急:XII
援護とは言っても、他の奴らも手練れだ。…なら、私も私なりに大天使を探すのが一番だろう。
――【直感】、これで多少見つけやすくなるといいんだが。
…客観的に見てみると、なかなか凄い状態だな私。手に刀、傍らに剣二本、盾三つ、この状態であちこち走り回ってる…まあ、愉快な見た目ではあるな。しかも全部光ってるし。
……あのアウトサイダー、他と羽織の模様が違う?噂に聞く隊長格だろうか。…念の為、情報共有でもしておくか。
「おい、そこのアウトサイダー」
「………」
返事なし…人見知りか?
「…返答はしなくてもいい、話だけでも聞いてくれ。ここら一帯に、こういう…」
そこらにあったプリズムを掴む。
「…プリズムが撒かれてる。これが、さっきからの曲がる光の起点になってる。これを壊していけば、大天使の所在もわかる…はずだ。できれば協力して欲しい。」
…反応無しか。一応聞いてはくれたし、情報共有ぐらいはしてくれるだろう。
「…じゃあな。」
……フードを被っていて、顔が見えなかった。…なんだか、見覚えがあるような?…気のせいだろうが。
さっきの人…
「大隊長、次のご指示を。」
「…其処らに撒かれてるプリズムの破壊、大天使の所在地特定。くれぐれもヴィグラントは攻撃しないように。」
「了解しました。」
…なんか光ってたから天使かと思って警戒してたけど…まさか、知り合いだったとはね。向こうはわかってなさそうだったけど。
そうこうしている内に、かなりプリズムの数が減ってきた。アウトサイダーも積極的に破壊してくれているらしく、気づけば曲がる光も少なくなってきた……これで、光の起点もわかりやすくなる。
「ブエル、調子は?」
「あと三時間は大丈夫!」
なら…ウァサゴ達の方へ行くか。
「二人とも、大天使の場所はわかりそうか?」
「…錯綜していた光が纏まりだした。時期にわかる。」
二人ともかすり傷が増えているな。
「少し食らったか?」
「ま、全方向から攻撃が飛んできてたからなあ、流石に避け切るのは辛いぞ。」
「お前の方は被弾して無いのか。」
「ある程度は防げるからな。」
……光が消え出した。…少し先、何も無い所から光が放出されている……あそこだな?
「行くぞ、三つ数えたら攻撃だ。」
私は【五つの星】を、ウァサゴはナイフを、バルバトスは大剣を構える。
「3…2…1…始め!」
武器を飛ばす…当たった。二人の攻撃も当たった……が、弾かれた?
「…やっと姿を見せる気になったか。」
…三重の輪、三対の羽、二対の目…これらが宙に浮かぶ大きな鏡を囲んでいる。…これが、大天使か?
「…異形型か、あいつらが好みそうな奴だ。」
人型もいるのか。
「くれぐれも気を抜くなよ。…この大天使は、ここで倒す。」
……了解。
…これ、私達だけじゃ無理だ。
「バルバトス下がれ!お前が戦える相手じゃない!」
「くそ、足手まといか……すまん!」
最初にバルバトスが離脱した。四枚の翼から発射された大量の光線……これ、どうやら食らった際に体内に残留するらしく、バルバトスは掠っただけだが…明らかに動きが鈍った。曰く、「体の中で光が跳ね回っている」ような感覚だそうだ。
「食らってないか渚!?」
「私より自分の心配しろ!私は防御できる!」
…実際、私よりウァサゴの方がまずい。同時に五枚まで展開できる武器のうち四枚を盾に、そのうち三枚をウァサゴに回しているが、すぐ壊れて使い物にならない。残る一枠で攻撃してはいるが、悉く焼かれて届かない。なら近づいてみるか?
「【星海を越えて】!」
裂け目を通って、大天使の目の前に出た…瞬間、大天使の目が此方を向き、それと同時に大量のプリズムが目の前に現れた。そして、プリズムの中で光が乱反射して……爆ぜた。
「熱っつ!」
「渚!?」
…幸い、爆風が掠っただけで、光自体は食らわなかったようだ。再度【星海を越えて】で引く。
「二度と近づくな」
「…すまん」
…人手が足りない。今現在、大天使の攻撃全てがこちらに向いている状態で、攻撃を仕掛けるのはかなり無理がある。バルバトスが居れば、もう少し楽だったか?……いや、そうでも無いかな。
「…渚、その武器の発射、同時に幾つまでできる?」
「同時展開は五つまで、弾数は気にしなくていい。」
プリズムが煌めく。大天使が生成しているらしく、少しずつ破壊はしているがどんどん密度が上がっていく。
「……よし、盾全部回収して、お前にできる全力で大天使を叩け。」
「同時展開は五つまでと言ったぞ、大天使の手数はそれ以上だが、どうする気だ?」
「――言わずもがなだろ。」
…仕方ない、合わせるか。
格納庫の照準を全て大天使に、全方位から囲むようにセットする。
……発射!
様々な武器が大天使に向かって飛んでいく。…殆どが迎撃されているな。
…その間を縫って、ウァサゴが進んでいく。お前の【セトラ】で行けばいいんじゃないか?…あ、使った。大天使はまだウァサゴに気づいていないようだ。このまま私は攻撃を続ける。
剣、槍、鎌、斧、礫……大小様々な物が飛んでいく。…少しずつ在庫が無くなっていく。まだまだ余裕はあるから問題はないが。
お、ウァサゴがゼロ距離に…まずい!
「【星海を越えて】!」
「渚!?」
天使の目の一つが、明らかに異様な、虹色の光を発し始めた。
「【五つの星】!【結界光】!」
盾を五枚重ねる。その隙に結界を……
…光が発射されるとき、声にならない叫びを、聴いた気がした。それと同時に、虹色の光が放たれた。
くそっ……一撃で盾は全損したが、結界はまだ持つ!
「私を連れて引けるか!?」
「俺のは俺にしか使えん!」
「なら先に引け!」
攻撃を止ませたせいで、大天使の全ての翼と目が此方を向いている。恐らく数秒後には全ての攻撃が飛んでくるだろう。
「くそっ……」
――ウァサゴが引いた。……さて、どうするか……判断する時間も残って無いな……残りの一瞬で手が動かせる事を祈ろう。
虹を防いでいた結界に、ひびが入った。