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未定  作者: 大倉
はぐれ者の旅路
18/26

夢想家

セントラルを出て、二日が経過した。道中何度か天使に遭遇したものの、危なげなく撃破し、再度アンカーへ足を踏み入れた。


アンカーに着いてから、妙にブエルが…ピリピリ?している。それに、妙に馬車も遅い。…何かあったのか?


「ブエr「ちょっと待て」」




「…今はあいつに話しかけてやるな。」


ウァサゴに止められた。どうして?


「……今向かってる都市、"ソーゲム"は…あいつにとって因縁があるんだ。」

「好ましくない?」

「ああ。…ま、明日にはわかるだろ。依頼が飛んできたのも、ソーゲムの…内部事情が原因だからな。」


…内部事情?




次の日、アンカーを抜けた先に……霧がかかっていた。


「あそこだ。」


…この感じ、ファディカの認識阻害結界と同じ物か?注意が削がれるような感じが…


「…認識散逸効果を持つ霧……前と変わらず、か。」

「何か違うのか?」

「散逸の方が阻害より自然。それを出来るのは…先生の【夢追い人(セトラ・リーム)】だけ」

「…なあブエル、辛くなかったらでいいんだが…何があったのか、教えてくれたりはしないか?」


……暫く考えていたが、話してくれた。


=======(十年前)==============


「せんせー、急に何の用ですか?」


いつもと何も変わらい日常だった。


「凜ちゃんも呼ばずに私だけなんて、何かあったんです?」

「…奈義くん。先日のグリフ事典に関する事は知っているかい?」

「そりゃ知ってますよ。」


グリフ事典。説によると魔術師の始祖が書いた本、魔術局を崩壊させた元凶…魔術局が立ち上がった元凶。


「確か、新たに【祈】の魔術が解読されたんですっけ?」

「ああ。名を【輪廻の祈祷(オメガフレイア)】と言う。…細かな内容は知っているか?」

「…知らないです。」

「……彼らによると、完全に肉体が死に、魂すら死んでいたとしても蘇生する事が可能だ。」

「【蘇生の祈祷(シグマフレイア)】の上位互換…ですか。」


その時既に、死んだ人を蘇らせる術はあった。この話を聞いた時は、新たに発見された魔術の存在意義が、私にはよく分かっていなかった。


「だろうな。…現在、ソーゲムでそれを発動するための実験中だ。」

「ソーゲム…って、廃都市じゃないですか?」

「ああ、廃都市の方が都合が良い。」


「君も来なさい。」


…私は考えもしなかった。先生程の人が、魔術に何の抵抗もせず掛かると。


「私、あんまり興味ないんですけど。てか、魔術の研究だったら凜ちゃんの方が興味あるんじゃ?」

「……できれば無傷で来てほしかったんだが」


「【夢追い人(セトラ・リーム)】」


私が先生の声を聞いたのは、それが最後。




…次の記憶は、霧がかかった街の中。他にも人は居たけど、全員目が虚ろだった。多分、先生がなんかしたんだろう…と、思ってた。




違かった。皆、自分から、命を削ってた。




あの事典が、皆を洗脳してた。…それに気づいた時には、私も術中に居た。


間一髪だった。完全に洗脳されきる前に、私は私に、悪夢を見せた。




素敵な素敵な最高の(セトラ・ナイト )】…人のトラウマを掘り起こして、過剰に見せる、最悪の魔術。…でも、そのおかげで私は洗脳を振りほどいた。


=====================


「…その時、出力の調整をし損ねちゃってさ。それからずっと、ちょっとトラウマ気味でさ。」


「…その気持ち、どうやったら晴れる?」

「……どうだろうね。私にもわかんないや。」


そう言った彼女の顔は、いつもより、虚ろに見えた。




…月が顔を見せる頃、大体の調査が終わった。認識散逸効果を持つ霧…これを通ってソーゲムへ向かおうとしても、向こう側へ貫通する…ブエル曰く、内側からは普通に出られるそうだが、何せ十年も前だ。今でもそうなのかは微妙な所だな。


一応内側から出られはするとの事なので、内部へ向けた【星海を越えて(アストラルブリンク)】も試してみたが…結局、霧の向こう側へ突き抜けるばかりだった。正確に場所を指定してもこれなので、そもそも地上からは侵入ができないのだろう。


「…まあ、頼まれた事はやった。そろそろヘイヴンに向かうぞ。…ブエル、早めに寝ておけ。」

「……ウァサゴがそんな事言うなんて、珍しいね。」

「俺は身内には甘いぞ?」

「…そうだね。じゃ、おやすみ。」




………


「お前が寝れないのか…」

「悪いか?」

「いや?…そもそもお前、あまり寝る質でも無いか。」


……どうもウァサゴの表情が固い。何か不安な事でもあるのか?


…返事なし、か。普段だったら感づいてる筈…なんだが。


「…何か心配事でもあるのか?」

「……無い」

「嘘つけ、碌に感知もできてないだろ今。」


「…睨まなくてもいいだろ。」

「俺はもう寝る、お前は好きにしてろ」


…怒らせたか?




三人とも寝てしまった。……暇だし、色々試すか。


馬車から離れて、ソーゲムの方へ向かう。

今回試したいのは…黒く染まった、刀だ。ベリアルと戦う時に抜いたが…結局、何も試せなかったし、今のうちに何が変わったのか、何が変わってないのか…を、調べる。


まずは見た目……黒い。さっきから展開している【灯光(グレアト)】の光が反射していない。完全に光が吸収されている…のだろう。まあ、これは前にも試した事だ。


次に、刀としての性能……切れ味は問題なさそうだ。草刈りもできないなまくら(構築光)よりは切れる。


……切れはする。問題は無い…はずなんだが、妙に()()。しかも、振った刀を止めようとしても、止めるのに少々苦労する。多少力を籠めれば止められはするが、どうも振り回される。


…やはり、闇の侵食が原因か?だが、あの時はこんな効果は無かった……はずだ。少なくとも私は観測してない。…もう少し、硬い物でも試してみるか。


少し離れた所の森に入り、手ごろな木を見つけた。構えて、振り下ろ……


「…は?」


思わず声が出た。らしくないだろうが出た物はしょうがない。

なにせ、何の抵抗もなくそこそこの太さの木が()()()()に切断された。


もしかして、この刀が妙に軽いのは、抵抗が無い…からか?これなら、あの硬い大天使を即座に倒せたりするんだろうか。ただ、妙に魔力が食われてるな。何が原因だ?


…ふむ、少しでも振ると幾らか魔力を持っていかれるのか。

となると、常時発動型というよりは、"刀を動かす"事をトリガーに魔術のような物が発動している…と考えるのが妥当か。効果はなんだ?抵抗無視…いや、そんな魔術は無い…はずだ。…今度ブエルに聞いてみるか。


それとも、魔術じゃない何か……天使が使う能力にこういう力があって、それをこの刀が取り込んだ?無い話じゃないが…それだったらもっと、天使は厄介になっている気がする。


なら…「切断」とかか?これならまあ、納得はできる。抵抗が無いのも空気を切断しているから……というか、これ以上考えられるほどの知見が無い。一先ず、これに付与されている魔術?は「切断」と仮定する。


一々"刀"だと"これ"だの言うのもあれだし、今度名前でも付けるか。

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