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葬式で感じた違和感がどうしても消えなかった。僕はあの遺体が本当に小鳥遊のものであったのか、疑念を抱いていた。確かに遺体は小鳥遊に似ていたし、10年の月日が経過しているため、彼女の姿が変わっていても不思議ではない。しかし、その違和感は単なる変化では説明がつかないものだった。
遺体に対して感じた不自然な感覚が、心の奥深くでずっと引っかかっていた。彼女の表情が、あの元気だった頃の笑顔とはまるで違っていた。あれは本物の小鳥遊の笑顔ではない、むしろそれが「笑顔」と呼ばれるべきものかどうかも疑わしいほどだった。
この違和感から逃れられずにいるうちに、ある考えが浮かんできた。もしかして、小鳥遊は本当に死んでいなかったのではないか、と。もし彼女が生きているとしたら、なぜあのような遺体が存在したのか。誰かが小鳥遊の名前を使って、何か別の目的でその遺体を遺族に見せたのかもしれない。
居ても立っても居られなくなった僕は、有給休暇を取得し、小鳥遊について調査する決意を固めた。
まず最初に向かったのは、小鳥遊と最後に会った公園である。桜の花びらが舞い散る中、10年ぶりに訪れたその公園は、昔の面影を留めていた。ただし、遊具は錆び付いており、わずかに時の流れを感じさせる古びた印象を与えていた。
「ここに来ると、あの苦い記憶が甦るな。」僕はふと、あの日の出来事を思い起こした。
その後、僕は小鳥遊と共に歩いた道を辿り始めた。あの日、僕たちが別れた場所、つまり小鳥遊と過ごした最後の場所である。迷うことなく、小鳥遊が帰途についた方向へと進んでいった。
「何も変わっていないな。」
当然のことだ。道を歩いたところで、何か有益な手掛かりが見つかるとは思っていなかった。仮に手掛かりが存在していれば、小鳥遊はとっくに発見されていたはずだから。
次に、小鳥遊の行方についての手がかりを見つけるため、過去に小鳥遊と関わりがあった場所や人々を訪れる決意を固めた。
まず最初に向かったのは、小鳥遊が通っていた学校の元教室だった。学校の事務所で、当時の記録や小鳥遊の友人の連絡先を尋ねたが、あいにく誰も有用な情報を持っていなかった。小鳥遊の卒業アルバムやクラスメートの連絡先も確認したが、小鳥遊の消失については何も知らないとのことだった。
次に、小鳥遊の家を訪れた。彼女の両親とは数回の面識があったが、その日は少し違っていた。両親は深い悲しみに包まれており、彼女の最後の日々については多くを語らなかった。僕は彼女の仏壇の前で手をあわし、足早にその場を去ることにした。
その後、僕は小鳥遊が好きだったカフェに立ち寄ることにした。彼女と一緒に過ごした場所であり、彼女の記憶がよみがえる場所でもある。カフェの店員に彼女のことを尋ねると、彼女が常連客だったことを覚えていると言われた。しかし、その店員も最近の彼女の様子や行方については何も知らなかった。
次に、彼女の近くに住んでいたという友人、立花あかねの家を訪ねることにした。彼女の家に着くと、立花は驚いた様子で迎えてくれた。
「伊達・・・くん?どうしてここに?」
「小鳥遊のことを知りたくて。彼女がいなくなった理由や、最後に会った場所について何か覚えていないかと思って。」
立花はしばらく考え込み、「実は、小鳥がいなくなる前に何度か変わった様子を見せていたんだ。よくない兆候というか、何か心配なことがあったように感じた。でも、具体的に何かを言われたわけではないから、詳しいことはわからない。」と話してくれた。
その言葉に僕はますます不安を感じた。小鳥遊がいなくなる前に何か問題を抱えていたのなら、その詳細を知りたかった。彼女の行方不明の原因を解明するためには、彼女がどんな状況にあったのかを理解することが必要だと感じた。
それから数週間、僕はあらゆる情報を集め続けたが、決定的な手掛かりは見つからなかった。しかし、ある日、突然の知らせが僕の元に届いた。それは、小鳥遊が遺体として発見された場所に関連する、今まで知らなかった事実についての情報だった。
その知らせによれば、発見された遺体が見つかった場所には、以前から不穏な噂が立っていたという。近隣の住民からは、何か奇妙な出来事があったと聞かされていたらしい。僕はその情報を手がかりに、その場所に再度訪れる決意を固めた。