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4-7 ロコ・イズミールですわ

「それでは続いて第二試合に移りたいと思います!」


 先ほど試合で負けたブレッドは治療術士に担架で運ばれており、次の試合の準備が整っていた。


「東ゲートより俊足の剣士! ヤーラ・レヤック選手!!」


 まずはヤーラという剣士。全身を軽量な皮製の鎧に包んだ身軽そうな若い男が舞台の上へと上がっていく。


《知ってる人?》

《いいや、初めて見る顔だ》

《実力は未知数ってとこかしらね》


 その男のことはフィオたちは誰も知らず、剣士であるということしかわからなかった。


「西ゲートより戦う服飾職人(デザイナー)! ロコ・イズミール選手!!」


 リースの呼び掛けで黒いシニヨンヘアにグレーのスーツ姿の20代後半くらいの女性が舞台に上がる。

 彼女が()の友人であるロコ・イズミールこと転生者の和泉浩子である。


「ロコ、本当に出場していましたのね」

《あの人がロコさん? 美人な人だねえ》

《そりゃ、オイラの認める美人100選に入るくらいだから相当な美人じゃん♪》

《……無視でいいぞ?》

《うん、わかった。もしロコさんが勝ったら二回戦で戦うことになるね》

《勝てばの話やけどな。ロコはんも強いいうても現役を引退してだいぶ絶つやろうし》


 ロコは現在28歳。冒険者を引退して10年ほど経っているため、現役の剣士であろうヤーラとどちらが勝つかフィオたちも予想がつかないようであった。


「それでは第二試合開始!!」


 闘いの(ゴング)が鳴るや否や、素早い動きでロコに接近するヤーラ・レヤック。


「さっきの試合みたいに瞬殺してやるぜ! おばさん!」

「誰が……」


 ロコはヤーラの挑発めいた言葉に反応し、拳に魔力を集中させる。


「おばさんよっ!!」


 ロコ・イズミールは元武闘家。冒険者時代は体術をメインに戦う格闘系クラス

であった。だが、今は少し違う。


 ロコの拳に集まった魔力は水の塊を形成し、一気に放出される。


「アクア・キャノン!!」


 ロコの魔法により撃ち出された水弾は迫り来るヤーラを吹き飛ばしていた。


「ったく、誰がおばさんよ、誰が!」

「しょ、勝者! ロコ・イズミール選手です!!」


 ヤーラ・レヤックをあっさりと下し、ロコは舞台を降りて()の元へと駆け寄ってくる。


「久しぶりね、()さん」

「ロコもこの大会に出てましたのね」

「そっちもね。私はてっきり(ムラサキ)さん辺りが出るものだと……あら?」


 久々に()と会ったロコは彼女が着ている黄色いドレスが自分がデザインした新作だとすぐに気付く。


「へえ、武闘会に新しいドレスだなんて気合い入れてるわね。流石は舞踏家ね」

「と、と、と、当然ですわ」


 本当は舞踏会と武闘会を間違えただなどとは恥ずかしくて口が避けても言えない()はロコに合わせることにする。


《てか、武闘会にドレス着てきてる時点で()のまぬけな間違いなんてバレてるんじゃない?》

《んー、一応()は舞踏家だからドレスでもおかしくないっちゃおかしくはないけど、やっぱり武闘会にドレスってのはどうかと思うかなあ》

()ちゃんも動揺しすぎで反応からバレバレだよ~》

「うるさいですわね! ……で、ロコはどうして武闘会に? あなた、こういうのに興味ありましたかしら?」


 ()は話題を反らすためにロコのことを聞いてみる。

 ロコは元武闘家ではあるが現役を退いてからもう何年も経っている。そんな彼女が大会へ参加しているのは意外だと()も思っていた。


「私も最初は断ってたんだけどヨシュア王子にどうしてもって頼まれてさ。私、イケメンには弱いから」

「そんな理由ですの!?」

「別にそれだけじゃないわよ。ほら、この大会カミーユくんも出るじゃない?」

「優勝候補と言われていますわね」

「あの子もイケメンらしいから近くで見たくて」

「同じじゃありませんの!」


 ロコの大会参加の理由がイケメン目的だと知り、()も思わず呆れてしまう。


「悪いですけどあなたがカミーユと戦うことはございませんわ」

「何でよ?」

「あなたが次に当たるのはわたくしさなんですのよ? あなたがわたくしに勝てまして?」


 ロコがカミーユと戦うには二回戦でフィオに勝つ必要がある。()とロコはライバル同士とはいえ、二人はしばらく戦ってはいない。ロコが現役を退いている間も不老のフィオは常に現役として戦ってきている。

 ()も今のロコに負けるとは全く思ってはいなかった。


「あら、言ってくれるじゃない。私も大会に参加すると決めてからは勘を取り戻すために数日お店を休んで修行し直したのよ? そう簡単に負けはしないわ」

「お店にいなかったのはそれが理由でしたのね!?」

「とにかく、二回戦は互いに全力でやりましょう! 手を抜いたら承知しないわよ!」


 ロコはそう言うと自分の控え室に戻っていく。


《すごい自信だったけど、()大丈夫そう?》

「当たり前ですわ。わたくしも久々に戦えるのが楽しみですわよ」

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