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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

許されない愛ならば、許される国を作ればいいじゃないか聖女の話

作者: 山田 勝

 ☆☆☆聖女城建設現場


「オラ、働け!」

「ヒィ、もう、悪い事はしません!」

「この罪人が!誰でもそう言うわ!」



 ここはグルード王国の辺境、ここの地域の罪人は悪い事をしたら聖女城の建設にかり出される。


 ここの地域の人達は。


「母ちゃん!あれ、買って欲しー!」

「坊や、我が儘を言ったら聖女様がやってきて、聖女城の建設をやらされるわ」

「ヒィ」


 子供の戒めに使われるほどだ。


 この聖女城の城主は、高田熊子。ジョブ聖女である。



 ・・・我は熊子、聖女熊子である。

 人は愛故に苦しむ。許さざる愛ならば・・・


 クワッ!と目を開き。

 我は断言する。


「ならば!押し通すのみ!」



 この世界は長らく人族、魔族の2大勢力が大陸の覇を競っていたが、第三勢力、聖女派が誕生しつつあった。


 教えは。


「グヒヒヒィ!聖女様、救貧院は作りましたぜ。これで、道ばたで寝ている可哀想な人はおりません」


「うむ。ザックよ。ご苦労!」


「はい、ところで、孤児院への慰問は行かれないのですか?」

「我が行くと子供が泣くでな」

「そんな。不届き者はおりませんぜ!」

「うぬ。考えておこう」



 愛に満ちた国をつくろうとしていた。


 ここには魔族と人族の夫婦がいる。本来なら許されざる恋だ。しかし、この聖女領では認められている。


「クマコ様!今度結婚することになりました。祝福をお願いします」

「おお、人族と魔族のカップルか。良いぞ!」

「「有難うございます」」



 我、クマコはこの世界に来た8年前に記憶を遡ろう。

 我はピチピチの20歳だった・・・




 ☆☆☆8年前、ゴルド王国光の宮殿



「聖女様!召喚!」


 ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーー!


 召喚陣の真ん中に巨躯の女が頭から現れた!


「ヒィ、身長!180㎝は超えているぞ!」

「これが聖女様か?」

「うわ。音が轟いている!聖魔法が体から漏れている音だ」



 女は皆を睥睨し言葉を発した。



「ここはどこだぁ?オラは熊子だぁ。20歳のピチピチの木こりギャルだ。父ちゃんは山で武道の修行をしていただぁ。

 父ちゃんは有り体に言えば、無職だ!母ちゃんは逃げ出しただ!」


 クワッと目を開いて自己紹介をした!


「ほお、そうか。我は国王じゃ。うぬ。しばらくはここで訓練を受けよ・・・」

「分かっただ!従者はイケメンにしてくんろ」



 戦闘訓練では、すぐにこの国で並ぶものはいないほどになった。


「ヒィ、騎士団長が一撃で負けた!」


「騎士団長。礼を言うだ。聖女パンチが開眼しただ。ア~ハハハハ!」


 聖女パンチとは聖魔法の治癒の能力を生かし。

 拳が壊れる威力で打ち込み。拳が壊れると同時に治癒の魔法をかける撃ち方だ。


 三ヶ月ほど、この世界の令嬢教育を受けた。

 しかし、令嬢言葉の習得は困難。動作と言葉が合わない。

 文語調が教えられた。


 結果、王様と同じような話し方になり。

 更に威圧を与えることになる。


 熊子は陛下に命令をする。


「王よ。我に任務を与えよ」


「は、はい、聖女様!我が王子、フリッツ、勇者の託宣を受けて魔王討伐に出たのですが・・・魔王城に幽閉をされています。

 助け出して頂けませんか?」


「うぬ。肖像画を見せよ。・・・・ほお、イケメンだな。ククク、助け出したら我と結婚で良いのか?」


「はい、もちろんでございます」


「うぬ。では旅立とうぞ!」



 熊子は、ギルドに登録し。盗賊討伐をして、たちまち金と仲間を集めることに成功した。


 山車のような馬車をあつらえ。捕らえた盗賊達に引っ張らせた。

 手下になった冒険者たちが先触れを出す。



「オラオラ!クマコ様のお通りだ!」

「クマコ様はこれから魔王討伐に出征じゃ!」


 時々、盗賊の残党が襲ってくるが。


「化け物聖女め!死ね!」


「フン!聖女パンチ!」


「グギャアアアアーーーーー」


 一撃で屠られる始末だ。


 やがて、旅して。魔王城に到達した。




 ☆☆☆魔王城前の草原


 魔王は女だった。角が二本生え。褐色の肌である。革鎧に細い体から長い手足が伸びる。


「ほお~、よく来たな」


「うぬ。王子を返してもらおう」


「それは断る。王子を返して欲しければ妾を倒せ!」



 ピキン!


