4-13 準決勝ですわ
「さあ、準決勝です!」
二回戦第四試合はイスルギ・ヨーコ両名失格のため不戦勝となる。
そして、次の試合は準決勝第一試合。
「フィオ・フローライト選手VSイスティル仮面選手です!!」
黄の対戦相手はイスティル仮面ことヨシュア・ソル・イスティル。疾風の剣を操るこの王国の王子である。
「黄さん、もう一度言います。紫さんを出してください」
「い・や・で・す・わ!」
「では仕方ありませんね。力ずくでも紫さんを出してもらいますよ!」
紫のことを好きなヨシュアはどうしても対戦相手は黄ではなく紫が良いようで、黄に剣を向けてそう宣言する。
「それでは開始っ!」
試合が始まると同時に両者は動く。速さではヨシュアが勝っているのは黄もわかっていたため、まずは防御を優先する。
「ゲイル・インパルス!!」
「雷神の舞・玄武!」
ヨシュアの繰り出した疾風怒濤の一撃を黄は扇に雷の結界魔法を纏わせて防御する。
【雷神の舞・玄武】は防御寄りの舞踏。とりあえず黄は目論見通りにヨシュアの最初の一撃は防ぐことが出来た。
「黄さん、なかなかやりますね。流石はフィオ・フローライト……紫さんと同じ女神の従者殿です」
「相変わらず紫、紫と。わたくしも紫から頼まれていますので、王子だろうが何だろうが……あなたはぶっ飛ばさせてもらいますわね!」
「私も試合で紫さんと戦うのは諦めました。ですので、あなたを倒します!」
二人は再度激突する。
《この王子、本当に強いし何なの!?》
《まあ、あんなのでも騎士団長の兄貴だしね》
《以前、この大陸の最前線であるボルティアスの魔族砦に王国騎士団と共に向かったこともありますからね。彼の左腕はその時に失ったものだとか》
《あれ? そういえばボルティアスってどこかで……》
先程のカミーユとの会話でも聞いたボルティアスの魔族砦。イスティル大陸最西端。魔大陸と最も近いその場所はかつて魔王軍の侵略により滅び、魔族によって砦が築かれていた。
それがボルティアスの魔族砦。この大陸における魔王軍との戦いの最前線である。
だが、黒がその名を聞いたのはその時が初めてではなかった。
《あ、お茶だ》
《黒?》
《どこかで聞いたことがあると思ったら、ボルティアスってボルティアス・ティーのボルティアスだ!》
《あー……まあ、そうだね》
白たちはそれ以上は話してはくれなかった。
その間も二人の戦いも続いていた。
「雷神の舞・白虎!」
「ゲイル・インパクト!」
スピードを高めた黄のダンス。パワーを高めたヨシュアの剣。
速さではヨシュアの方が有利であるが、黄も全く追い付けないわけではなかった。
黄は冷静に踊り続け、攻撃を避け、あるいは受け流し、あるいは防御した。
ヨシュアをぶん殴るその一瞬を探すために。
「紫、あなたの技……借りますわね!」
《ええで! やったれ!》
その一瞬の隙を見つけた黄はヨシュアの剣を受けていた扇を手放し、右手に雷の魔力を込める。
「なっ!?」
「紫獅迅雷拳ですわっ!!」
宣言通り。黄は紫の技で紫との約束を守って
、ヨシュアのどてっ腹をぶん殴る。
即興で繰り出したとは言え、黄も紫も同じフィオ・フローライト。体術を得意とする者同士であるため、技を真似るのは容易かった。
雷の魔力が込められた拳打をまともに食らい、流石のヨシュアも立ち続けることは出来なかった。
「さ、流石です……紫さんのおっぱい……触りたかったな……ぐふっ」
《黄、ようやった! つーか、こいつ最後までキモいな!》
《何か倒れる瞬間まで余裕あるみたいだったよ~》
《……あほおうじ、しす》
《いや、死んでないじゃん!》
ともあれ、ヨシュアは黄の一撃に沈み、黄は決勝戦へと進むこととなる。
「紫もあんなのに好かれて大変ですわね……」
《全くや! 普段は真面目でええ王子様なんが余計にたちが悪いわ!》
《あはは、でも人に好かれるっていいことじゃない》
《せやかもしれんけど……》
《わたしはそういうのないから少し羨ましいよ》
《なら代わるか?》
《ううん、それはいいや》
黄の勘違いから参加することとなった武闘会。決勝戦まで駒を進めた女神の従者フィオ・フローライト。
勝っても負けても次が最後。決勝戦のみである。




