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弱者たちの舞踏

戦闘に備えて構えていたが、矢がどこから飛んできたのか、敵の気配も分からなかった。


唯一反応したのはカエルだった。


「五……いや、六体。右側、三十メートル先だ。」


彼の鼻が素早く動き、狐の耳がピンと立っていた。


ローランドが前に出て、目を細めて盾を握りしめる。


「突っ込んでこない…待っている。連携しているみたいだな。」


「ゴブリンか?」と俺が尋ねると、


「そうだ」リシアが黒い杖を握りしめながら答えた。「でも普通の奴じゃない…違う。」


茂みから現れたのは、明らかに異常なゴブリンたちだった。


典型的な緑色の肌をしたゴブリンが二体。

そのうちの一体は錆びた剣を持ち、構えもやや洗練されていた。

しかし最も目を引いたのは…弓を持った一体。


肌は灰色に近く、異様に背が高い。

その顔には…歪んだ笑み。


その目には、憎しみでも恐怖でもなかった。

あったのは…欲望。


背筋が凍るような、本能的な嫌悪。


その舌が汚れた牙の間からぬるりと覗く。

瞳が異様に光っていた。


(……こいつは、ただの敵じゃない。)


アイリーンとリシアを、彼は「人間」として見ていなかった。

"使えるもの"としか見ていない。

繁殖のための道具。支配と陵辱の対象。


…その目が、それを物語っていた。


「キィィヒヒヒヒィィィィ!」


唾を飛ばしながら、奴は矢を構える。


(ダメだ!)


ローランドが反応した。

盾を地面に叩きつけ、怒声をあげる。


「挑発!」


空気が揺れるような波動が走り、

全てのゴブリンの目が怒りで染まる。


そして…


弓ゴブリンが放った矢がローランドの盾に突き刺さった。


「くそっ……俺を見ろ!」


カエルの姿が消える。

正確には、見えなくなったのではなく、意識から外れた。


「ステルス発動~♪」


そして、飛んだ短剣がゴブリンの一体の顔に突き刺さる。


リシアが呪文を唱える。

風の精霊に語りかけるように。


「風の精霊よ、皆を守れ。」


風の球体が形成され、俺たちを包む防壁となった。


俺は…


ただ、大きな針を持って立ち尽くしていた。

アイリーンが足にしがみついていた。


「エステル…」


(俺には攻撃魔法も、剣術もない。でも…何もしないわけにはいかない。)


地面から石を拾い、全力で投げる。

狙うは、弓ゴブリンの肩。


石は空を裂き、奴の肩をかすめた。


「ギィッ!」


ダメージは軽微だったかもしれないが、奴の集中は崩れた。


(よし、妨害はできる!)


震えていたのは…怒り。


アイリーンを、あんな目で見やがって…!


「リシア、ローランドに支援魔法を! カエル、剣持ちを側面から狙え!」

ローランドの指示が飛ぶ。


こうして始まった。


弱者たちと…

それを貪ろうとする怪物たちとの戦いが。


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