生き残りを賭けた戦い! (2)
地面には枯れ葉が敷き詰められていた。
一歩、一歩、慎重に足を運ぶ。
ほんの小さな音でも、命取りになるかもしれない。
標的は一体だけ。
残りの三体は、すでに洞窟へと入っていた。
(素早く……静かに……一撃で仕留める)
胸の鼓動が、耳の奥で響く。
ゴブリンはまだ石の音がした方向を見ていた。
背を向けている。
いまだ。
(今だ)
俺は駆け出した。
落ち葉の音を殺し、全身を前に集中させる。
呼吸すら止めて、全神経を集中した。
目標まで、あと一歩――
その瞬間、
ゴブリンが気配を察して振り返ろうとした。
だが、遅い。
左手で口を塞ぎ、
右手で――俺の“針”をその胸に突き刺した。
グシャリ――
濡れた果実を潰したような音が、わずかに響いた。
俺の針は、ゴブリンの胸を貫き、背中へと突き抜けた。
そのまま崩れ落ちるように、ゴブリンは地面へと倒れた。
呼吸を整えながら、針を静かに引き抜く。
(……不思議だ)
剣のような感覚ではなかった。
だけど、俺の体にはしっくりと馴染んでいた。
糸通し部分を握る感覚――
それはまるでもう一つの腕のようだった。
「……倒した」
小さな声が後ろから聞こえた。
イレーネだ。
茂みの陰から、俺の様子を心配そうに見ていた。
彼女は戦えない。
呪いのせいで、レベルもスキルも得られない。
それでも――
そばにいてくれる。
それだけで、俺は戦える。
「大丈夫、終わったよ」
そう静かに声をかけ、
針についた血を草で拭った。
ゴブリンの死体は、そこにあった。
叫びも、抵抗もなく――
ただ静かに。
(これは殺しじゃない……生き残るための選択だ)
イレーネは、何も言わずに俺を見ていた。
でも、その目には確かな信頼があった。
彼女が投げた石がなければ、
この一撃もなかった。
(それだけで、十分だ)
視線を洞窟の奥へ向ける。
暗く、湿っていて、
血と苔の匂いが微かに混ざる。
そこにはまだ――敵がいる。
でも、もう逃げない。
「行こう」
俺はそう呟いて、再び歩き出した。




