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4-16 ティータイムですわ

「えっ!? あいつ女だったの!?」

「なんでそんなにテキトーなんですの!?」


 女神の神域。

 お茶を飲みながらフィオから報告を受ける女神ハルコリウス・アヴァロンはカミーユの真実に驚いていた。


「しかもカミーユじゃなくて上湯(カミユ)優希(ユキ)?」

「あなたが喚んだんですわよね? 何で今まで気付かなかったんですの?」

「さあ? 異世界人の名前ってわかりにくいんだよ。それに背ぇ高くてイケメンだったからてっきり男かと」


 自らが召喚した転生者カミーユは男ではなく女であり、名前もカミーユではなく上湯優希。もう全てが間違っていたが、何故そのようなことになったのかは当のハルコさんもわかってはいないようだった。


「ま、いいや」

「いいんですの!?」

「あいつが男だろうが女だろうが、名前がどうだろうがやることは変わらない。勇者としての使命を果たしてくれればいいさ」

「相変わらず……ですわね」

「ボクは女神だからね」


 女神ハルコリウスはたまに人間に対し全く興味がないのではないかという冷めた一面を見せることがある。

 今回もそのような顔を見せるも、手元のお茶を一口含むと、一瞬で元のぐうたらな幼女の顔となる。


「しかし、このお茶うまいなー。ケーキにもよく合うし」

「そりゃあ、ボルティアス・ティーですもの。残念ながらケーキはヨーコさん作ではありませんけど」


 今回、()がハルコさんへおやつにと手土産として持ってきたのはボルティアス・ティーとパティスリー・ミオのザッハトルテ。店長のヨーコが例の一件で街を離れているため、ケーキは他のスタッフが作ったものであったが。


《そういえばパティスリー・ミオは休業中じゃないんだね。確か、イスルギ亭はしばらくお休みするんだっけ?》

《ええ、ヨーコの所は他にも優秀なスタッフがいるけど、おやっさんの店はおやっさん以外はバイトだけだから閉めざるを得ないのよね。クゥもせっかくバイト始めたばかりだってのに……》

《というか、ハルコさんならあの二人のことも知っていたのでは?》

「興味なーい」


 ハルコさんは口の周りにチョコクリームをつけたまま本当に興味なさそうにケーキを口に運んでいた。


「あのお二人も勇者ではなかったとはいえ、ハルコさんが召喚したんですわよね?」

「そだよー。そりゃ召喚して勇者としては期待はしてたよ? けど、役割を放棄したのならそいつはもうただの一般人だ。好きに生きたらいいさ」

「役割……」

「その点に関してはカミーユ……上湯優希だっけか? あいつはよくやってる。あいつならマジで魔王を倒してくれるかもなー」


 冒険者を辞めたイスルギやヨーコには興味がないハルコさんではあったが、カミーユには期待しているようであった。

 最も強く、最も真の勇者に近いカミーユこと上湯優希。だが、それにはまずやらねばならないことがある。


「けど、今は昔と違ってボルティアスの魔族砦をどうにかしないことには魔大陸にすら渡れない。あいつら女神(ボク)ですらどうすることも出来ない結界を張りやがったからなー」

「つまり、魔族砦を支配している魔族を倒す必要があると?」

「そう、現在の魔王四天王が一人。東征覇龍ラグレイドをね」


 それがボルティアスの地を支配する魔王四天王の名前。数百年健在の魔王とは違い、魔王配下の四天王は時代によって入れ替わる。かつての(アカ)が倒した獄炎伯レド・サラマンディアのように人間の勇者に敗れることもあれば、仲間同士で決闘をして入れ替わりにより強い者が新たな四天王となることもあるらしい。

 魔族砦の前任者が人間に敗れたという話は聞かないので、ラグレイドの場合はおそらくは後者であろう。


「奴が魔王四天王に名を連ねたのはごく最近の話だけど、その実力は歴代の四天王を凌ぐとすら言われてるね」

《魔王の配下の癖に王を名乗ってるくらいだものね》

《カミーユちゃん、大丈夫かな~?》

「ボクとしては“東征”って部分が気に入らない。大陸の一部をちょっと支配してるたけで何が東征だ」


 東の大陸の守護神でもあるハルコさんはその魔族の東征という二つ名がどうにも気に入らないようであった。

 これまで守り抜いてきた大陸の守護を破られたのはこの東征覇龍が初めてであり、そのことがハルコさんをイラつかせる一番の要因であった。


「すぐにでも倒しに行ってもらいたいところだけど……ぶっちゃけ、そう簡単にはいかないんだよな。どうもあの魔族、今はめんどくさい結界張って砦に引きこもってるらしいし。砦に入るにはまずは結界の攻略をしなきゃいけないけど、これがまた時間がかかりそうなんだよなあ」


 ボルティアスの魔族砦の攻略。どうやら複雑な手順を踏まないと結界の解除が出来ないらしく、本格的な砦の攻略はまだまだ時間がかかりそうだということに、ハルコさんはケーキを食べながらも頭を抱えていた。


「ま、砦の本丸を攻略することになったらお前も協力してやってくれよ」

「ええ、それはもちろんですわ」


 ボルティアスの魔族砦の解放をカミーユに託した()ではあったが、彼……もとい彼女に協力するのは願ってもないことであった。


「あ、そういえばお前」

「どうかしまして?」

「舞踏会と武闘会を勘違いしたんだって? ぷはははは! まぬけだなあ!」


 触れられたくない恥ずかしい勘違いをハルコさんにまで知られてしまっていた()は思わずハルコさんの食べていたザッハトルテをさっと取り上げる。


「そんなまぬけな奴が持ってきたケーキなんてもういらないですわよね?」

「ご、ごめんって! だからボクのケーキ返してよー!」


 神域にぐうたらな女神の鳴き声が響き渡る。どうやら今日もまだ平和なようだ。


 第4話「()」 了

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