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4-9 犬猿の仲ですわ

《す、すごかったね!》

《いや、まあ……腕は立つんやけど》

(ムラサキ)さーん!!」

《げっ!?》


 試合が終わり、イスティル仮面は仮面を外し、ヨシュアとしてフィオの元へと嬉々として駆け寄ってくる。

 仮面を外した王子としてのヨシュアは銀髪青眼の実に爽やかなイケメンであった。


()さん、早く愛しの(ムラサキ)さんを出してください!」

「嫌ですわ」

「な、何故です!?」

(ムラサキ)はあなたに会いたくないそうですわ」

「そ、そんな……」


 まるで大型犬のように嬉しそうにフィオの元へとやってきたヨシュアであったが、(ムラサキ)が会いたくないと知りがっくりと肩を落としていた。


「それはそうと……さっきの戦い。あなた、もしかしてあの暗殺者を誘き寄せるためにわざわざ武闘会を?」

「いえ、それはついでです。確かに武闘会は利用させてもらいましたが、本当の目的は別にありますよ」

「本当の目的ですの?」

「ええ、武闘会の本当の目的は試合にかこつけて(ムラサキ)さんとイチャイチャしたかっただけですから! 試合中ならおっぱい触っても不可抗力ですしね!!」

《きっしょっ!! だからこいつ嫌やねん! ()、こいつぶん殴ってええで!》


 爽やかな笑顔でとんでもないことを言うヨシュアに(ムラサキ)はドン引きしていた。


《えー、ヨシュア王子ってこんな人だったんだ……》

《このアホ王子、普段は真面目で正義感も強くて国民にも人気の良い王子なんだけど、(ムラサキ)が絡むと途端にアホになるのよね》

《ヨシュア王子は(ムラサキ)のおっぱいの大きさに惹かれたって話じゃんよ》

《むっつりすけべ》

《イケメンなんだけどすっごく残念なんだよね~》


 (クロ)はヨシュアと会うのは初めてであったが、(ムラサキ)が嫌そうにしていた理由をすぐに察してしまう。


「というか、何故()さんが大会で戦っているんです? 武闘会なら(ムラサキ)さんでしょう?」

「そ、それはこちらにも色々あるんですわよ! ともかく今回は(ムラサキ)は出ませんのでそのつもりで!」

「あっ、フィオさん!?」


 相変わらず舞踏会と武闘会を間違えたことを恥ずかしく思っている()はヨシュアにそう言い放つと一旦自分の控え室に戻ることにする。


《次の試合見ないの?》

「これ以上あの王子の相手はしたくありませんわ。少し休んだら戻りますわよ」

《賛成。うちもなるべく関わりたくないねん……》


 (ムラサキ)の希望もあり、フィオたちは控え室で休んでから闘技場に戻ることにし、次の試合は見ることが出来なかった。



 そして、第五試合、第六試合、第七試合と大会は続き、一回戦最後の試合が始まろうとしていた。



「──すっかり長居し過ぎましたわ!」

《もう! だから早く行こうって言ったのに!》

《……おちゃのみすぎ》

「仕方ありませんわよ! 用意されていたお茶もお菓子も美味しかったんですもの!」


 控え室で優雅に過ごしすぎた()は慌てて舞台の傍らへと戻り、最後の試合を観戦する。


 一回戦第八試合。


「──まずは元戦士の転生者! 現在はラーメン屋店主! ヨウヘイ・イスルギ選手です!」


 麺処イスルギ亭の店長であり転生者の元冒険者イスルギが舞台へと上がる。格好はいつもの見慣れたラーメン屋店主のものであったが、その手にはかつて愛用していた武器である巨大な斧が持たれていた。


「対するは元魔法使いの転生者! 現在はスイーツ店オーナー! ヨーコ・ミオ選手!!」


 続いて現れたのはパティスリー・ミオのオーナーであり、同じく転生者のヨーコ。こちらもいつものコックコートを着用してはいたが、普段は絶対に手にしない魔法の杖が握られていた。


「まさかこのお二人が一回戦でいきなりぶつかるだなんて」

《確かこの二人って仲が悪いんだよね!?》

《ええ、かつては仲間同士だったのに何故か今は互いにいがみ合ってるのよね》

《どちらも勇者にこそなれなかったが相当な実力者だ……果たしてどうなるか》


 イスルギは戦士、ヨーコは魔法使いとして同じパーティに在籍しており、魔王討伐を志していた。

 だが、それは過去の話。現在の二人は何故だかものすごく仲が悪い。それは当時を知るフィオたちですら不思議に思うほどであるが、その理由はわからなかった。


「ラーメン屋のおっさんは帰ってスープでも仕込んでなさいよ!」

「誰がおっさんだ! 歳なんてお前と一つしか違わねえじゃねえか!」

「それじゃあ、昔みたいにセンパイ (・・・・)とでも呼んで欲しいのかしら?」

「冗談! 俺はまだお前を許しちゃいないからな!」

「許す? それはこっちの台詞よ!」


 戦いが始まる前から舞台の上では舌戦が繰り広げられる。

 そんな様子を見て戸惑っていた司会のリースではあったが、とりあえず試合を開始させる。


「そ、それでは試合開始です!!」


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