表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/72

4-3 ドレスですわ

「さあ、ここですわ」


 ()がクゥを連れてきたのはお洒落な衣服店(ブティック)フォンテーヌ。ここは()の馴染みの店であり、オーナーとは旧知の中であった。


「フィオさん、ご来店ありがとうございます」

「ご機嫌よう。ロコさんはいらっしゃらないので?」

「オーナーはしばらく留守にしていまして。明日には戻ると思いますけど」

「久々に会えると思ったのに残念ですわ」


 フォンテーヌのオーナーであるロコ・イズミールという女性は一言でいうなら()のライバルにして親友。時に競い合い、時に一緒に食事をするといった関係であった。


《そのオーナーのロコってのは異世界からの転生者なんだよ》

《へー、そうなんだ》

《本名は和泉(イズミ)浩子(ヒロコ)だったかしら? ロコ・イズミールてのはこの世界風に名乗ってる偽名というかあだ名みたいなものなのよね。彼女も【勇者】のスキルがなくて早々に冒険者を辞めて服飾職人(デザイナー)になったのよ》

《ロコはんも強かったんやけどなー》

《ちなみにすっごい美人じゃん♪》

《……お前は誰にでもそう言うだろう?》

《そ、そんなことないじゃん!?》


 今日は残念ながら彼女は不在であり、()も落胆しつつ店内を物色することにする。


「クゥさん、何か気に入ったものがあれば気兼ねなくおっしゃってくださいな。プレゼントしますわ」

「そうはいっても……」


 この店はロコのデザインしたドレスを中心にお洒落な服や服に合う小物が中心に置かれており、クゥの気に入るものは見つからなかった。


「やっぱりアタシにはお洒落すぎて」

「だから皇女の台詞じゃないんですのよ。まあ、じっくり見ていてくださいな。わたくしもドレスを見させてもらいわますわ」


 ()も舞踏会に着ていくドレスを選ぶために店内を物色する。


「さて、今回はどんなドレスにしましょうか」

《どれも一緒に見えるけどなあ》

《ですから同じようなドレスはポケットの中にたくさんありますからね》

「それはデザイナーのロコさんにも失礼ですわよ」

《あー、確かに……それはごめん》


 他のフィオたちには同じように見えるドレスではあるが、それぞれに製作者であるロコの拘りがある。

 それを理解している()は他のフィオたちにもの申す。


《それでどんなドレスにするの?》

「そうですわね……新作のこの黄色いドレスなんて素敵ですわね」

《そっちの黒いドレスとかはー?》

「黒ですか……まあ悪くはないですけど」


 (クロ)に言われ、近くにあった黒いドレスを手に取り、身体に合わせてみる。シックな黒いドレスはよく似合ってるように思われたが、()のお気に召すものではなかった。


《んじゃ、赤いのは? やっぱり情熱の赤よ! 赤!》

「赤ねえ……派手すぎませんこと?」

《清楚な白いドレスでいいんじゃない?》

「却下。地味すぎますわ」

《みどりいろ……がおちつく》

《やっぱりピンクだよね~☆》

《む、紫も悪くないんやないか?》

《ブルーのドレスなども綺麗な仕上がりになっているようですよ?》

《オレンジ一択っしょ! (アイ)は?》

《……俺に振るな。俺にはよくわからん》


 それぞれが自分の色(・・・・)のドレスを薦めるもどれも()のお眼鏡にかなうものではないようであった。


「あら?」


 そんな中、()の目に留まったのは向日葵をモチーフにしたと思われる鮮やかな黄色のドレスであった。


「決めましたわ。わたくし、このドレスにいたしますわね」

《えー? 結局黄色なんじゃない!》

「うるさいですわね!」


 誰になんと言われようが()は自分が気に入ったそのドレスを購入するのはもう揺るがなかった。


「さて、クゥさんは」


 自分が買うものをあっさり決めた()はクゥの元へと向かう。


「クゥさん、何かいいものはありました?」

「えっと……」


 ドレスに興味のないクゥはずっと小物を中心に見ていたが、それでもクゥの気に入るものはないようであった。


「あなた、メイド服はあんなに気に入ったのに他のファッションには興味ないんですの?」

(アカ)姉さんが着けてたマントとかはカッコいいと思いますけど」

「あれは真似しちゃダメですわ!」

《なんでよ!》


 このままだとクゥがメイド服にマントを合わせかねないのを見かねた()は何か無いかと辺りの商品を見回してみる。


「そうですわね……クゥさんにはこういうのとか似合いそうですわよ?」

「リボン……ですか?」


 ()の目に入ったのは赤いリボン。()はリボンを手に取り、クゥに薦めてみる。


「アタシには可愛すぎる気が」

「そんなこともないと思いますけど……そうですわね。それじゃあ、こうして」


 頭にリボンを着けることを恥ずかしがったクゥに()は頭ではなく、代わりにしっぽにリボンを巻いてみる。


「これならどうです?」

「まあ、これなら……」

「似合ってますわよ」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあ、そのリボンをプレゼントいたしますわね」


 ()は自分用のドレスとクゥにプレゼントするリボンを一緒に購入することにし、レジへと向かう。


《あのリボン……》

(アイ)、どうかしたの?》

《いや、ちらっとリボンの値札が見えたが……なかなかの値段がするんだな》

《えっ!?》

「そりゃあロコさんのお店のリボンですもの。ある程度の値段がするのは当たり前ですわよ」

《そんなのをポンと買えるって()は何でそんなにお金持ってるの!?》

「それは……秘密ですわ」


 結局、()の資金源の秘密は明らかにされなかったが、()は目的のドレスも買えてご機嫌でフォンテーヌを後にするのであった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