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守るだなんて烏滸がましい

作者:


ある日、無毛族を拾った。

かつては地上を支配していた種族だったのらしいが我々獣人の誕生により数を減らし力の弱さから愛玩動物として飼われるようになっていた。

言語が違うためか言葉を交わすことは出来ないが愛玩動物の中では頭が良く簡単な意思疎通をすることができることから人気の高さを誇っていた。しかし飼育の難しく飼うにはかなり規制が厳しい種族でもあった。それは体の弱さだ、他の愛玩動物と異なり酷く脆いのが特徴なのだ。それゆえに飼育をするためだけに講座での単位取得が必須条件となっている。

そんな希少で人気かつ高級な無毛族が無防備に夜の公園に立っていた。少し無毛族には大きいベンチを眺めてぼんやりしているかと思うとあたりを見回し私を見つけ小さな歩幅で詰め寄ってくる。

何かを訴えているが私には理解できない。どうしたらいいか分からず体が強張る。触るとこすら出来ずに立ちすくんでいると無毛族の方から触れてくる、スーツの隙間から覗く毛を確かめるように。

満足したのか触れていた手を離すと悩むような仕草を見せる。よく映像で見た光景に感動していると手を差し出してくる、幼い子どもが手を繋ぐことを催促するように。

私は何となく手を握る、自分よりも遥かに小さく柔らかい存在に驚きを隠さない。知っていたつもりだったが本物は違うと感動する。

無毛族がどうして手を繋いだのか分からず答えを求めるように顔を見つめると笑みを浮かべ私の手を引き公園の外まで連れて行かれる、道路に出ると指で矢印を作り尋ねるように左右を指し示す。


「え!家に連れて行けってこと」


思わず言葉が通じないと分かっていても声に出してしまった。私の反応から察したのかいい笑顔で頷く、あまりにも可愛らしい行動に連れていきたいのはやまやまだが私は迷っていた。

無毛族のことを考えるのであれば間違いなく管理局に連れて行くべきだと、それに講習を受けていない私は連れ帰ったことが知られれば保護法により罪に問われる可能性もある。

唸り頭を抱えていると痺れを切らしたのか無毛族は私の手を離し歩き始める、慌てて行手を阻もうとしても私を避け進んでいく。頭の中に最悪の状況が掠める、管理局も終業していることを言い訳にして私は折れた。一日だけだと、自分に言い聞かせて。


それから怒涛の日々だった。翌日、管理局に連れて行ったはいいが登録番号のない個体だということが判明した。存在しないと思われていた野生種に建物内が騒がしくなる、当然の如く飼育権のない私が特殊個体を保護できるはずもなく引き渡す予定だったがそれを本人が拒否をしたのだ。無毛族とは思えない身体能力で逃げ回り私の腹にしがみ付き離そうとはしない、私は怪我をさせないよう引き剥がそうとしたができなかった。

結果として強制的な講習が決まった、管理局としても無理矢理保護するよりはいいだろうと判断したようだ。それから何の権力が働いたかわからないが仕事を強制的に休まされ缶詰状態で無毛族と共に講習に励むこととなった。

講習を受ける中でいくつか気づく点が存在した。私はあまり気にしていなかったがこの無毛族はひどく美しい容姿をしていることと他の個体と異なり知性と身体能力に優れ自立心が強いことに。

講習の休憩中にまるで花に吸い寄せられる虫のように講習者や無毛族が近寄ってくるのだ、当の本人は興味なさげに子供用の絵本を読み過ごしていたが。

何よりも困ったのが講習内容が全く当てにならないことだった、食事や生活の介助を必要だと言っていたのにこの無毛族は準備さえ行えば全てをこなすのだ。手が掛からないと喜べばいいのか掛からなすぎて寂しいと思えばいいのか分からなくなってしまう。

あまり役に立たない講習を受け、最終日に与えられた課題は名付けだった。

相変わらず講習に興味を向けることなく絵本を読み続ける、私は名付けのために食い入るように無毛族を見つめる。無毛族が私の視線に気がついたのか顔を上げると目が合った。


「ステラ」


思わず言葉が出る。かつて無毛族が扱っていた言葉で星を示す言葉だと学んだ、瞳の中に私は星を見た。

無事に認定を受けた私は飼育スターターキットを受け取りステラと共に自宅へと帰った。

それからというもの想像していた以上に手の掛からないステラとの暮らしは快適だった。読書をして過ごし、稀にテレビを見ては言葉を真似するように発音をしたりと基本的にほとんどの時間を勉学に費やし。不意に体を伸ばしたかと思うと筋トレや走り込み、見たこともない形でパンチやキックを繰り出して体を鍛えていたが決して部屋を汚したり、物を壊すことは無かった。休日は遊ぶために簡単なボードゲームを出せばすぐにルールを理解し私といい勝負をするほどだった。

気がつけばステラと一月も過ごしていた。

あまり外に出ることを好まないのか講習以来、一度も外に出ようとしなかったこともあり比較的穏やかな日々であったがとうとうやってきてしまった、定期検診の日が。

私が準備をしている中でどうしても行きたくないのかベッドに引きこもっていたが無毛族の識別書を見せれば面倒くさそうにゆっくりと無毛族用の小さなクローゼットから服を取り出し着替え身支度を整えていく。

こういた行動を見て改めて賢い子だと思う、個人的にテレビやネットで調べてみたがどの無毛族も飼い主に従順で簡単な意思疎通が取れるが食事や排泄以外は出来ない存在だった。裸でいることを好まないが自らの手で服を着ることは出来ず、汚れることを嫌うが洗い体を整えることも出来ない、外を好むが体が弱いため一人で出ることも出来ないだから守らないといけない存在だと思っていたがステラと過ごす中で気がついたのだ無毛族をここまで弱く哀れな存在へと変えたのは私たち獣人族なのではないかと、今では確かめる術はないがそう思わずにはいられなかった。


ぼんやりと思考に耽っていると袖が引かれる、どうやらステラの準備が終わったようだ。相変わらず動きやすい軽装が好みらしいが今回は珍しく顔を隠す様に帽子を深く被っていた。何となく事情を察する、以前の講習の反応を思い出せばステラが顔を隠したくなる気持ちはわからなくもない。興味はないが面倒は嫌だというところだろう。

私はステラを腕に抱き、家を出る。希少な無毛族ということもあり視線を感じるが何も動じることのないステラの姿を見て私の心が落ち着いていく、優しく人差し指で頬を撫でれば細く短い腕を目一杯使って抱きしめてくる。あまりの可愛さに心臓が締め付けられる。ステラは柔らかい私の毛がお気に入りらしく家に居る時には何度も腕や尻尾に抱きついてきていた、普段は手入れが大変で辟易するがこの時ばかりは長毛であることに感謝をしたものだ。

ステラの可愛さを堪能しているうちに管理局に着いていた、入り口を潜れば待ち構えていた管理員たちの無理矢理引き剥がされ連れて行かれてしまう。診察室に立ち入ることを禁止された私は落ち着かない気持ちのまま診察室前のソファに座る。

備え付けられた時計の針を見つめ早く終わらないものかと考えていると中から大きな音が響いてくる、たまらず飛び込むと診察台の上に縛り付けられている医者と腰を抜かす看護師たちを見下すように医者を縛り付けたロープを強く引き頭を足で踏みつけるステラがそこにいた。

やはり守らないといけないだなんで烏滸がましい考えなのかもしれない。

獣人の名前や双方の性別、今後については希望があった場合のみ、書いていく予定です


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