破:鍛錬
…どうやら、【構築光】で構築した物体は、任意で操作ができるようだ。ブエルに似たような魔術があるかどうか聞いてみたが、結構あるらしい。炎系統や風系統にはそれがあるそうだが、光系統には無い…らしい。「まさか生成と操作が一緒くただと思わなかった」と言っていた。
…夜も明けたし、追加検証を始める。まず、操作が任意でできるかどうか。刀を生成…動くか?……お、動いた。かなり高い精度で動かせるな。次に、飛ばす速度……これは、外で試すか。
昨日の模擬戦場に来た。今回は的がある場所へ。…まずは、10m……刺さった。精度も悪くないし、速度もかなり早い。矢ぐらいはあるんじゃ?…刀より、もっといい形がありそうだ。
刀、両刃刀、大剣、礫、矢、槍、短刀……色々試してみた。どれも、それぞれ良い所がある。どれか一つに絞って使うより……全て織り交ぜて使おう。
粗方やりたい事の検証はできた。
その1.飛ばすのには魔力を消費する。速度に比例して消費量は増えるが、構築物の魔力ではなく使用者の魔力が消費される。
その2.最高速度はかなり速い。50m程度なら即着した。ただ、そこまで速度を上げると直進以外が不可になる。
その3.【星座に手を伸ばす】との併用が可能。開いておけばその中から延々と飛ばせる。
その4.事前に作った物でも飛ばせる
その5.というか事前に作った物の形を変えられる。失敗作の要件と形を変えてもう一度使えるわけだ。
……つまり、暇なときに武器を作り置きして、戦闘時に遠距離攻撃として飛ばす……なんていう事ができるわけだ。
「…中々、悪くない。」
いい遠距離攻撃じゃないか。…弱点だらけの欠陥品だが。
「んで、また試したい事が出来たから、俺ともう一回手合わせしたいと?」
もう一度、バルバトスに模擬戦を頼んでみた…が、
「…悪いな。ちと私用で出掛けるんだ。」
……ウァサゴもブエルもバルバトスも、用事が多すぎないか?一体何をしてるんだ?
…仕方がないので、郊外で練習する事にした。
「…行け!」
対人で試せないのは残念だが、単独でも練習はできる。今のうちに慣れておこう。事典によると、こういったいくつかの魔術を一つの魔術として使うのは『複合魔術』と言うそうだ。そして、複合魔術はそれ自体が一つの魔術として魔力回路に刻まれるそうなので、今の内に刻む事にした。
…名前でも、考えておくか。
そんな事をしながら、三日ほど経った夜、ウァサゴが帰ってきた。
「これまで、何してたんだ?」
「…念のための、準備だ。」
念のため?近々何かあるのか?
「…まあ、そんな所だ。場合によっては、お前にも手伝ってもらう。」
「何をするかは知らないが、任せろ。」
最近暇で暇で仕方がなかったんだ。楽しみにしておこう。
「…で、最近どこほっつき歩いてたわけ ?」
「……神仰宗の"予言の日"は明日だ。何も起こらない、と言い切れん以上、それなりの対策をしただけだ。」
「……あんた、まだ…」
「実際、アイツ等の予言はかなり当たる。信じないわけにもいくまい。」
「そういう訳だ。明日、もしも神…最低でも大天使が来たら、俺は迎え撃つ。お前らは…状況を見て好きにしろ。」
「……渚ちゃんはどうするの?」
「…一応、戦力として数えてる。まあ、あいつに来る気がないならそれはそれで構わん。」
「…明日の、いつよ。」
「満月について言及していた辺り、夜だと思うが…実際、いつ来るかは微妙な所だ。」
「俺は協力するが…ブエルはどうする?」
「まあ、手伝ってあげる。人が死ぬような事をスルー出来るほどではないわよ私。」
「…二人とも、ありがとう。」
「あんたがお礼言うの、初めて聞いた。」
「二度と言わん」
夜が明けた。