めくるめく目眩く
問われ、困惑した言葉から
「先生」
と、問われ
「何?」
と聞く
「歌にある、『めくるめく』って何?」
塾の生徒のひとりの問いに、答える事の必然性を感じないのだが
唐突な問いに戸惑う
何せ、数学の授業中だったので…
「歌の詞にあるんだ、『めくるめく』って」
と、彼が問う
3月の、卒業式の日
中学二年生のその子の問いに
はっきりと応えられないのも、モヤモヤしてしまい
「そうだね」
と、言いながら
席を立ち、問題集の片隅にあった国語辞典を手にする
『めくるめく』
の、ページまで、たどり着くしばらくの時間を2人で共有していく
ひらがなの下にある
『目眩く』
「…暗い所で、いきなり光を見るとクラクラするみたいな
そんな感じ?」
我が言うと、『うんうん』と
頷きながら
「…そんな感じ、ありますね」
と、その子は言う
『眩む』
という字を、多分『くらむ』と、
もう一度、辞書のページをめくる
暗さの中で、明るい光が突然入ると、クラクラする感じのこと
そして、
金銭や、欲に翻弄される意味も書かれていた
彼が知る
言葉としての『めくるめく』は、
その後に続けられる、肯定的な意味とかではなくて
『暗闇に、突然刺す光』への生理的な反射への共感
(その清廉さを寿ぐ)
彼は、音ではない『めくるめく』の、続きを歌う
彼と彼らの
その場所が、いつか思い返す時、良き場所であれば良いなと願う