裁縫と商売
太陽の光が商業地区の色とりどりの天幕を通して差し込んでいた。
歩くたびに漂う香りが変わる。焼きたてのパン、瑞々しい果物、スパイス、なめし革の匂い。
アイリーンの小さな手を引いて歩く。
彼女は夢の中を歩いているかのように、左右に目を輝かせていた。
思わず、口元が緩んだ。
「お金も手に入ったし……まずは布を探そうか。君の新しい服を作ってあげたいんだ。」
アイリーンは静かに頷いた。ボサボサの髪が目にかかり、ぶかぶかの服が身体を包んでいる。
そうだ……服が必要だ。すぐにでも。
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布を扱う露店をいくつか覗いた。色鮮やかな反物が並び、値段もまた派手だった。
指先で何枚かの布を触れて、感触を確かめる。
でも、探しているのはそれじゃない。
「布の切れ端……余り布、ありませんか?」
店主は物乞いを見るような目で俺を見た。
無言で頭を横に振り、路地の先を顎で示す。
「あそこの仕立て屋に行ってみな、坊主。」
礼を言い、そちらへ向かった。
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その途中、素材を売る冒険者の露店を見つけた。
スライムの魔核や、ゴブリンから取ったらしき石のような魔石が瓶詰めにされている。
【スライムの魔核:銅貨3枚】
【ゴブリンの魔核:銅貨5枚】
試しにそれぞれ3つずつ購入。合計24枚の銅貨。
妙な力を持った俺のスキルなら、何か使い道があるかもしれない。
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仕立て屋は派手さのない、落ち着いた店構えだった。
年配の女性が出迎えてくれる。
「何か探してるのかい?」
「はい。……切れ端や余り布。もしあれば、それを売ってほしいんです。」
少しだけ、訝しげな目。
でもアイリーンの姿を見て、柔らかく表情が緩む。
俺が妹の服を作りたいと説明すると、奥から小さな箱を持ってきてくれた。
色も材質もバラバラだが、明らかに質は高い。
「ほとんど売れ残りだけどね……銅貨60枚でどうだい?」
即決した。
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買い物を終え、俺たちは木陰の静かな場所を見つけた。
人々は通り過ぎるだけで、こちらに興味を示さない。ありがたいことだ。
アイリーンは果物の皮をかじりながら、安心しきった表情で座っていた。
「そろそろ、同じ服を着続けるのは限界だな。」
俺はスキルを起動した。
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【ユニークスキル《裁縫(EX)》】
切る
縫う
測る
「縫う」を選択。
まずはアイリーン用の服。動きやすく、涼しくて柔らかい素材。
それから下着を2組。
そして、自分用に軽装のシャツとズボンを1組。
指先が自然に動く。まるで昔から仕立て屋だったかのように。
作業が終わるたび、布が一瞬だけ淡く光る。
すべて完成品として認識されたのだ。
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【子供用リネン服】《レア度:一般》
→ 快適さと耐久性を兼ね備えた、通気性の良い衣服。
→ 効果:AGI+1
【基本下着 ×2】《レア度:一般》
→ 肌に優しい素材で作られた下着。防御力はないが快適。
→ 効果:かゆみ・炎症の発生確率を軽減
【布ミックスシャツ】《レア度:少し珍しい》
→ 様々な繊維を混ぜた実用的な上着。若干の魔力残留あり。
→ 効果:VIT+1
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すべて【編み込みインベントリ】へ収納する。
まだ布は残っていた。
アイリーンはこちらをじっと見ていた。
頬に果汁をつけたまま、キラキラした目で俺を見ていた。
俺は笑った。
「よし……服もお金も、しばらくは心配いらない。けど……」
(まだ終わりじゃない。次は、アイリーンの呪いを解く手段を――)
裁縫でできることは、きっともっとある。
そして俺は、それを証明してみせる。




