3-7 聖剣の幻想曲《ファンタジア》
「ま、何はともあれお疲れじゃん♪」
クゥ以外の騎士団の面々がそれぞれガーゴイルを倒したことでひとまずこのフロアでの戦闘は終了する。
《もうっ! 何なのよ! あのピアって子はっ!》
《まあまあ。みんな怪我もなくて無事で良かったじゃない》
《そりゃそうだけどさあ……》
弟子の活躍の場面を奪われたようで赤は少々ご立腹ではあったが、白に宥められる。
「さあ、改めて宝箱開けるじゃん♪」
《でも大したもの入ってないんでしょ?
》
《……しょしんしゃごようたし》
《どうせポーションとかゴミ武器とかですから開けるだけ無駄ですわよ》
「わかってないなあ。こういうのは開けるのが楽しいじゃんよ♪」
ガーゴイルを倒したことで宝箱は冒険者を引き付ける囮の役割を終え、ようやく開けることが出来た。
このダンジョンの宝箱にあまりいいものが入ってはいないことは橙も承知の上ではあったが、それでも宝箱を開けるという行為自体を楽しんでいた。
「お、剣じゃん。これ誰か使う?」
「俺は使い慣れたこの剣でいいです」
「私も普通の剣よりレイピアの方が使いやすいので。クゥちゃんどう?」
「えーと、アタシは……」
宝箱の中に入っていたのは長剣。
《ちょ、ちょっと待ってください!》
橙がその剣を誰かにあげようかと聞いていた所、青が思わず身体の所有権を奪って表に出る。
橙の髪の少年は眼鏡をかけた青い髪の少年へと変化する。
「わっ、青さん!?」
「クゥさん、すみません。その剣を少し見せてもらえますか?」
「え? は、はい、どうぞ」
青が気になったのは宝箱に入ったいた剣。確かにただのブロンズソードやアイアンソードにしては立派な装飾と刀身であり、初心者用のダンジョンで生成される武器にはとても見えなかった。
青はクゥから剣を預かると【鑑定】スキルを使用し、その正体を確認する。学者である青は武器などの性能を確認する鑑定も得意としていた。
「間違いありません……これはエクスカリバーです」
《エ、エクスカリバー!?》
《あれ? なんか聞いたことがあるような無いような……》
《たぶん黒ちゃんがいた世界でも名前だけなら有名だと思うよ~》
「かつてハルコさんが異世界の聖剣をパク……参考に作った伝説級の武器です。それが何故こんな所に……?」
それは聖剣エクスカリバー。春の女神ハルコリウス・アヴァロンがオリハルコンという伝説の金属を用いて(暇つぶしで)造った最強の剣である。
もちろん、こんな初心者用のダンジョンの宝箱に入っていていい代物では決してない。
《エクスカリバーって言ったら全勇者憧れの逸品じゃない! 欲しい!》
《てか、あのバカ女神! 絶対アイテム設定ミスってるやろ!》
《こんなのゲームバランス崩壊案件だよ~》
《……でばっぐぶそく》
《まあ、ハルコさんだし仕方ないけど……僕たちがいる時で本当に良かったよ。こんなものポンポン世間に出回っていいものじゃないからね》
《……で、この剣どうするんだ?》
明らかに場違いな聖剣はハルコさんのやらかしであると即座に察するフィオたち。
とりあえず、この剣の処遇を考えることにする。
「そうですね……まあ、宝箱に入っていたものですし、せっかくですからクゥさんに使ってもらいましょうか。やはり勇者には聖剣が必須ですからね」
「えっ、アタシが?」
「とりあえずこのダンジョンの間だけでも使ってください。どうすべきかは後で考えますので」
「う、うん……わかった」
クゥは青に勧められ、先ほどまで使っていた長剣の代わりに伝説の聖剣エクスカリバーを装備する。
《いいなあ、エクスカリバーいいなあ》
《赤、あなた師匠なら弟子のパワーアップを喜びなさいな》
《そ、それはわかってるけど……いいなあ、エクスカリバーいいなあ》
《でも、たしかに伝説の聖剣だなんて強そうだね。わたしもそういうの欲しいなー》
伝説の聖剣エクスカリバー。やはり自称勇者である赤はかなり羨ましがっており、黒も特に何も考えずになんとなく欲しがっていた。
「それでは、私も引っ込みますね。クゥさん、気をつけて頑張ってください」
青は剣の鑑定も終えたため、橙に身体の所有権を返還する。
「せ、聖剣なんてアタシが使っていいのかな?」
「いいんじゃないの? でも聖剣なんてカッコいいなー! 俺も聖槍とか装備してみてえな!」
「アルバートは槍の扱いが雑過ぎるからやめておいた方がいい」
「だよねー、クゥちゃんよく似合ってるよ!」
「そ、そうかな?」
ひょんなことから聖剣を装備することになったクゥは意外と満更でもないようであった。




