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4-15 イェロ・ボルティアスですわ


 かつてイスティル大陸の最西部にボルティアス王国という小さな国があった。

 紅茶の名産地であり、服飾や宝石細工など美しいものも有名だった。

 ボルティアスの王女は少しわがままなところもあったが、国民たちのことを想い、国民たちに愛されていた。

 

 国が滅びるその時までは。

 

《ボルティアス最後の王女……それが()の前世だよ》

《それじゃあ、()がボルティアスって言葉に反応してたのは》

《昔を思い出してたんだろうね。魔族相手に何も出来なかった昔の自分を》


 120年前。ボルティアス王国は魔大陸からの侵攻を受けた。イスティル大陸で最も魔大陸アストラルに近かったこともあり、他国からの救援が来る前に蹂躙されつくされ、ボルティアス王国は滅亡した。


 そのボルティアス王国最後の王女こそがイェロ・ボルティアス。


 最後の最後まで国民のために戦った()の前世である。


()は何も出来なかったなんて言ってるけどそんなことはない。彼女は国民を避難させる時間稼ぎをしてたんだ。だからこそ、今でもボルティアス・ティーは残ってる。名産地は隣の国になっちゃったけどね》

《そういうことだったんだ》


 今も有名なボルティアス・ティーはイェロ王女が逃がした国民たちが隣の国で作り続けたもの。国は無くなっても残っているものはいくつもある。


 だが、それでも国が滅んだという事実は変わらない。ボルティアス城跡地はボルティアスの魔族砦と姿を変え、人々を苦しめるための前線基地となっていた。


 それがイェロは──()はずっと許せなかった。


「120年……ようやくボルティアスを解放してくれるかもしれない勇者にあなたはなれますの?」

「ええ、約束します。必ずや私がボルティアスを解放します」

「そうですか……では、これが最後です。わたくしの一番の踊りを凌ぎきったらあなたの勝ちにいたしますわね」


 ()はそう言うとラストダンスに移る。

 

「サンダー・アックス! サンダー・ボルト!」


 ()は二つの魔法を同時展開し、雷神の舞を舞う。サンダー・アックスによる攻撃力、サンダー・ボルトによる行動制限。更にはスピードもこれまでのダンスよりも速く動く()が踊れる中で最高の舞踏。


「雷神の舞・黄龍ですわ!!」


 【雷神の舞・黄龍】は()が踊れる全てのダンスの要素を組み込んだもの。()もめったに踊ることはないが、それだけカミーユの実力を買ってのことである。


「私も私の持てる全力で挑みます!」


 カミーユもそんな()に対し、最強の技で迎え撃つ。


星天乱華(せいてんらんか)!!》


 双剣による乱撃。そして()のように火と氷の魔法をも交えた勇者カミーユが奥義【星天乱華】である。


 激突する最強の舞踏と最強の奥義。()の体術とカミーユの剣技。雷と火と氷。ありとあらゆる攻撃が舞台上で乱れ舞う。


 そして数十回のぶつかり合いの末──


「──約束通り、わたくしの負けですわね」


 カミーユに全ての攻撃を凌ぎきられた()は踊りをやめ、自ら負けを宣言する。


「えーと、フィオ選手降参ということでよろしいでしょうか?」

「ええ、それでよろしくてよ」

「こほん……それではイスティル武闘会優勝はカミーユ選手に決まりました!!」


 こうして成り行きで参加することになったイスティル武闘会。()は優勝をカミーユに譲り、準優勝で終わった。


「──カミーユ、流石は最強の勇者と謳われる男ですわね」

「あのフィオさん」

「何ですの?」

「ずっと言おうと思ってたんですけど……私、女です」

「はい……?」

「それに名前もカミーユじゃなくて上湯(カミユ)優希(ユキ)です」

「はいーっ!?」


 カミーユから語られた衝撃の事実。カミーユは男ではなく女、更に名前もカミーユではなく上湯優希。フィオたちは何

から何まで間違えていた。


《えっ!? あんなイケメンなのに女の子なの!?》

《まさかオイラがかわいこちゃんをずっと男だと思ってたなんて!》 

《おんなのなまえだけどおとこ……だとおもったらおんなだった》

《そもそもそんな本名だなんて知らなかったわよ!?》

《せや、うちらもハルコさんからカミーユって転生者がおるって聞いて…………あっ!!》


 (ムラサキ)の言葉でフィオたち全員はピンと来た。これはハルコさんのせいなんだということに。


「《でも、ホントに優勝しなくてよかったの?》

「構いませんわ。わたくしは存分に踊れましたし。まあ、思っていたダンスではありませんでしたけど」

《そりゃあ、舞踏会のダンスと戦うためのダンスじゃあねえ》

「いいんですわよ、ダンスには違いありませんわ」


 舞踏会と武闘会を間違えて参加した()ではあったが、その顔は満足感で満ちていた。 

 

 

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