 数秒の沈黙の後、戦いが始まった。


「飛翔魔法!あんたは空を飛べないわね!」

「うぬ。こざかしい。飛べないなら飛ばして見せよう聖女パンチだ。地面に聖女パンチを放つぞ!フム!」

「何!パンチの反動で空を飛んだだと!」



 戦いは三日三晩続いた。

 魔王は秘術を使うが、全て、熊子の聖女パンチで粉砕された。


「地津波!」


「うぬ。聖女パンチだ!」

 熊子は土津波にパンチを放ち。土津波は逆流する結果になった。

 土津波が魔王を襲う。


「キャア!」

「すきあり!聖女ワンツー!からのスリーパンチ!」


 ボコボコ!


 魔王の革鎧は粉砕された。

 息絶え絶えに地面に仰向けで倒れた。


「はあ、はあ、はあ、妾は負けていない。死ぬまで負けではない!」

「うぬ。良い心がけじゃ。なら、渾身の一撃をくれてやろうぞ!」


 その時、一人の男が飛び込んできた。



「聖女様やめて下さい!」

 魔王の前に立ち盾になった人族の男は。


「フリッツ殿下?何故じゃ。何故、魔王を庇う。幽閉されていたのではなかったのか?」



「ち、違う。魔王城に来てマリーンと出会った瞬間に恋に落ちたのだ・・・勇者と魔王、許されざる恋、魔族にですら、受け入れられなくて、幽閉という形になったのだ」


「フリッツ」

「マリーン!」


 ・・・うぬ。そういう事であったか?何故人は愛故に苦しまなければならないのか?!


「しかし、勝負だ。そこをどけ。勇者よ」

「どくものか!」


「ならば聖女波を放つ!」


 聖女波、聖魔法を丸めて投げる技である。投射兵器として使う技である。


「聖女――――――――!」

 両手の掌から放たれた聖魔法ボールは王子の遙か上を飛んだ。



 ドカーーーーン!


 後方にそびえ立っていた魔王城が崩落する威力であった。


 クワ!


「うぬ。魔王城は無くなった故に我の勝ちじゃ。二人ともどこかに行くが良い!」


「「はい!」」



 その後、熊子は、ドラゴンと戦い。


「グル、グルルルルルルル」(中々やるな。友達になってやる)

「うぬ。グルちゃんと名付けようぞ」


 魔族達と戦い。


「オラ、オラ、聖女様のお通りだ!」


 3年で魔族領を統一し。自ら魔王になった。


 まずやった事は城の復興だ。


「過去最大の魔王城を建てる!聖女魔王城だ!」


 1年で禍々しい魔王城が完成し。ここで自ら魔王を宣言した。



「我は魔王ぞ!勇者の挑戦を受ける!!」



 しかし、やってきたのは。



「オラオラ、俺は召喚勇者結城様だ。何だ。魔王って日本の女じゃねえか?楽勝だ!」



「聖女デコピン!」

「ウガアアアアーーーー」


 デコピンで返り討ちになる始末だ。



 つまらぬ。つまらぬ。つまらぬぞ。

 イケメン食いてえ


 戦った後に恋が芽生える事はないのか?


 苦しい我はこんなに恋に恋をしているのに。

 我は乙女だ。



「聖女魔王様!勇者が来ました!」


「うぬ。通せ!」



「俺は、グルード王国、辺境の村出身!ライト!魔王を討伐しに来た!」


「うぬは何歳だ」

「18歳!」


 うぬ。我は26歳。スパダリ8歳差説を逆解釈するとまだギリOKか。


「我のパンツ・・・見るか?」

「・・・見ません!からかうのはやめて下さい!」


 キュン!


「・・・我の負けじゃ。さあ、我に欲望の限りを尽くすが良い!」

「真剣な勝負を所望します」


「うぬ。なら、聖女デコピンだ!」

「グギャアアアーーーー、まだ、まだ!」



「うぬ。お主鼻血が出ているぞ」

「構うものか。魔王を討伐して、報奨金をもらって村を助けるんだ!」


「しかし、真剣にやっては、お主死ぬぞ」

「・・・グスン、でも、やらねばならない」



「聖女!キッス!」

「ウグ、ウグ・・・・」


 ガクン!


