ならず者
「【鎌風】」
"見えない"斬撃を弾く。相手の背後に【五つの星】を配置……見もせずに避けられた。…読まれてるな?
…座席が邪魔、天井が邪魔、壁が邪魔……障害物が多すぎる。碌に刀も振れない。
再度飛んできた見えない斬撃を辺りに浮かせている武器で弾く。【星海を越えて】で距離を詰めて接近戦に…向こうも同じく【星海を越えて】で車両の反対側へ移る。…閉所じゃないなら、まだやりようはあるんだが……
「戦うにしては、少し狭いと思わないか?」
「そういう場所を選びました。ヴィグラントでも、このような戦闘は不慣れでしょう?」
「……なら、少し手を加えさせて貰おう。【星は先へ】!」
私と反対側にいる彼の足元に穴が開く。…少し発動が遅い、実践向きじゃないな。
無事、セントラルの駅構内に飛べた。初めて発動したにしては悪くない。
「…ここも大概閉所では?」
「自由に刀が振れるなら、どこだろうと問題無い。」
格納庫から、"黒い"刀を取り出す。
「随分と黒いですね、塗装でもしたんですか?」
「そんな所だ。」
構内に人が居なかったのは幸いだな。巻き込まないで済む。
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鉄道がやってくる駅に着いた。吹き抜けになっていて、案外明るい…が、
「なんか……思っていたより小さいな。」
「そりゃあね。乗り換える訳でもなし、沢山人が来るわけでもないしね。」
時刻表を見ると…おや、もう来―――
「相変わらず速いねー」
――突風と共に、細長い列車がやってきた。あの速度でなんで減速できたんだ今。…見た感じ、六両編成か。
「…仮にも乗り物の速さじゃないだろ。」
「まあ、魔術使ってるからね。」
「じゃあ、魔術師が乗ってるのか?」
「いやいや。魔力回路を人工的に再現した「術式回路」ってのを使ってるの。高価だけどね。」
「ちなみにこの列車には何の魔術が使われてるんだ?」
「えーっと…駆動用の【雷】と速度用の【風】かな?私も詳しいわけじゃないから、もっと使ってるかも。」
「二人とも、乗るぞ。」
「はいは~い」
列車に乗り込んだ。…私達以外に乗客はいないようで、とても静かだ。
「…人の気配すらしないのか。」
「うろ覚えだが、確か無人運転だったはずだ。」
…地下を通るだけだから、事故の心配も無いんだろうか。
少し経ち、列車が走り出した。あの速度で走っているというのに、内部は案外快適だ。…これも魔術のおかげなんだろうか?私には分からないが。
…静かだ。超高速で走っているのに、とても静かだ。……ブエル達は寝てしまったか。セントラルに着くまで…20分程度か。暇だし…第六感の練習でもしてみるか?
車両を移動して、ウァサゴに教えてもらった事を思い出してみる。
『第六感は…元よりある物を増幅させる事が全てだ。感とか、膂力とかな。』
『一部の技には詠唱があるが、効果は…まあ、地味だな。』
『だが、本人の技量次第で幾らでも拡張できる。そこら辺は、お前の努力次第だ。』
『俺が教えられる事は…特に無いな。実戦の相手ぐらいか?』
『…あ?思考盗聴のやり方?これはな…教えられる物じゃない。それに大して便利でもないぞ。』
『まあ、お前は結構素質ある方だ。念のため、俺の感覚は教えとく。』
――ウァサゴ曰く、頭の回線を開いて、相手の周波数に合わせる……ウァサゴはこれが勝手に発動しているらしいが………?お、何かを感じている…ような気がする。これは…感情か?
この感情…ブエルやバルバトスのじゃない、これは…外から?
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それを察知した直後、こいつ等が乗り込んできた。他はただのアウターの様だったのでウァサゴ達に任せたが…こいつ、魔術師か?
「で?結局お前達は何なんだ?」
「…まあ、"ならず者"と言うところです。」
…?何かが…飛んでくる!
「襲撃のっ!理由は!?」
相手が撃ってきた…何かを避けつつ、弾く。…弾いたのに音がしない、魔術か?
「理由はですね…」
……思念が…流れ込んで……っ!?頭が…痛い…
「おや、逆流に耐性があるんですか。」
「…何した」
悪意…じゃない?…私を試した?
「常に回線を開くのは悪くないですが…関心はしません。」
「…ご親切にどうも」
「…あなたに敵意が無いのは何となくわかった。それに、この襲撃にもそれなりの理由があるのもわかった。だが、もっとやり方があるんじゃないのか?」
また、思念が流れ込んで……
「…なるほど、それじゃ駄目だったんだな。」
「理解して頂き何よりです。」
……神仰宗、私はまだ深く事情を知らないが、かなり根深い件の様だ。
「…お前な」
ウァサゴ?
「こんにちは。ウァサゴさん」
「さんは要らないだろ、"ベリアル"。…最近どうだ?」
「上々です。神仰宗の宣う"聖遺物"…まあ、殆どはガラクタですが…の強奪等が主ですね。」
「…言えない事も大概してるか?」
…また思念が……あれ、止まった?
「こいつに聞かせるな。」
「…回線の閉じ方ぐらい、教えたらどうですか?」
「………」
……ウァサゴが何かを言おうとして……いや違う、思念か。……だめだ、読み取れない。
「…お前限定か。」
「俺の送る思念は特別強いですしね。となると…彼女、あまり受信が得意では無いようですね。」
「お前の思念が強すぎるから、こいつの回線がざるになっただけだろ。」
「…なら、俺が責任もって閉じ方を教えます。」
「…開いた蛇口を閉めるように、机の隙間を埋めるように…そんなイメージでやってみてください。」
少々難解だが、言いたい事は分かった…気がする。……こうか?
「お見事です。…ウァサゴさん、もしかして感覚で教えました?」
「…だから、俺は教えるのに向いて無いと言ったぞ。」
……言ってたか?
「」
ウァサゴが柱に突っ伏した。…言ってなかったのか。少なくとも私には。
文明レベルは現代より部分的に先行ってる "部分的"に
ちょっと頻度落ちます