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5-12 ごーれむますたー

「むかしむかし、あるところに──」

「ん? 何じゃ?」


 その木人形(ウッドゴーレム)は他の初級魔法や中級魔法のゴーレムとは違い、無詠唱では生み出せない。

 (ミドリ)が発動に必要な呪文としているのはその木人形(ウッドゴーレム)を生み出すに当たって参考にした異世界の物語の一文。

 それは(ミドリ)がこれまでに聞いた話の中でも特に好きなものであった。


「──おじいさんとおばあさんはそのおとこのこをこうなづけました」


 (ミドリ)の魔力が込められた植物の種は例のごとく急成長し、巨大な剣士の姿をした木人形(ウッドゴーレム)へと変わる。そして、その傍らには犬型、猿型、鳥型の三体の動物型の木人形(ウッドゴーレム)も生み出されていた。


「──ももたろう」


 これが人形使い(ゴーレムマスター)たる(ミドリ)の切り札である【ももたろう】である。


「ほほう、今までのゴーレムとは魔力量が桁違いじゃな。小童(こわっぱ)、本気を出しておらんかったな?」

「……これはつかれるからあまりつかいたくない……でも、ここからはフィオもほんきでいく」


 剣士型の木人形(ウッドゴーレム)とそのお供の三体の木人形(ウッドゴーレム)。計四体を同時に操るというのは今までとそう変わりはないが、タルト・タタンが見抜いたようにその魔力量は今までの木人形(ウッドゴーレム)よりも遥かに大きい。それは強力であると同時に魔力消費も今まで以上に激しいものであった。


(ミドリ)にここまでさせるなんてなかなかよ》

《そうなの?》

《基本的に燃費のいい魔法で魔力を温存して、めったに本気は出さないからね》

(ミドリ)ちゃんは省エネ主義だからね~》


 そんな(ミドリ)が本気を出さざるを得ないほどにラリゴ・リラゴは強大な敵であるということ。

 そして、(ミドリ)の本気はそう長くは持たない。強力な木人形(ウッドゴーレム)ほど維持、操作、攻撃、補助にそれぞれ多くの魔力を使うため、今の(ミドリ)に長期戦の考えはなかった。


「エリスちゃん、ねこちゃん……いっきにしとめる……よ」

「わかった、おばあちゃん!」

「了解です、(ミドリ)さん!」

「……おばあちゃんじゃないけど……いまはまあいいや」


 ここからは短期決戦。それぞれの持てる限りの全力をラリゴ・リラゴにぶつけることにする。

 まず動いたのは(ミドリ)(ミドリ)は四体の木人形(ウッドゴーレム)をバラバラに操作し、ラリゴ・リラゴの四方から一気に攻撃を仕掛ける。


「タタン! タタン! タタン!!」


 もちろん強い木人形(ウッドゴーレム)を使う程度で倒せるラリゴ・リラゴではない。ラリゴ・リラゴは鋼の腕で大地を揺らし、自身の周囲に土の槍を発生させる。


「……ざんねん。とんでるやつにはきかない」


 四体のゴーレムのうち鳥型のものには大地の槍は通用しない。


 が──


「残念なのはそっちじゃ。ラリゴ・リラゴに与えた魔力は土と鋼。ドワーフの技術にはこんな面白いものもあるんじゃよ」


 タルト・タタンがニヤニヤ笑うと同時に、ラリゴ・リラゴは両の鋼の腕を身体から切り離し、鳥型ゴーレムへと飛ばす。


《ロケットパンチ!?》

《あんな真似も出来るんか!?》

《……だが》


 ラリゴ・リラゴの鉄拳により、鳥型ゴーレムは吹き飛ばされた。しかし、その攻撃を繰り出している間、ラリゴ・リラゴには腕がない状態である。

 それを見逃さなかったのはエリスであった。


「ウッド・アロー!!」


 エリスが放ったのは初級魔法であるウッド・アロー。先ほどのタルト・タタンのアドバイスを素直に受け止め、エリスは普通のウッド・アローにエレメンタル・アローと同じだけの魔力を込めて一矢ずつ集中して放っていた。


「タタンッ!?」


 エリスの渾身の一射はラリゴ・リラゴが飛ばした鋼の腕を撃ち貫く。


「ほう?」


 それにはタルト・タタンも多少驚きはしたものの、全く動揺はしておらず、逆に感心しながらその様子を見守っていた。


「ねこちゃん……つぎできめる……よ」

「は、はいっ!」


 (ミドリ)はクゥに合図を送ると、出し惜しは無しとばかりに追加で魔法を発動させる。


《じゃっくとまめのき……まっちうりのしょうじょ……》

 

 (ミドリ)が発動させた魔法は二つ。

 一つは木人形(ウッドゴーレム)から蔓を出し、相手を拘束するじゃっくとまめのき。

 そして、もう一つは木人形(ウッドゴーレム)を燃やして相手に幻覚を見せる【まっちうりのしょうじょ】。


 (ミドリ)はその二つの魔法をまだ動ける犬型と猿型の二体のゴーレムを媒介に使って発動させる。


 蔓がラリゴ・リラゴの足に絡みついてその動きを一瞬止め、炎がラリゴ・リラゴに僅かな幻覚を見せる。


 足止めは一瞬でよかった。


「ねこちゃん」

「火よ、我が剣に宿れ!」


 (ミドリ)の合図でクゥは聖剣エクスカリバーに再度火の魔力を込める。

 そして、(ミドリ)も剣士型の木人形(ウッドゴーレム)を再起動させて、クゥと同時に攻撃を仕掛けていく。

 ただし、同時といっても攻撃するタイミングは完全に同時では意味がない。まずは(ミドリ)がダメージを与えてからでないと、クゥがトドメを刺せないのである。


「ひっさつ……おにごろし……」


 剣士型木人形(ウッドゴーレム)の木刀による両断。刀には(ミドリ)の魔力がこれでもかと込められており、今までとは違ってラリゴ・リラゴに大きなダメージを与えるのであった。


 だが、それでもまだ足りない。


 このダメージではクゥがトドメを刺しきれないと即座に判断した(ミドリ)木人形(ウッドゴーレム)に最後の魔法を送る。


「……しあわせのおうじ」


 それは木人形(ウッドゴーレム)一体を犠牲に爆発を起こす自爆魔法【しあわせのおうじ】であった。

 (ミドリ)は駄目押しとばかりにありったけの魔力を込めた魔法で剣士型ゴーレムを自爆させる。


「フレイム……ストライクッ!!」


 そして、ゴーレムが自爆したタイミングで最後の一撃を繰り出すクゥ。

 勇者(クゥ)の炎の斬撃はかつての魔王四天王(ラリゴ・リラゴ)の身体を魂ごと斬り裂くのであった。

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