 勇者は我の腕の中で力を失った。口を塞ぎ窒息させ。気絶させたのだ。


「このまま閨に連れ込んでも良いが・・・それは愛ではない」



 その後、熊子は、魔族の中で1番の剣士を呼び。


「オーガよ。彼に剣を教えてやってくれ。我を倒すぐらいにまでさせよ」

「えっ!」


 魔族で1番の軍師を呼び。


「骸骨博士よ。彼に知識を教えてやってくれ。我を出す抜くくらいに賢くさせよ」

「はあっ?」

 1年、2年経過し、ライトは20歳になった。

 学んでいるうちに魔族にも善い人悪い人がいる。人族と同じだと考えるようになった。



「魔王様、私は考え直しました。魔王討伐はやめます」

「・・・うぬ。それでは村は助からないではないか?」


「知っています。商人を通して援助してくれている事を、人族と魔族、共存できないか道を探します」


「しかし・・・うぬ」


 男が決めた事だ。それも良かろう。


「実は一端村に帰りたいのです。許嫁の幼なじみがいるのです」

「何?!」



 ライトはドラゴンに乗って帰った。


 熊子は涙の聖女波を天空に撃った。


「聖女~~~波!グスン、グスン!」



 ・・・・・



「グル、グルルルルルル~~~」


「うむ。グルちゃんよ。ライトは帰ったか?」


「グル、グル」(それがさ)


 ・・・幼なじみが、村の金持ちの息子と結婚してさ。

 ライトに罪を着せているんだよ。

 ライトは魔族に通じているってさ。

 俺、ドラゴンだから村の近くで降ろした。

 空から見ていたから確かだぜ。行くよな?!


「何?」


「グルルルルルル~~~」(俺、まだ、飛べるぜ!)

「グルちゃん。頼む。ライトの村まで!」

「グル!」(あいよ)



 ・・・・・



 ☆村


 女神教会の司祭が命じ、ライトを立木にしばり。下には薪が山と積まれていた。

 即決裁判即火刑の手順だ。

 魔族に通じる。それだけで重罪だ。


 司祭は判決を述べる。



「勇者でありながら、魔王城で贅沢に暮らしていた。よって、火あぶりといたす!」


「火をくべよ」

「反逆勇者が!」



 ・・・ああ、俺は人族の事は何も知らなかった。


「キャア、ライト、私、グズリー様と幸せになるから安心してね」

「ギャハハハハ、こいつ、孤児のくせに勇者の託宣を受けやがって生意気といつも思っていた!」


 こんな時でも人を傷つけてはいけない教えが体に染みついている。



「火をつけろ!」


 その時、ドラゴンの咆哮が村に響いた。


【グルルルルルルルルルルル~~~~!】


 そして、ドラゴンの背中からクマコは飛び降りた。


 ドン!


「ヒィ、お前は・・・聖女?」


 熊子は聖女の服を来ている。一目で司祭より上だと確認できた。


「我は魔王聖女!聖女パンチ!」

「グアアアーーー!」


 司祭をぶっ飛ばし。村人達に命令をした。


「うぬら。家を出よ!」

「「「ヒィ、聖女様!」」」

「そんな無体なことを・・」


「グルちゃんよ、火をぺぺッとやってくれ」

「グル~」(あいよ)


 村に火を放ち。


「聖女~~~波!」


 村に爆撃をする執拗さ。

 彼女は怒っている。

 たぎっている。



「ライト~!やっぱり、グズリーの屋敷、吹き飛んだから結婚してあげる」

「えっ」


「良かったな。ライトよ」


 恋は秘めるもの。好きなおとこが幸せになるのも一興よ。


「やだよ。元々は婚約解消に来たんだよ。お前なんか婚約破棄だ!」

「ヒィ、そんなー」


 何!ライトが婚約破棄をしたぞ。何故だ。


「俺、クマコ様に惚れた!結婚して下さい!ファーストキスの責任、取ってくれるよね」



「なぬーーーー!」



 我はたぎっている。しかし、魔王と勇者の恋は許されざるものではないか?


「グルちゃんよ。我は魔王を辞す。後継者はオーガの族長にしてくれ。伝言をたのめないか?」


「グル」(わかった)


 魔王と勇者が許されざる恋ならば!


 クワッ!


「我が国を作ればいいのだーーー!」



 そして、我は冒険者時代からの腹心、ザックを将にして王国軍と戦う。

 独立戦争を仕掛けた。


 ライトは治政だ。

 我は聖女王として君臨する。


 手始めに、新居、聖女城を作る!


 罪人どもを集めて、城を作るぞ!


「クマコ」

「おお、ダーリンよ。どうした」


「ザックから聞きました。孤児院に行きましょう。子供達が待っています。さあ」


「う・・ぬ」


 手を差し出すではないか?


「ライトよ」

「何?クマコ」


【愛しているぞ!愛しているぞ!愛しているぞ!】


「はは、知っているよ」



 後に、フリッツとマリーンも合流し。

 人族にも魔族にも通じる聖女魔王のクマコの国は各国に必要悪だと認められた。

 両勢力の中立地帯として長らく国も命脈を保つ。


 国の存在意義がなくなるのは、人族と魔族が真に共存が出来た時だと云われている。




最後までお読み頂き有難うございました。

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後の聖女大帝である。「愛だ」
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