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5-2 ほうこうおんち

「たあっ!」


 クゥが相手にしている魔物は森の狼グレイウルフ。以前(クロ)も戦ったこともある大きな狼の群れである。

 (クロ)の時と違うのは、狼を瞬殺した(クロ)とは異なり、クゥは狼の群れに苦戦しているということ。


 本来、クゥの持つ聖剣エクスカリバーならば狼など簡単に両断出来るだろうが、それは当たればの話。

 犬が苦手なクゥはなるべく狼を見ないように戦っていたため、素早い狼に翻弄されているようであった。


《そろそろ助けてあげたら?》

《ダメよ! あの子の修行にならないでしょ!》

「ししょうはきびしい」

《というか、(アカ)も犬嫌いなんやから狼は無理やろ?》

《それはそう!》

《開き直んなや!》


 (アカ)は弟子であるクゥに経験を積ませたいようであったが、このままでは埒が明かないため、(ミドリ)は痺れを切らせて手を貸すことにする。


「……しかたない。ねこちゃん、さがって」

「は、はい」


 (ミドリ)は人形使い。ぬいぐるみ(イリス・メモリア)に仕込まれた木人形(ウッドゴーレム)を操作したり、魔法で新たな木人形(ウッドゴーレム)を一から精製して戦うスタイルを得意としている。

 今回使うのはぬいぐるみではなく新しいゴーレム。(ミドリ)はジャージのポケットから植物の種を取り出すと、魔法で一気に成長させる。


「ながぐつをはいたねこ」


 急成長した種は樹木となり、(ミドリ)のゴーレム精製魔法によって子供程度の大きさの木人形(ウッドゴーレム)となる。

 【ながぐつをはいたねこ】の名の通り、木剣を携えた猫の騎士を模した小型の木人形(ウッドゴーレム)を生み出して操る魔法である。


 なお、(ミドリ)の技名は全て(ミドリ)が異世界の転生者たちから聞いた異世界の物語から取られている。異世界出身でない(ミドリ)がたまに変わった言い回しをするのも転生者由来のものが原因の一つであった。(大多数はハルコさんからの影響であるが)


 (ミドリ)の操る木人形(ねこのきし)は機動力が高いタイプのゴーレムであり、グレイウルフたちの周りを跳び回り、狼たちを逆に翻弄していく。


「ねこちゃん、いぬぎらいでもてきはよくみなきゃ……だめ」

「わ、わかりました!」

(アカ)も……だよ」

《あたしは犬は無理!》

「……だめししょう」


 (ミドリ)(アカ)に呆れながらも、木人形(ねこのきし)の木剣で狼たちを一匹ずつ確実に仕留めていく。


「……おしまい」


 最後の狼にトドメを刺した(ミドリ)は魔法を解除する。役目を終えた木人形(ウッドゴーレム)はただの木片となり、その場に転がり落ちる。


「……ひがくれるまえにつきたいから……いそぐよ」


 魔物をあっさり倒した(ミドリ)はエルフの国を目指すため、まずはイスティル大森林を抜けてエルフの森に向かうことを優先する。



 そして、二時間後。



「……あの、(ミドリ)さん。エルフの森にはまだ着かないんですか?」

「…………」

「み、(ミドリ)さん……?」

「…………ごめん、まよった」

「ええっ!?」


 二時間経っても二人はまだイスティル大森林にいた。出口付近に転移していたので普通に進めばとっくにエルフの森に足を踏み入れてもいいはずではあるが、完全に道に迷ってしまっていた。


《……やっぱりこうなったか》

(ミドリ)は方向音痴やからなあ》

《なら何で(ミドリ)に任せてたの!?》


 (ミドリ)の最大の弱点は方向音痴であること。イスティル大森林からエルフの森に向かうルートももう何十回と通って来ているはずだが、それでもまるで初めて通る道かのように迷ってしまっていた。


《まあ、いつものことだから》

《さて、誰が出ます?》

《じゃあ、あたしが!》

《却下や、却下! また(いぬ)が出てきたらお前じゃ何も出来へんやろ》

《わたしは道を知らないからなあ》

《……なら、俺が出よう》

《任せたじゃん》

「……ごめん……おねがい」


 話し合いの末、(アイ)が表に出て(ミドリ)の代わりにエルフの国へと向かうことにする。


 緑の髪は藍色の髪へ、ぬいぐるみは刀へ、ピンクの花飾りは藍色の着流しへと変化する。


(アイ)さん!?」

「……ここからは俺が案内する」

「あ、は、はい」

「……こっちだ」


 (ミドリ)の次にフィオとしての歴が長い(アイ)はもちろんエルフの国までのルートは熟知しており、クゥを連れてまずはイスティル大森林を出ることを目指す。


「…………」

「えーと……」

「…………」

「…………」

《会話を! せえっ!》

《やっぱり無口な(アイ)が表に出ちゃうとねー》

《クゥさんも可哀想ですわね。これならわたくしが表に出ればよかったですわね》


 無口で無愛想な(アイ)はクゥと会話をすることなく、ただ黙々と目的地に向かって歩いていた。


《けど、クゥと仲良くお喋りしてる(アイ)とか想像出来ないよねー》

《あはは! ちょっと想像しちゃったよ~》

《ちょ、ちょっと笑わせないでよ》


 そんな(アイ)がクゥと仲良く喋っている姿を想像して笑う他のフィオたちであった。

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