4-11 舞踏家VS武闘家ですわ
「そ、それでは二回戦に参りましょう!」
気を取り直してリースが告げる。
「まずは女神の従者フィオ・フローライトが一人! 舞踏家の黄選手!! 対するはフォンテーヌオーナー! 元武闘家のロコ・イズミール選手!!」
二回戦第一試合は互いに初戦を瞬殺で終わらせた黄とロコの親友兼ライバル対決となった。
「さあ! 舞踏家と武闘家! 読みこそ同じですが全く異なるクラス同士の戦いとなります! ですが、この大会は舞踏会ではなく武闘会! 武闘家のロコ選手の方が有利か!?」
「黄、あなたのことだからどうせ舞踏会と武闘会を勘違いして参加したんでしょう?」
「そ、そ、そ、そんなことありませんわ!」
《やっぱりバレバレだったよ》
《そりゃあ……ねえ》
ロコはやはり黄の恥ずかしい勘違いに気付いていたようであった。
「ま、そのお陰であなたと戦えるんだからこれ以上は何も言わないわ!」
「……ええ、わたくしも手加減はしませんわよ!」
「それでは試合開始ですっ!!」
鐘が鳴り、先に仕掛けたのはロコ。ロコは両手に水の魔力を込め、一気に殴りかかる。
「アクア・キャノン!!」
そして攻撃の瞬間に魔法を発動させる。ヤーラ・レヤックを一撃で沈めた水弾アクア・キャノンである。今のロコは武闘家ではあるが水の魔法も組み合わせた戦い方を得意としており、その戦闘スタイルは魔法拳士に近かった。
「甘いですわ!」
もちろんそんな攻撃一発で沈むフィオ・フローライトではない。黄は扇に雷の魔力を込め、水弾をさらりと受け流す。水弾はそのまま観客席の方へと向かうが、魔法結界により消滅する。
「おおっと! いきなり激しいぶつかり合いです!」
リースは実況を続けながら、結界術士たちに目で合図を送り、結界をより強固なものへと張り直させる。
「いきなり危ないですわね!」
「しっかり受け流してるじゃない。やっぱり半端な攻撃じゃ意味ないようね! 水神崩撃!!」
「雷神の舞ですわ!」
またしても先に攻撃したのはロコ。ロコの正拳突きを黄は躍りながら受け流す。
基本的に黄は相手の動きを見てから回避や反撃を行うカウンター主体の戦法であるため、どうしても相手よりは一手行動が遅れてしまう。
「水神連撃!!」
「雷神の舞・白虎!」
だが、それでも黄はギアを一段階上げ、更なる速度でロコの連打に一つ一つ対応していく。
【雷神の舞・白虎】は黄の舞踏の中でも速さに特化したもの。
その速さはフィオ最速の紫の攻撃にも匹敵するほど。
《黄、もしかしてロコさんの攻撃を全部見切ってる!?》
《黄の一番の凄さは攻撃力でもスピードでもあらへん。その目の良さや》
《目だけじゃないよ。黄は魔力感知も僕たちの中じゃあ一、二を争うほど高い》
《動体視力、魔力感知、そして戦いの勘……黄はありとあらゆる情報から最善の手を瞬時に取れる実力がある》
「だったら! 水神魔崩撃!!」
全ての攻撃をいなされたロコは水神崩撃とアクア・キャノンの合わせ技で黄を攻め立てる。
物理と魔法、二つの異なる攻撃。
だが。
「雷神の舞・青龍!!」
黄の対応力には通じなかった。
この【雷神の舞・青龍】はより広範囲の攻撃に対応出来るように進化させた舞踏。華麗な動きでロコの物理攻撃と魔法攻撃を雷を纏った扇で相殺させていく。
《でも、このままだと防戦一方だよ》
《いいえ、大丈夫よ》
《うん、もう勝負はついたよ》
黒の心配をよそに他のフィオたちはすでに黄の勝利を確信しているようであった。
黄は相手の動きを見てからの行動になるとは言ったが、それは相手の動きを見切るまでの話。
すでに見切った以上はもう黄の勝利は揺るがない。
「雷神の舞・麒麟!!」
回避やカウンター向けの雷神の舞・白虎や雷神の舞・青龍と違い、【雷神の舞・麒麟】は自ら攻撃するためのダンス。両の手に持たれた扇に付与された雷の魔力は形を成し、まるで雷の斧のようになっていた。
《サンダー・アックス……黄の得意魔法の一つです。黄は魔法単体ではあまり使わないのですが、魔法を舞踏の一部に組み込むことでその真価を発揮させます》
《黄ちゃんの攻撃的なダンスはすっごいシビれるよ~》
「これでおしまいですわ!」
「……くっ!」
先程までとは違い、先制したのは黄の方であった。ロコはとっさに防御するも一瞬遅かった。
雷の斧で攻撃力を高めた黄の連撃はロコを吹き飛ばす。
「……ロコ・イズミール選手、戦闘不能! よって、勝者! フィオ・フローライト選手です!!」
吹き飛ばされたロコが起き上がれないのを確認したリースはフィオの勝利を宣言する。
二回戦第一試合。黄とロコのライバル対決を制したのは黄であった。
「くっ……負けたわ」
「流石に現役を退いて久しい人には負けませんわよ」
「やっぱり数日修行し直しただけじゃダメね」
「わたくしに勝つなら一年くらいは修行しないと無理ですわよ。ま、それでもわたくしが勝ちますけど」
「相変わらず言うじゃない。今度は別の形でまた会いましょう」
「いいですわね。食事でもしながら例のビジネスについての話でも」
試合が終わり、黄はロコに声をかける。ロコも強かったとは言え、現役で活躍しているフィオにはやはり及ばなかった。
二人はまた食事にでも行く約束をし、握手を交わすのであった。
《え? ビジネスって何!?》
「それはひみつですわ」




