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未定  作者: 大倉
はぐれ者の旅路
14/26

始:刺す闇、後を引く光

鏡が割れた。……やっぱり、鏡の枠も破壊しないとか?もう一度刀を取り出―――なんだ?


『Error: Invert Failed』


…鏡の枠から、何か黒い…液体?が漏れ出し始めた。同時に、大天使の上にある輪が、光を失い…黒く変化していく。


『Inversion complete: 【Light】 into 【Dark】』


大天使が何かを言っているが、聞き取れない。…それよりまずいのはこの黒い液体だ。…地面に落ちる度、周囲の地表が闇に染まっていく。…止めないとか?


……!

どこからともなく、光と同じ挙動をする…闇が現れた。不意を突かれ……僅かながら、頬を掠めてしまった。痛みは無い…が、凄く不快な感じがする。しかもじわじわと侵食している?…顔に食らったのはまずったな。


「…この浸食、お前を倒せば止まるか?」


返事はない。…さっきまで少し喋ってただろ。…さっきの闇はどこから飛んで来…いや、わかった。この侵食された闇からか。…となると、私の侵食箇所からも飛ばせるのか……急ごう。


「あ」


ちょうど頬から闇が発射された。…こっちも曲がるのか。しかも曲線を描いて。…一応、光と違って弾けるな。相当な数が来なければ捌けそうだ。




――そもそも、どこを攻撃すればいいんだ?あの輪か?…転移して斬りかかる………だめだ、実体が無い。なら、鏡の縁…今現在、闇を吐き出し続けている元凶を叩くか。


剣を刺す…剣が砕けた。相当な強度だなこれ。…闇が私のほうにしか来ない以上、兎に角攻撃し続けるのは得策だろう。【五つの星(ステラ・カシオペヤ)】を全て縁に向ける。 その間私は……逃げ続けるか。


とは言え、どんどん闇の侵食範囲は広がっていく。つまり、攻撃が飛んでくる範囲も増え続ける訳で…!


「【星海を越えて(アストラルブリンク)】っ!!」


おまけに延々と追尾してくる。結果、じわじわと八方塞がりになりつつある。転移で逃げても、また四方八方を囲まれ……互いに防御手段が乏しいせいで、お互い一方的に攻撃し続けるばかりだ。既に浸食されている以上、持久戦に持ち込まれると、私のほうが不利だな。現に顔の侵食が広がり続けている。じきに全身に回るな……大方五分程度か?被弾すればさらに縮まるだろうな。




既に射出できる最高速度で剣を撃ち続けているんだが……一向に壊れる気配がない。……積んだか?これ。

…まずい、侵食が目に来た。……視界の右半分が黒く染まった。本当にまずい。


「…どうする?」


私の攻撃は一発当たりの火力はかなり低い。手数で誤魔化しているだけだ。…もっと強い攻撃で削りきらないと……なのに、これ以上手数は出せないし、これ以上強い攻撃もできない。…どうしようか。




……?ブエルか?気配のしたほうへ転移する。


「…ブエル。」

「渚ちゃん!その顔……大丈夫!?」

「私はいい。大天使を倒す手伝いをしてくれ。」

「…わかった、何したらいい?」

「出せる最大火力で大天使を叩いてくれ。私はブエルの準備が終わるまで時間を稼ぐ。」

「目安は……二分ぐらい。行ける?」

「任せろ」


渡りに船だ。




…渚ちゃん、本当に大丈夫かな…顔とか腕とかがそこらの地面みたいに黒ずんでたし……今気にしても仕方ない。頼まれた事を果たそう。


――魔力回路全開放、魔法陣展開。紅色の血管(魔力回路)が僅かに光を放つ。もしも外したら……そんな事にはならない!集中集中!


「――【火、現世を焼き払う】」

「――【Ignis, mundum praesentem comburit】」


私の声が、二重に聞こえる。この感じはあまり好きじゃないけど……しょうがない。


「【炎、常世を焼き払う】」

「【Flamma, aeternitatem comburit】」


魔法陣が紅く光る。炎というより、血みたいな色。気に食わない。


「【焔、虚無を焼き払う】」

「【Ardor, nihilum comburit】」


渚ちゃん、引き付けるのは頼むよ……




ブエルの方から、何か…魔力の高まり?を感じる。最大火力の準備をしているのだろう。…なら、私も応えるまでだ。闇の侵食は止まらないが……このまま踊り続ける程度、訳もない。


「どうした?そんな調子じゃ、いつまでたっても私を倒せないぞ?」


…反応無し。さっきまで少しは反応があったのに。……右手の感覚が無くなってきた。闇に覆われだしたからか?持っていた刀を左手に持ち替える。…飛ぶだけなら手は要らない。まだまだ舞えるさ。




「【この手は…火】」

「【Haec manus est …ignis】」


…ここら辺、魔力ごっそり持ってかれるからしんどいんだよね…出し惜しみは無し!持ってけ持ってけ!


「【この身は…炎】」

「【Hoc corpus est …flamma】」


……詠唱の内容とは違って、体が冷えてきてる。魔力が無くなってきてるからか。


「…【我が魂は…焔】」

「…【Anima mea est …ardor】」


目の前に、火球が出てきた。…でも、寒い。熱はあるはずなのに。


「【我が身を薪とし…神より火花を頂戴する】」

「【Me ipsum velut ligna offero… et a Deo scintillam accipio】」


…まだ、耐えて。




…闇の数が増している?……ああ、侵食が広がりすぎてるんだ。もう片手じゃ捌ききれなくなってきた。……既に何発か食らったな。もう少しだ、もう少し耐えよう…持ち堪えてくれよ、私。




「【なれば、この焔は神火なり】」

「【Ergo, hic ardor est ignis divinus】」


……あと少し、あと少し。渚ちゃん、もう少しだけ頑張って。私、もう少しだけ頑張って。


「【何者も阻むことなかれ】!」

「【Nihil eum prohibeat】!」


………魔法陣の光が強まってきた。…一応、詠唱は終わったけど……まだ足りない。


「――【祝福】をもって【厄災】を齎そう】!」

「――【Benedictione calamitatem afferam】!」


残ってた魔力が……全部持ってかれた。まだ、倒れないで。あと少しだけでいいから。




…ブエルの魔力が…消えた?いや違う、ブエルの体から消えただけか。ブエルの目の前にある、巨大な炎。あれだな?最大火力は。…大天使は、ブエルの方に攻撃をしない。何故かは知らないが…助かった。


…大天使をブエルの方へ誘導する。…後は頼むぞ、ブエル。




……渚ちゃんが、大天使をこっちに向けた。…これで、当てられる。


「――――【燎原を燃やす焔(フラマ・ディヴィナ)】!!」


………巨大な、火球は、大天使へ、飛んでった……けど、意識…が……




炎が、大天使へと飛んで行って……直撃した。それと同時に爆発が……これまずい


星海を越えて(アストラルブリンク)】でブエルの元へ…気絶している?……とにかく、ここから逃がす。【五つの星(ステラ・カシオペヤ)】でまた担架を作って、安全圏まで逃がす。


…爆風が来た。私は建物の影に隠れたお陰で、さほど熱を感じない。…硝子が飛び散るかと思っていたが、その前にここら一帯の硝子は割れ切っていたようだ。


爆風が止んだ……止めを刺さないと。


…凄まじい熱気が辺りを包む。大天使の残骸は………まだ残っているか。刀を強く握る。…消えていない以上、まだ死んでいないのだろう。……止めだ。


焼け焦げた鏡の縁に、刀を突き刺す。




!突き刺した場所から…闇が……まずい、呑まれ……

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