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4-5 武闘会ですわ

「は……?」


 そして舞踏会当日。先日購入した向日葵色のドレス姿でイスティル城を訪れた()は言葉を失ってしまう。


「それではフィオ選手の控え室は──」

「…………」


 案内された控え室で一人になった()はようやく大きな声を上げる。


「武闘会でしたわー!!」

《な、なんてベタな!》

《てか、何でみんな気付かないのさ!?》

《いや……話を聞いたのは()だったし》


 イスティル城で開かれる舞踏会(・・・)というのは()の勘違い。本当はイスティル城の地下闘技場で開催される武闘会(・・・)にフィオは招待されていたのであった。

 あまりにもあまりなうっかりに()は叫ばずにはいられなかった。


《確かにイスティル城で武闘大会が開かれるって話は聞いたことあるじゃん。まさかそれが()が招待された舞踏会とは思わないじゃんよ!》

《というか()は誰に招待されたんや?》

「ヨシュア殿下ですわね」

《あー》


 ()を……もとい、フィオを舞踏会(武闘会)に誘った人物の名を聞き、(ムラサキ)は思わずため息を漏らす。


《ヨシュアって?》

《この国の第一王子……つまりシルフィスの兄で次の王様よ》

《あんのアホ王子! 絶対うち狙いで()に声を掛けたやろ!》

《どゆこと?》

《ヨシュア殿下は(ムラサキ)のことを好いてますからね。戦い好きの(ムラサキ)なら武闘会に参加すると踏んだのでしょう》

《え? そうなの?》

《知らん知らん!》

《で、アホな()が舞踏会と勘違いしたと?》

(アカ)、あなたにアホ呼ばわりされたくはありませんわ!」


 どうやら(ムラサキ)に好意を寄せているヨシュア王子が(ムラサキ)を誘うつもりでフィオを武闘会に招待したが、()が舞踏会だと勘違いしたというのが真相だった。


 ()もとりあえず控え室の椅子に座り、テーブルに用意されたお茶を飲んで落ち着くことにする。


 テーブルの上にはお茶の入ったポットの他に簡単な軽食や大会のパンフレットも置かれていた。()はそのパンフレットも手に取って開いてみる。


「なになに……試合はトーナメント方式。相手を殺してしまったら反則負け。武器や道具、魔法も使用可……ふむふむ」

《えー? 殺しちゃだめなのー?》

《当たり前です。あくまでイベントのようですからね。観客も入るらしいですから人死になど御法度でしょう》

《参加選手も載ってるみたいだよ~》

「あら、本当ですわ。どれどれ……」


 パンフレットには今回の参加者の名前も紹介入りで載っているようで、フィオたちは早速確認してみることにする。


「え!? ロコも出るんですの!?」

《ロコってこの前行った服屋のオーナーだっけ? 結局会えなかったけど》

《それだけじゃない。ラーメン屋のイスルギやケーキ屋のミオまで参加するようだぞ》

《転生者だらけやんけ!》

《転生者というなら……カミーユの名前もあるみたいだよ》

《カミーユ?》


 服飾店(ブティック)フォンテーヌのオーナー、ロコ・イズミールこと和泉浩子。ラーメン屋イスルギ亭の店長である石動陽平。パティスリー・ミオのオーナー、弥生陽子。それらはかつて召喚され冒険者として活躍した転生者。

 そして(シロ)が見つけたカミーユという名も転生者であった。


《カミーユは数年前に召喚された転生者だよ。他の三人と違うのは彼だけは今も現役で活躍してて、【勇者】のスキルを有している現状最強クラスの転生者だってことかな》

《魔王討伐に最も近い勇者なんて呼ばれてるのよ。魔王を倒すのはうちのクゥだってのに!》

《ししょうばか》


 カミーユは【勇者】のスキルが発現している転生者の中でも最強と呼ばれる人物であった。今回の参加者の中ではおそらく優勝候補の一角であろう。


《転生者はそのくらいですかね。気になる名前というともう一つありますが》

《あ、それはわたしもわかった》

「イスティル仮面……ですわね」


 パンフレットに記載された参加者たちの名前で最も目を引くのはイスティル仮面という謎の人物であった。


《まあ、それに関しては……》

《……こころあたりしかない》

《うちからはノーコメントや》

《え? え? え?》


 どうやら(クロ)以外のフィオたちはイスティル仮面の正体に心当たりがあるようで(クロ)以外の全員がため息をつく。


《……で、どうするんだ?》

「何がです?」

《この大会に参加するかどうか、参加するなら誰が出るのか》

「あー」


 忘れてはならないのはフィオたちは舞踏会と勘違いしてここに来ているということ。

 武闘会だというなら格闘戦に特化した(ムラサキ)辺りが適任であろうが。


《うちは出えへんで! ヨシュアはんが関わっとるもんに誰が出るか!》

《えー? じゃあ、わたしが》

「いえ、わたくしが出ますわ。元はというとわたくしの失態ですから、わたくしが最後まで責任を持ちますわ」


 ()は舞踏会ではなく武闘会に参加することを決意する。


「それにロコやカミーユと戦う機会もなかなかありませんから少し楽しみでもありますわ」


 舞踏会を楽しみにしていた()であったが、大会の参加者を知り武闘会も同じくらい楽しみにするのであった。

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