。
…戻るより、このまま助太刀に行ったほうが良いだろうか?…行くとすれば全員が来るだろう。そしたら煤をブエルに見せる事になる……どうしよ。
「――ね―――なた―――ちょっと!話聞いてるの!?」
「…ああすまない、少し考え事をしていた。」
「……見た所ヴィグラントの人ね。見ての通り、今大天使が来てるの。関わる気が無いならさっさと避難しててくれる?」
「貴女は……魔術師か?」
「これでも一応局長よ。」
局長?…前にブエルが話していた魔術局…の事だろうか。魔術師が集まる組織…という事しか知らないな。
「…あなたまさか、魔術局のこと知らないの?」
「……あまり詳しくはないな、魔術師がいる…という程度しか知らない。」
「…まあいいや。で?関わる気が無いなら、さっさとここから離れてほしいんだけど?」
…ひとまず、今は離れたほうが良さそうだな。
「わかった。だが、どこに行けばいい?」
「…怜?今来れる?――そう、ヴィグラント。適当に道案内でもしといて。―――頼むわよ。」
通信?…ああ、普通に通信機器か。
「…これから私の仲間が来る。その人に着いて行けば、安全圏には行けるから、そしたら早いうちにここから出てって。」
「…な「関わる気がないんでしょ?だったら長居する必要もない。違う?」…わかった。」
…嫌われてるのか?……ああそういえば、ヴィグラントはあまり好かれてはいなかったな。
「…煩わせてしまったな。仲間を呼ぶ必要はない、私は私でここから出るよ。」
「……そう。出来るならそうしてくれると助かるわ。」
…煤がどの程度大天使に対して有効かを試したかったんだが、仕方ない。外のブエルに狙いを定めて……
「【星海を越えて】」
手は虚空を掴み、星が煌めいた。
…さっきの人、何だったんだろ。魔術が使えるヴィグラントはまあまあいるけど、あの人は初めて見る。…もっと早く会えてたらうちに誘ってたのに。
「怜?ごめん、勝手に帰った。」
『了解です。…何か嫌なことでも?』
「別に。そっちは特に変化ない?」
『変化なし。……前言撤回、大天使が第二形態に入りました。』
地面から光が飛び出る。…あの大天使は情報がある個体だから、あんまり心配することも無いか。
それにしても、さっきのヴィグラントの魔術……随分と練度が高かった。かなり使い込んでるのかな。
帰りは問題なく転移できた。やはり、あの結界が原因だったんだろう。
「戻った。」
「状況は?」
「大天使が襲撃中。まあ、私達が手出しするほどでも無さそうだ。」
「ならいいんだが…前みたいな事が起きないとも限らねえんだよなぁ…」
…ファディカの大隊長は唯だ。あの場には居なかったが、闇を吐き出した…という情報は他のアウトサイダーにも伝わっているだろう。条件不明で侵食してくる闇を吐き出す…なんて情報があるんだ、流石に警戒して事に当たっている…はずだ。
「…で、俺達はこのまま野宿か?」
「うーん……流石に、ちょっと離れようか。」
馬車は少し方向を変えて、走り出した。…心残りはあるが、私達が関わり合いになる通りは無い…だろう。
「…ま、ソーゲムの報告は今度でいいか。」
「もう一度飛んで、報告しに行こうか?」
「いや、いい。アイツは結構あちこちに行ってるからなぁ。今回も、「伝言残せ」って言われただけだしな。」
…随分と自由な人なんだな。
「自由すぎて周りを振り回すタイプだ、あの総隊長サマは。」
「それは面倒だな。」
ブエル曰く、こっちの方向に進むと海らしい。…いい気分転換になるといいな。




