5-5 えるふぃあ
エルフの森の中に存在するエルフたちの国エルフィア。国とは言ってもそこまで大きいものではなく、人間の国の町程度の規模しかなかった。
「おお、ヒスイ様! お帰りなさいませ!」
「ヒスイ様!」
「……ヒスイじゃない」
エルフィアに到着した緑たち。国に入るや否や、緑はエルフたちに声を掛けられる。ただし、それはフィオ・フローライトではなく、緑の前世であるエルフの巫女姫ヒスイ・ラフォーレとしてであった。
「……フィオはもうヒスイじゃない……よ」
《緑、それにずっとこだわってるね》
「……あたりまえ。ヒスイはもう……しんだんだから」
《……そっか》
あくまで今の緑はフィオ・フローライトであり、ヒスイ・ラフォーレではない。それが緑の考え方であった。
それでも長命のエルフたちは今もなお、緑のことをヒスイ・ラフォーレとして扱っていた。
「おばあちゃん、ママが待ってるよ!」
「……おばあちゃんじゃない……から」
「ママ?」
「うちのママ、一応ここの女王様なんだよ」
「じゃあ、エリスはエルフのお姫様!?」
「一応ねー」
あまりそうは見えないがエルフの王族であるラフォーレの血を引いているということでエリスもエルフの巫女姫なのであった。
それを知ったクゥはとても驚くのだが。
《クゥって自分もお姫様だったってこと忘れてない?》
《いつもメイド服なんて着てますものね。絶対忘れてますわよ》
《あいつも姫っぽくないもんなあ》
ともあれ、三人はエリスのママ──エルフィアの女王の元へと向かうのであった。
「伯母上! お久しぶりでございます!」
「……おばうえ……じゃない」
エリスに連れられてやってきた大きな館。そこがエルフィアの王城とも言うべき場所であり、エリスによく似た緑の髪のエルフの美女が出迎えてくれた。
彼女がエリスの母であり、エルフィアの女王であるセリス・ラフォーレ。ちなみにヒスイの妹であるメノウの娘であり、ヒスイからしてみれば姪ではあるが、彼女が生まれたのはヒスイの死後であるため、フィオ《ミドリ》からしてみればやはりエリス同様に伯母でも姪でもない関係であった。
「それで伯母上……」
「おばうえじゃ……ううん、じょうきょうは?」
「封印が解けかかっています。これは予定よりかなり早いです」
「……ん。わかった」
《え? どういうこと?》
「……もりのあくま」
《森の悪魔って確か……》
緑は里帰りと言っていたが本当の目的は違う。
エルフの森の奥。そこには森の悪魔が封印されていた。
《かつてヒスイ・ラフォーレに呪いをかけ、僕たちが封印した森の悪魔……単に封印しただけだからその封印はいずれ解ける》
《とりあえず10年置きくらいに様子を見に来てたんだけど、そろそろヤバそうなのよね》
《それが緑がエルフィアに来た本当の目的なんだ》
250年前、エルフの国を襲った森の悪魔。ヒスイ・ラフォーレの死因となった存在。
「もりのあくま……そのしょうたいはかつてのまおうしてんのう」
《妖樹翁ランウ・タンオと呼ばれる魔族だよ》
《わたくしたちは実際には知らないですけど、魔法と呪いを操る恐ろしい相手だったそうですわ》
《魔王四天王……つまり魔王から二つ名を授かり力を得た魔族です。当時の白では倒すことが出来ず、封印するだけが精一杯だったそうですね》
《……でも、今は勇者がいる。仮に奴が復活しても今なら倒せる!》
緑がクゥを一緒に連れてきたのは森の悪魔を倒すため。魔王の力を受けた魔族であるランウ・タンオを倒すためには【勇者】の力が必要不可欠であった。
《でも、クゥで大丈夫かな? 聖剣があるとはいえ、クゥの実力で元魔王四天王に勝てるのかな?》
《まあ、うちらもおるし大丈夫やろ》
《緑ちゃんがサポートして、クゥちゃんがトドメを刺すって、さっきカブトムシにやったみたいな感じでいけるよ~》
《あたしの弟子ならそのくらいやって当然よ!》
《……そうならいいけど》
聖剣の性能で戦えてはいるが、勇者見習いであるクゥはまだまだ実力不足。そのことが少し気になった黒は嫌な予感がしてならなかった。




